本日のテーマは、「米国株 FOMCを受けた今後の投資戦略」です。
先週、マーケットから非常に注目されたFOMCが開催され、FRBは政策金利の据え置きを決定しました。その後の市場では株式や債券、為替が大きく動き、イールドカーブにも変化が表れています。
FRBは金利据え置きを決定
月ごとに金利をプロットしたイールドカーブを見ると、7月27日時点のイールドカーブと、FOMC通過後の直近の金利水準を比較すると、5年から30年までの長期金利が上昇する一方、短期金利は下落しています。

こうした状況がどのような影響を与えるのかを確認したいと思います。
まずは今回のFOMCを振り返りましょう。
政策金利は据え置きとなりました。事前予想では、2名が利上げを主張するとみられていましたが、実際には3名が利上げを主張しました。FRBがインフレに対して警戒感を持っていることが分かります。
政策金利の据え置きを受け、短期金利は低下しました。一方、10年金利や30年金利などの長期金利は上昇する、ツイスト・スティープニングが進みました。
長期金利の上昇によって株式と債券が売られ、短期金利の低下によって米ドルも下落しました。その結果、株安・債券安・ドル安の「トリプル安」となっています。
この値動きからは、マーケットが今回のFRBの決定をネガティブに受け止めていることが分かります。
FRBは利上げを見送りましたが、中東情勢やインフレ指標を見る限り、インフレは依然として高止まりしています。
ウォーシュ議長は前回の7月のFOMC後に、「物価上昇率は2%台で良いのではなく、2%が目標だ」というタカ派的な発言をしていました。
そのため、市場では利上げに前向きだと受け止められていましたが、今回は政策金利を引き上げませんでした。
これにより、FRBがインフレ対応で後手に回り、将来の物価上昇を抑えられなくなるのではないかという懸念が高まりました。その結果、10年、20年、30年といった長期金利の上昇につながったと考えられます。
今回の記者会見では、金融政策を巡る不確実性の高まりも明らかになりました。
パウエル前議長の時代には、今後どのような金融政策を実施するのかを、発言を通じてある程度市場に伝えていました。そのため、投資家は将来の政策を予想しやすく、市場の変動にも対応しやすい状況でした。
一方、ウォーシュ議長は、先行きの政策見通しをほとんど示さない方針です。
将来の予測が非常に困難となり、結果として市場金利が金利を自ら押し上げる、今回のような対応を期待していると言われています。
例えば、市場がインフレを警戒すれば、中央銀行が政策金利を引き上げなくても長期金利が上昇します。長期金利が上昇すれば景気に下押し圧力がかかり、結果としてインフレが沈静化する可能性があります。
そのため、例年8月に注目されるジャクソンホール会議や、9月のFOMCで具体的な政策方針が示されるとの期待は低下しています。
今後も長期金利がマーケットの状況を映す形になると考えられ、これから市場金利が大きく動くのではとの懸念が広がり、株式市場がネガティブに捉えているのが現状です。
長期金利が高止まりする可能性
今後の金利については、高止まりする可能性が見えてきました。
ウォーシュ議長は7月のFOMC記者会見で、FRBの目標について、経済成長の幅を広げながらインフレ率を抑制することだと説明しています。
経済が成長している状況では、政策金利を変更して景気をコントロールするのではなく、長期金利の変動に調整を任せるのだと見られます。

現在の経済状況を確認するうえで参考になるのが、シティ・エコノミック・サプライズ指数です。この指数は、発表された経済指標が市場予想を上回ったか、下回ったかを示しています。
指数がゼロを上回っている場合、経済指標が市場予想よりも強いことを意味します。現在は指数がプラス圏にあるため、米国の経済指標は全体として強い状態です。
経済指標が強い間、ウォーシュ議長は短期の政策金利を動かすのではなく、長期金利の上昇を容認する可能性があります。長期金利の上昇によって景気を緩やかに抑え、インフレを沈静化させることが期待されるためです。
しかし、景気が良い間は調整を市場金利に任せるのであれば、長期金利は高止まりしやすくなります。その結果、株式市場のボラティリティも当面は高い状態が続くと、市場は捉え始めています。
反対に、経済指標が大幅に悪化した場合には、FRBが政策金利を動かす可能性があります。
ウォーシュ議長の肝煎:5つのタスクフォースの影響は?
金利が高止まりする可能性を示す理由が、もう1つあります。
ウォーシュ議長は就任時に、5つのタスクフォースを掲げました。外部の有識者を交えて検討を進め、9月から10月頃に中間報告を行い、12月末までに最終結論を出すとされています。
すでに発表されている5つから、金利にどのような影響があるかを見てみましょう。

