富裕層の資産承継において、税務や法務といった技術的な対策以上に重要となるのが、「家族の絆」と「価値観の継承」です。これを実現するのが、ファミリーガバナンスの中核となる家族会議です。
単なる情報共有の場ではない、戦略的な家族会議は、将来的な相続トラブルを未然に防ぎ、一族の資産を永続的に守るための鍵となります。本記事では、この家族会議を成功に導くための具体的な進め方と、資産承継への活用方法について、専門家が徹底解説します。
[ 目次 ]
1. 家族会議の目的とファミリーガバナンスにおける位置づけ
家族会議は、資産家一族にとって、理念を共有し、重要事項の合意形成を図るための組織的な基盤です。家族会議の羅針盤となり、議論のブレを防ぎ、すべての決定を一族の共通価値観に沿わせるための絶対的な前提となるのが、ファミリーミッション・ステートメント(FMS)です。
1-1. 家族会議が解決する2大リスク
家族会議は、主に以下の2つのリスクを回避するために機能します。
- 相続トラブルのリスク: 財産の現状や承継の意図が不透明なために生じる、家族間の不信感や対立を解消します。
- 資産散逸のリスク: 価値観や理念が共有されていないことで、次世代が資産を浪費したり、不適切な投資判断を下したりするリスクを防ぎます。
まとめ:家族会議は、相続トラブルと資産散逸という、富裕層が抱える最も大きな2つのリスクを回避するための不可欠な組織的活動です。
1-2. 成功の基盤となるファミリーミッション・ステートメント(FMS)
家族会議を単なる雑談の場ではなく、生産的な合意形成の場にするためには、ファミリーミッション・ステートメント(FMS)を基盤とすることが重要です。FMSという「憲法」があることで、議論は感情論ではなく、一族の価値観という軸に沿って進められます。
2. 成功に導く家族会議の具体的な進め方
戦略的な家族会議は、明確な準備と中立的なファシリテーションによって成功します。特に、感情的な対立が起こりやすい「お金」や「承継」のテーマを扱う際は、外部の専門家がリードすることが有効です。
2-1. 【STEP 1】議題の選定とアジェンダの事前共有
何を話し合うかという議題は、必ず事前に決めて、関係者全員に共有します。議題は、具体的な問題(例:この不動産の売却の是非)と抽象的なテーマ(例:一族の社会貢献の理念)の両方を含めることが望ましいです。また会議は、事前準備と専門家による中立的なファシリテーションが不可欠です。議論を建設的に進め、合意形成を文書化することが重要です。
2-2. 【STEP 2】中立的なファシリテーター(専門家)の選任
誰が会議をリードするかが成功の鍵です。家族の誰かがリードすると、その人の意図や感情が入りやすくなります。ファミリーオフィスの専門家をファシリテーターとして迎えることで、議論を脱線させず、全員が発言しやすい公平な環境を整えることができます。
2-3. 【STEP 3】建設的な議論と合意形成
会議では、「なぜ、そう考えるのか」という理由や背景に焦点を当て、批判ではなく意見交換を促します。合意形成に至った決定事項は、必ず文書化し、記録として残します。
2-4. 【STEP 4】次世代への役割付与と教育の実践
家族会議は、次世代を「資産の守り手」に育成する場でもあります。資産の状況を単に開示するだけでなく、次世代に「投資委員会のオブザーバー参加」や「慈善活動の予算管理」といった具体的な役割を与えることで、当事者意識とリーダーシップを育てます。
3. 家族会議の活用:次世代育成と円滑な承継
家族会議は、資産の「保全」だけでなく、「継承」を成功させるための具体的な施策を実行する場です。法的手段の意図を共有し、次世代に資産管理の能力と責任を教え込む「場」としても機能します。
3-1. 相続トラブルを未然に防ぐ具体的な進め方
特にセンシティブな相続のテーマについては、以下の点を重視して議論を進めます。
- 情報の完全開示: 隠し事なく、資産の全体像と承継に関する意図を明確に伝えます。
- 遺言・信託の意図の説明: 遺言書や家族信託といった法的手段の内容を、作成者の真意とともに家族に説明し、理解を求めます。
- 役割分担の明確化: 資産管理における役割(例:誰が事業を引き継ぐか、誰が不動産を管理するか)を明確にします。
【関連記事:相続トラブルを未然に防ぐ『家族会議』の成功法則:専門家が教える議題設定と進め方】
3-2. 次世代育成を組み込んだ教育戦略
真の資産承継は、資産とともに「資産を扱う能力」を引き継ぐことです。家族会議を通じて、次世代に資産の目的や管理責任を具体的に教え込みます。
この教育戦略は、単なる勉強ではなく、一族の資産を防衛するための戦略的な準備です。
【関連記事:次世代への『資産の守り手』育成:富裕層が実践する効果的な金融教育と価値観の継承】
4. 家族会議に関するよくある質問(FAQ)
4-1. 家族会議はいつから始めるべきですか?
A: 資産が特定の水準に達した時よりも、お子様が物事の判断を理解できる年齢(例:10代前半)になった時点で始めるのが理想的です。最初は資産の具体的な数字ではなく、FMSで定めた「家族の理念」や「社会貢献」といったテーマから始め、徐々に資産管理へと移行していくのが円滑です。
4-2. 外部の専門家はなぜ家族会議に必要なのですか?
A: 外部の専門家(ファミリーオフィスなど)は、感情が入りやすい家族間の議論において、中立的な立場で議論の脱線を防ぎ、感情的な対立を避けることができます。また、相続や税務に関する専門知識に基づいて、議論を最も建設的な方向へと導く役割を担います。
4-3. 家族会議の頻度はどれくらいが適切ですか?
A: 資産の規模や家族構成にもよりますが、通常は年1回〜2回の定期開催が推奨されます。定期的に行うことで、会議が「特別なイベント」ではなく「日常的な組織運営の一部」として定着し、参加者の心理的なハードルが下がります。
まとめ|家族会議は「資産の永続性」を支える柱
富裕層のライフプランを成功に導く鍵は、高度な技術や手法ではなく、強固なファミリーガバナンスです。そして、そのガバナンスを支える柱こそが、戦略的に運営される家族会議です。
家族会議は、単なる情報共有ではなく、ご家族の絆を育み、次世代にリーダーシップを継承し、資産を永続的に守るための、最も重要な成功法則です。複雑な家族会議の設計と運営にお悩みの方は、ぜひ中立的な専門家にご相談ください。
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