利上げ後も続く円安の皮肉
12月22日の東京外国為替市場で、円相場は1ドル=157円台前半から半ばで推移。日本銀行が12月19日の金融政策決定会合で政策金利を0.75%へ引き上げたにもかかわらず、為替市場では円安圧力が強まるという逆説的な状況が生じています。
日銀は政策金利を0.25%引き上げ、30年ぶりの高水準となる0.75%に設定しました。これを受けて長期金利は上昇し、22日には一時2.10%と約27年ぶりの高水準を記録しています。
しかし、植田和男総裁が記者会見で「中立金利」について「特定することは難しく、かなりの幅をもってみる必要がある」と言及したことが転換点となりました。市場が期待していたタカ派的な姿勢や具体的な利上げペースへの言及がなかったため、円売り・ドル買いが加速しました。円相場は一時157円70銭台と約1カ月ぶりの安値を付け、対ユーロでも184円70銭台と1999年のユーロ導入以来の最安値を更新しています。
期待インフレ率の上昇が円安を後押し
今回の円安のもう一つの背景には、期待インフレ率の上昇があります。ブレーク・イーブン・インフレ率は1.76%と、12年7カ月ぶりの高水準に達しました。期待インフレ率が上がると、将来に同じ1円で買えるモノ・サービスの量が減ると考えられます。これは市場参加者が「円の購買力が下がる」と予想することと同じ意味で、相対的に円の魅力が低下します。その結果、円を売って他通貨を買う動きが強まり、円安が進みやすくなるのです。
日銀の「ゆっくりとした利上げ」姿勢が、政策が後手に回る懸念を呼び起こしています。さらなる円安が輸入物価を通じて国内のインフレを押し上げるとの見方が強まり、それがまた円売りを誘うという負のスパイラルを形成しつつあります。
政府の円安牽制と介入への警戒
こうした円安の進行に対し、日本政府は強い危機感を表明しています。22日、三村淳財務官は「一方向で急激な動きがみられ、憂慮している」と述べ、投機的な動きを含めた行き過ぎた変動に対して「適切な対応」をとる方針を強調しました。
市場では、政府・日銀が2024年7月と同様に為替介入に踏み切るのではないかという警戒感が強まっており、これが157円台後半での円の下げ渋りを支える要因となっています。
財政拡張と株価への影響
為替動向を左右するもう一つの要因は、高市早苗政権による財政政策です。26日に閣議決定予定の2026年度予算案は、一般会計総額が120兆円超と過去最高を更新する見通しです。この財政拡大への思惑が国債増発への警戒感を呼び、長期金利を押し上げる要因となっています。
一方、株式市場にとって円安は追い風として機能しています。円安による輸出企業の業績押し上げ期待から、日経平均先物は5万円台を回復しました。
今後の見通しについては、専門家の間でも意見が分かれています。次の利上げまで時間が空くとの見方から、2026年1〜3月期に162円から165円まで円安が進むと予測する声がある一方、FRBによる来年前半の追加利下げを見込み、来年3月末までに155円まで戻るとの予測もあります。
当面の焦点は、25日に予定されている植田総裁の講演です。ここで円売りの調整が入るかどうかが注目されます。
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