本日のテーマは、『米国株 イラン情勢と原油リスク それでも米国株は強気か?」で見ていきたいと思います。
先週末、アメリカとイスラエル軍がイランに攻撃を仕掛けました。それにより中東情勢が悪化し、原油価格が上昇しています。
そこで本日は、こうした状況の中で、米国株は強気のままで良いのかどうかを分析します。

こちらの図表をご覧ください。こちらはゴールドマン・サックスが出した、今後の原油価格の見通しをシナリオ別に示したものです。
ホルムズ海峡が1ヶ月閉鎖された場合の影響を想定した場合、原油価格の理論上の上昇幅は10ドル~15ドル程度になる予想です。
例えば、封鎖され、代替輸送も備蓄放出も行われない極端なケースでは15ドルの上昇。代替輸送が一部可能であったり、備蓄放出が行われたりする場合には12ドル、あるいは10ドル程度に留まるとされています。一方で、供給面での他の対応が活発になれば、上昇幅は7ドルから4ドル程度に抑えられる可能性もあるとも示されています。
ここだけを見ると、原油価格がどんどん上昇していくというよりは、供給側の一部的なショックに収まり、パニック的な状況にはならないのではとマーケットが予測していることが分かります。
ここで重要なポイントは、15ドルが上限ではないということです。あくまでマーケットが「この程度の範囲に収まるだろう」と織り込んでいるに過ぎません。ということは、想定レンジを上回った場合、マーケットは織り込んでいませんから、市場はかなり動揺が走る可能性があります。まず最初に、私たちはこの原油のシナリオレンジを把握しておく必要があります。この水準を超えたら要警戒です。
[ 目次 ]
戦争時の株価の注目ポイント
市場が織り込むのは「紛争」ではなく「不確実性の持続期間」
こちらのスライドをご覧ください。
これは紛争発生後のヨーロッパのストック600が、1日、1ヶ月、3ヶ月でどれだけ下落したかを示したものです。

湾岸戦争、ロシアによるウクライナ侵攻のケースでは下落が継続していますが、それ以外のケースでは上昇へ転じており、安定しています。紛争の質や規模ではなく、どこまで拡大していくのか、どのくらい長引くのかによって、その後の下落につながるかどうかが決まっていることがわかります。
先ほど原油価格は15ドル程度の上昇に留まるのではないかというシナリオをご紹介しましたが、もしその水準を上回る場合は、事態が長期化し、短期で終息できなかった場合だと言えます。
報道によれば、イランの新しい執行体制とトランプサイドが対話を持つと報じられています。実現すれば、ある程度短期での終息に向かう可能性が考えられます。一方で、決裂したり、事態が長引いたりするようであれば、シナリオを上回る展開となり、マーケットに大きな影響を与えることになります。
今の状況は警戒しつつも、過度に不安を煽られる必要はありません。事態の進行次第では短期で終息し、落ち着く可能性もあることを念頭に置きながら、マーケットを確認する必要があるでしょう。
現在の米国株投資家の需給環境
慎重心理の中でポジションは回復
では、そこまで長期化しなかった場合はどうなるのでしょうか。
現在のアメリカ株式市場の状況を確認してみましょう。2〜3週間前まで、アメリカの株式市場は非常に強気で過熱感が見られていましたが、今は少し状況が変わってきています。

左は個人投資家の心理状況で、右は機関投資家が株をどの程度保有しているかを示しています。個人投資家を見ると、強気と弱気が拮抗し、ここ数ヶ月の非常に強気な状態から中立へと変化してきていることが分かります。株式を減らし、買いに向かう状況が作られつつあるというのが、現在の個人投資家の状況です。
機関投資家についても同様です。少し前まではほぼ100%株式を保有していましたが、現在は70%台までポジションを減らしている、買い余力がある状態にあります。
想定外の出来事が起こったとしても、ある程度は買いに向かうことができるバッファーを個人・機関投資家がともに持っていると言えます。その意味では、需給環境は以前より改善していると言えるでしょう。
悲観シグナル点灯時、S&P500は高確率で上昇
次にこちらをご覧ください。こちらは悲観指数で、個人投資家のプット・コールレシオを示しています。現在は0.75を超えていますから、下がると考えている方が多いことが分かります。

