本日のテーマは、「2026年投資戦略 米イールドカーブがスティープニング。ねらい目の投資戦略は?」です。
先週、今年最後のビッグイベントとも言われていたFOMCが開催されました。結果として、予想通り0.25%の利下げが決定されました。
0.25%の利下げ自体も重要ですが、FOMCの前後に、アメリカのイールドカーブに変化が見られています。実はこちらの方が重要です。イールドカーブ、各年月の金利を取ったカーブがスティープニング(急勾配)になってきています。

具体的には、オレンジで示した1ヶ月前のチャートに対して現時点を示した紫のチャートを比較した時、6ヶ月金利が、FOMC後に低下していることが確認できています。
また、10年、20年、30年の金利を見ても、1ヶ月よりも現在の金利が高くなっています。つまり、短期金利が下がり、長期金利は上がっています。
さて、2025年も終盤に差しかかり、多くの方が「2026年はどのような投資戦略を立てようか」と考えていることでしょう。
そこで本日は、アメリカのイールドカーブがスティープニングしている局面において、過去どのような投資戦略が有効だったのかをお伝えし、来年以降の参考にしていただきたいと考え、このテーマを選ばせていただきました。ぜひ最後までご覧ください。
[ 目次 ]
イールドカーブがスティープニング
イールドカーブのスティープニングは続くのか
最初に、イールドカーブのスティープニングが今後も続くのかです。結論から申し上げますと、2026年以降もスティープニングが続く可能性が高いと予想されます。
今回のFOMCでは、雇用の減速リスクを意識しながら、コアPCEは依然として高い水準、関税コストについても、インフレ要因として残り続ける見込みで、FRBとしては非常に難しい判断を迫られるものでした。
そのような中、2026年、2027年にかけて、FRBのメンバーがどのような金融政策を想定しているのかがドットチャートとして示され、2026年、2027年にそれぞれ1回ずつ利下げを行うとの予測が示されました。

こうした状況を考えると、難しい判断が続く中ではありますが、短期金利については、今後も低下する可能性があります。
一方で、長期金利はインフレ懸念が引き続き残っていることに加え、現在行われている積極的な財政政策を考慮すると、国債の供給が増える可能性があり、長期金利はなかなか下がりにくい状況にあると言えます。
さらにAIやエネルギー、インフラといった分野への投資に伴い、民間企業による巨額の資本需要が存在していることもあり、大型の起債が続き、長期債は金利が下がりにくく、構造的には上昇しやすい状況にあると言えます。
景気がいい中での利下げ継続、国債増発、資金需要による長期金利上昇となれば、2026年以降もイールドカーブはスティープニングが続く、あるいは進む可能性があるとマーケットでは考えられます。
イールドカーブのスティープニングからのヒント
では、イールドカーブがスティープニングした場合、どのような戦略を取るべきなのでしょうか。イールドカーブが景気後退を伴わない金融緩和、利下げで急こう配になることは、基本的に将来の成長に対する強気のシグナルとして、マーケットは捉えます。

ですから、どのセクターが恩恵を受けるのかを知ることが重要となります。
過去の実績を見ると、資本財、鉱業、金融、小型株といった景気敏感セクターが選ばれやすい傾向があります。スティープニングが継続するのであれば、景気敏感セクターを狙っていくというのが、1つのターゲットになる可能性があるわけです。
ただ、大事なポイントがあります。歴史的に見ると、スティープニングだけでなく、PMIの改善、EPSの改善の3つが揃ったとき、非常に高い確率で景気敏感セクターがアウトパフォームすることで知られています。
そのため、ここからPMIが回復していくのか、EPSの改善が見込まれるのを確認したいと思います。
株価上昇が継続するための条件
グローバルPMIは上昇トレンドに入る見通しが高い
まずは世界的な指標として知られる、グローバルPMIを確認します。