1つ目はコミュニケーション方法です。
フォワードガイダンスを示さないこと、これまで注目されてきたドットチャート、FOMCの開催回数について見直しが行われます。
そうなれば、よりコミュニケーションは不足する可能性があり、見直しになった場合、長期金利が上昇する可能性があります。
2つ目は、FRBのバランスシート縮小です。
FRBが保有する米国債の買入を行わない、もしくは市場で売却してバランスシートを縮小することを考えていて、見直す場合には長期金利・住宅ローン金利の上昇が起こり得ます。
3つ目は、データソースの利用です。
政府が発表する経済指標には、発表までに時間差があります。そのため、今後は民間企業が提供する速報性の高いデータを活用し、経済の変化に素早く対応する可能性があります。
ただし、「利上げが行われるのではないか」「利下げに転じるのではないか」と市場が過剰に反応するようになれば、中短期金利のボラティリティが上昇し、株式市場にも大きな影響を与える可能性があります。
4つ目は、生産性と雇用です。
生成AIの普及などによって労働生産性が向上し、雇用に影響を与えると、中立金利も上昇し、金利が高止まりする可能性があります。
5つ目は、インフレ枠組みです。
今までの一般的なCPIだけでなく、価格変動が極端な品目を除外した刈込CPIを見た場合、政策金利が高止まりする可能性があるとマーケットは見ています。
以上のタスクフォースを見直すと、金利が下がる要素よりも、高い水準に維持する要素があると見られます。
経済指標が強ければマーケットの金利に任せ、長期金利が上がりやすい状況になります。9~12月にかけてタスクフォースの結果が明らかになると金利は上がりやすくなります。
当面は高い金利と付き合うことになると、マーケットは捉え始めています。
長期金利が緩やかに上昇した場合のメインシナリオ
では、この場合にマーケットはどういう動きをするのでしょうか。

これはあくまで一般論であり、必ずこのとおりになるわけではありません。
金融と銀行株は、イールドカーブのスティープニングが進む場合、利益を伸ばしやすくなるため、買われやすくなるでしょう。
インフレ要因が高止まりしている場合には、エネルギーセクターや素材セクターが買われやすくなります。
一方、大手ハイテク株やグロース株は、長期金利の上昇によってバリュエーションが低下しやすくなります。
ただし、すべてのハイテク株やグロース株が一律に売られるわけではありません。金利上昇によるマイナスを上回る業績成長を実現できる企業は買われ、金利の影響を強く受ける企業は売られるという、銘柄選別が進むと考えられます。
住宅ローン金利が上昇する場合、REITや住宅関連株には少し弱気になる可能性があります。資金のシフトが起こりやすい状況となるため、今後1~2週間は、こうした動きが出てくるかどうかに要注目でしょう。
債券だと、政策金利が大きく上昇しないのであれば、短期債は強い動きになると考えられます。一方、長期金利が高止まりし、金利が上昇する場合には長期債は売られやすくなるためやや弱気となります。
その結果、長期債を売って短期債を買う動きが広がり、イールドカーブのスティープニングがさらに進む可能性があり、金融株は買われやすくなります。
一方で米ドルです。長期金利が上昇し、2年金利もやや上昇する場合、金利との連動性が高い米ドルは底堅く推移する可能性があります。米ドルが強い状態では、新興国通貨に下落圧力がかかりやすくなります。米国の長期金利が高止まりする場合、新興国通貨の動きには注意が必要です。
また、米ドル高と実質金利の上昇は、ゴールドにとって上値を抑える要因です。そのため、現在のようにゴールドの値動きが重い展開が続く可能性があります。
今回ご紹介した内容は、長期金利が緩やかに上昇した場合のベースシナリオです。実際のマーケットが、必ずこのシナリオどおりに動くわけではありません。
ただし、金利上昇時に資金がどのように動きやすいかを事前に把握しておけば、相場の変化に応じて自分のポジションを調整しやすくなります。
今後は、これまでより金利が高い状態が、どのような影響を与えるのかを、中間選挙までの動きも含めて確認する必要があります。
今回のベースシナリオを参考に、現在のポジションや今後の投資戦略を改めて見直してみてください。