プット・コールレシオが0.75を超えて悲観的になると、状況が好転した場合、売りポジションが損をしますから、ポジションを閉じる必要が出てきます。結果、買い方に向かうことになりますから、0.75を超える強い悲観状態では、状況が変わったときに株価が一気に上昇しやすくなります。
今はプライベートデットの問題や、今回の中東情勢、AIやSaaSに関する懸念など、さまざまな要因が重なり、マーケットは悲観的になっています。しかし、これらの問題が解決に向かえば、個人投資家が楽観に転じ、結果としてマーケットを押し上げる可能性があるのです。
現在の米企業業績は引き続き堅調
S&P500のEPSは短期下方・後半上方修正
その中でポイントとなるのが、企業業績です。2週間前の記事では、業績は非常に好調で上方修正が続いているとお伝えしました。しかし、細かく見ると、2週間の間で少し内容が変わっています。

2026年1Qについては若干の下方修正が入っている一方で、2Q、3Q、4Qについては上方修正が入っています。短期的には弱含むものの、後半にかけて回復する見通しなのです。
背景には、テック企業の業績見通しの上方修正があります。これまで多くの設備投資を行ってきましたが、収益化が十分に進んでいない部分もありました。しかし、年後半にかけて収益化が進むだろうと予想されています。つまりファンダメンタルズ面では、強気基調を崩すような業績見通しにはなっていないことが分かりました。
米大手テックは「投資先行・回収待ち」の局面へ
次に、大手テック企業、M7企業の決算を受けた結果をまとめた資料です。

業績見通しが上方修正されたか、下方修正されたかを見ると、結果はほぼ横ばいとなっています。目先では設備投資に対するリターンが大きく返ってきている状況にはなく、大幅な上昇にはつながっていません。
一方で長期的に見ると、今年、来年にかけての業績成長率は依然として高い水準が続く見通しです。目先は収益化が十分でなくとも、後半に向けて収益が上がると予測されているのです。
投資先行・回収後ずれのフェーズにあり、過去の大きな相場とも似た特徴を持っている、シナリオは崩れていないことが図表からも確認できました。
マグ7のバリュエーション・プレミアム消失
最後にこちらのスライドをご覧ください。青いチャートはバリエーションが非常に高いテスラを除いたPER、濃い青のチャートは生活必需品セクター、ディフェンシブセクターのPERを示しており、両者のPERがほぼ同水準まで接近していることが確認できます。

EPSの成長率はM7の方が高いですが、バリュエーション面ではほぼ同じ水準になっています。高い成長を背景としたバリエーションのプレミアムが縮小し、解消されてきているのです。
プレミアムが縮小した後は、最小化のフェーズへ移行する傾向が強いです。テクノロジーセクターのEPS成長が今後も維持されるのであれば、優位な相場が続く可能性があります。その意味では、シナリオはまだ崩れていないと、バリュエーション面からも確認できました。
テクノロジー企業主導の中期的な成長シナリオは変わっていません。ただし、短期的には不確実性を伴っています。長期化して原油価格が大きく上昇するような事態になれば、政策金利を下げにくい状況になります。その結果、長期金利が上昇する可能性があります。金利上昇や不確実性の長期化が、株価に影響を与えることは十分に想定しておく必要があります。
一方で、現在のマーケット環境や報じられているニュースを見ると、意外と早期解決へ向かう可能性もあります。そのため状況をしっかりと見極めることが重要です。
事態が長引かず、拡大もせず、不透明感が増さないのであれば、ファンダメンタルズに沿った株価上昇が見込まれます。そう考えると、強気シナリオはまだまだ崩れていないと捉えて良いと言えるでしょう。
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