左の図表は新規受注から在庫を差し引いた指標です。新規受注が50を超え、在庫が不足し、プラスに転じていることが分かります。
旺盛な需要に在庫が追いついていないため、生産をさらに行わなければならない状況です。この条件から見ても今後、特に製造業においては、PMIが上昇しやすい環境だと言えます。
右の図表をご覧ください。青いチャートが上昇するほど、世界の18金融機関が利下げを行っていることを示します。金融緩和で影響を受けるPMIと非常に高い相関関係があるため、PMIは今後上昇する可能性があると考えられます。
また、水色で示した金融緩和は、9ヶ月先行してPMIをリードすると言われています。現在の状況を考えると、2026年前半も引き続きPMIが上昇することが想定されます。
このように新規受注と在庫の関係、金融緩和の状況から見ても、PMIはかなり高い確率で上昇する可能性があります。イールドカーブがスティープニングし、PMIが上昇していることから、景気敏感セクターが上がりやすくなる3条件のうち、2つを達成していると言えます。
2026年も米経済は底堅さを継続へ:FRBは強気の成長見通し
3つ目の条件、EPSです。こちらは、先週開催されたFOMCで、FRBが来年以降どのような経済見通しを立てたかを示した資料です。

12月のFOMCで発表された、3ヶ月ごとに発表される経済見通し(SEP)を見ると、FRBがかなり強気な姿勢を示しています。
例えば左の図表、GDPは2023年、2024年の平均成長率が2.8%。2025年は1.7%の成長に留まると見られている中、2026年は9月時点で1.8%だったものが、12月は2.3%と強気な見通しに変更になっています。
一方で、懸念材料の物価は、コアPCEが2023年、2024年は3.5%と高い水準でしたが、今年は3.0%まで低下し、いったん落ち着いています。9月時点では、来年のPCEは2.6%まで下がると見られていましたが、今回の見通しでは、0.1%引き下げられて2.5%となりました。
来年は経済成長を実現しながら物価のコントロールもできると、FRBが考えていることが分かり、経済の底堅さ、自信がうかがえます。
GDPが伸びていることは、米国企業の売上成長が維持されることを意味します。インフレ率が下がるとコスト面でも企業にとってプラスになりますから、EPSの成長も後押しされる状況にあると言えます。
テック企業優勢も景気機敏感銘柄への物色が進む可能性
では、企業業績はどうでしょうか。ファクトセットの資料を見ると、S&P500は14%台のEPS成長が見込まれており、来年に向けてEPSがしっかり成長していることが確認できます。

加えてメタル、インダストリアル、工業、素材関連セクターにおける売上、EPSの成長は非常に大きく、企業業績の成長の裾野が広がってきていると言えるでしょう。こうした状況を踏まえると、2026年のEPS成長も十分に見込める環境にあると言えます。
イールドカーブがスティープニングし、EPSの成長がしっかりと続き、PMIも上昇してくるのであれば、来年は景気敏感銘柄がアウトパフォームしやすい状況にあると分かりました。
景気敏感株はAI導入の恩恵を受けやすい

次にゴールドマンサックスが出している資料、AIの導入でEPSが押し上げられるセクターがどこかを示したものをご覧ください。
AIの導入によって、工業セクターの利益の振れ幅が非常に大きくなっています。それ以外にも、一般消費財や素材といったセクターも、景気敏感銘柄はAI導入の恩恵を受けやすいことが分かっています。
2026年に限った話ではなく、今後数年間で進んでいくAIの導入が景気敏感銘柄の業績をさらに後押しする可能性があることは、マーケットとしても注目していくべき点でしょう。
景気敏感株の好調は米株市場にもプラス!
最後にご覧いただきたいのが、こちらのデータです。金融関係セクター、工業関係セクターにおいて、過去1年間で最高値を取った企業が10%以上あるという、非常にいいモメンタムが出ています。

敏感銘柄でモメンタムがいいときには、その後、S&P500が大きく伸びる傾向があると言われています。
イールドカーブだけでなく、来年の状況として景気敏感株が良くなるのではとマーケットははすでに動きだしており、そのことがS&P500を押し上げる効果を持つのではないかと、流れから期待されているのです。
2026年の投資戦略を考えるうえで、今後イールドカーブはさまざまな場面で取り上げられることでしょう。金融機関のレポート、新聞などでも取り上げられる機会が増え、「景気敏感株に注目しましょう」という内容が多くなると考えられます。
ただし、イールドカーブのスティープニングだけでなく、PMIや企業業績を加えた3つの要素が揃って、はじめて上昇しやすい環境だと言えます。ぜひ、こうした目線でPMI、業績がどうなのかを常に確認しながら、イールドカーブの形状をご確認ください。
こうした点を踏まえて2026年の投資戦略を立てていただければ、マーケットを上回るパフォーマンスを残せる可能性があります。
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