2026年初頭、世界のソフトウェア株が歴史的な急落に見舞われています。年初からの下落率は20%を超え、約1兆ドル(約150兆円)もの時価総額が消失しました。S&P 500が横ばいで推移する中、iシェアーズ・エクスパンデッド・テック・ソフトウェア・セクターETFは約21%下落しており、市場関係者はこの混乱を「SaaSpocalypse(SaaS黙示録)」と呼び始めています。SalesforceやAdobeといった大手SaaS企業も例外ではなく、Salesforceの株価は26%下落するなど、業界のリーダーたちが軒並み苦境に立たされています。
AIエージェントがSaaSビジネスモデルを崩壊させる
この急落の主因は、生成AIの急速な進化による「SaaSビジネスモデルの崩壊」への懸念です。特に、Anthropicが2026年1月に発表した自律型AIエージェント「Claude Cowork」の登場が市場に衝撃を与えました。従来、SaaSは会計・デザイン・顧客管理といった特定業務を効率化するツールとして導入されてきました。しかし最新のAIエージェントは、人間の介入なしに複数のアプリを横断してタスクを完結させることができます。さらに、AIによるコーディング能力の向上により、企業は外部のSaaSベンダーに頼らず、自社で必要なツールをAIに開発させる「内製化」も進んでいます。
また、SaaS企業の収益基盤である「シートベース(従業員数)課金」モデルも揺らいでいます。AIエージェントの導入により、1人の従業員が5人分の業務をこなせるようになれば、必要なライセンス数は5分の1で済んでしまいます。AIによる生産性向上が、逆説的にSaaS企業の売上減少に直結するという構造変化を、市場は「SaaSの死」として織り込み始めているのです。
投資マネーが「アプリ売り・インフラ買い」へシフト
投資家はAIによって「破壊される側」と「恩恵を受ける側」を冷徹に選別しています。文書作成や給与管理などのアプリケーション層は代替リスクが最も高いと見なされており、著名ファンドマネジャーのニック・エバンス氏はSAP・ServiceNow・Adobeなどのポジションをほぼ全て処分しました。ヘッジファンド勢によるソフトウェア株への空売り利益は240億ドル規模に達しています。
一方、AIインフラ分野には資金が流入しています。NVIDIAなどの半導体やデータセンター、電力・ネットワークインフラが注目されているほか、CloudflareやDatadogといったインフラ系ソフトウェア企業も株価が回復基調にあります。「AIがソフトを代替しても、それを動かすインフラの需要は消えない」という判断が投資家の間で広がっているのです。
この「SaaSショック」は欧米にとどまらず、日本市場にも波及しています。ソフトバンクグループは欧米ソフトウェア株の下落による運用成績悪化が懸念され、NECや富士通といったシステムインテグレーターもAIによるシステム開発自動化への懸念から連鎖安となりました。
生き残りをかけたSaaS企業の変革
逆風の中、SaaS企業はビジネスモデルの根本的な変革を迫られています。まず「人数課金」から、AIが創出した価値や成果に基づいて課金する「成果ベース」モデルへの移行が急務です。また、AIを脅威としてだけでなく自社製品に取り込む動きも加速しており、SalesforceはAIエージェント機能「Agentforce」を強化し、ServiceNowはOpenAIとの提携を発表しました。
2026年のソフトウェア株の動向は、単なる一時的な調整ではなく、AI時代による産業構造の再編を示唆しています。投資家には、過去の成功体験を捨て、AI時代に適応できる「真の勝者」を見極める厳しい選別眼が求められています。
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