安定的なインカム（利息収入）を求めて債券投資を行う富裕層は多いですが、「高キャッシュフロー」を追求するあまり、リスク許容度を超えた債券（劣後債など）に偏重してしまうケースが散見されます。本記事では、総資産7億円の会社員系富裕層が陥った債券ポートフォリオの歪みと、その解決策を解説します。
[ 目次 ]
1. 相談者の課題：安定性を求めた結果の「高リスク偏重」
今回の相談者様は60代前半で、総資産7億円（金融資産5億円）を持つ会社員系富裕層です。投資の本などを参考に、安定したフロー（収入）が欲しいため、金融資産のほとんどを高利回りの外貨建て劣後債に投資していました。
1-1. キャッシュフローの追求とリスクの誤認
金融資産のほとんどを株式などの成長資産ではなく債券に偏重させた結果、総資産額が名目インフレに連動して増えていないという課題がありました。
- リスクの懸念: 高いキャッシュフローを求めた結果、保有する劣後債券はリスクが高い商品であり、ご自身でもそのリスク総量が許容度を超えているのではないかと懸念していました。
1-2. 解決すべき課題：インフレ対策とバランスの欠如
不透明な世界情勢の中で、資産を安定的に保全するためには、以下の2点が課題でした。
- インフレ対策: 債券偏重は、インフレによる実質資産価値の目減りリスクに弱い。
- 知識の補完: 債券運用で注意すべき（金利、デュレーション、クレジットなど）専門知識が欠けている。
2. 課題解決へのステップ：安定性と成長性を両立する資産配分
私たちは、相談者様の「安定したフローが欲しい」というニーズを尊重しつつ、資産全体のリスクを健全化するサポートを行いました。
2-1. 【STEP 1】債券運用のリスクと変動幅の分析
保有する劣後債券の金利動向、デュレーション（金利変動リスクの度合い）、クレジットリスクなど、債券運用で注意すべき専門的な要素を伝達しました。今後、金利が急変した場合に、資産がどの程度変動するかを定量的に分析し、ご自身のリスク許容度を正確に把握していただきました。
2-2. 【STEP 2】キャッシュフロー確保のための多角化
安定的なキャッシュフローを確保しつつ、インフレや株価動向へのヘッジも行うため、資産の組み替えを行いました。
- REITやコモディティ: 安定したインカムゲインを生み出し、かつインフレに強いREIT（不動産投資信託）やコモディティ（金など）の重要性を説明し、ポートフォリオに組み入れることをアドバイスしました。
- バランスの最適化: 株式などの成長資産の比率を高めつつ、キャッシュフローを得るための最適なアセットアロケーション（資産配分）を分析しました。
2-3. 【STEP 3】相続シミュレーションと資産保全の指南
金融資産が多いため、相続シミュレーションを実施。不透明な世界情勢の中で、資産を安定的に保全するための多角的な手法（国際分散、法務・税務対策）を指南しました。
3. まとめ：債券投資は「利回り」だけでなく「リスク」で選べ
この事例は、債券投資が「利回り」だけでなく、リスク許容度やインフレ対策といった多角的な視点で選ぶべきであることを示しています。高キャッシュフローの追求は、時にリスク許容度を超えた運用へと繋がりかねません。専門知識に基づいた客観的な分析と、全体最適の資産配分こそが、富裕層の安定的な資産保全の鍵となります。
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