今回のテーマは、「米国株 好成長=買いは危険? 注目セクターを総点検」です。
今週に入って、夏休みの方もかなり多いのではないでしょうか。マーケットも少し落ち着いてきていますので、こうしたタイミングを使って、米国の各セクターの状況を整理したいと思います。
今回は、全セクターのパフォーマンスやバリュエーションなどを確認しながら、どこに注目すべきなのかを見ていきます。最後には、現在注目している3つのセクターもご紹介します。
「業績好調なのに株価停滞」の理由は、大幅なPERの縮小
まず、米国を代表する11セクターの現状を確認します。図表は8月上旬時点の数字です。

2025年のEPSは実績値ベース、2026年と2027年については予想EPSを掲載しています。さらに、2026年と2027年のEPSが前年比でどの程度成長する見込みなのかも示しています。
一方、バリュエーションについては、各セクターのPERが過去5年間、10年間の平均と比べてどの程度高い、あるいは低いのかを示しています。
最後が今年の株価リターンです。年初から株価がどの程度上昇・下落したのかを示しています。
株価のリターンは、大きく分ければEPSの成長とPERの変化から考えることができます。例えば、PERが大きくマイナスでも、EPSが大きく成長すれば、結果として株価がプラスになるケースがあります。
こうした数字を確認すると、現在それぞれのセクターがどのような状況に置かれているのかが分かりやすくなります。
1つ目の注目点は、業績が好調なのに株価が低迷しているセクターがあるということです。
その大きな理由が、PERの縮小です。
S&P500の2026年のEPS成長率は33%、2027年は12.1%となっています。
それに対して、情報技術とコミュニケーション・サービスは、2026年、2027年ともにS&P500を上回る成長率が予想されています。業績そのものは非常に強いということです。
本来であれば、これだけ業績が伸びれば株価も大きく上昇して良さそうです。
実際、情報技術セクターは年初来で23%上昇しています。ただし、2026年のEPS成長率61.3%と比較すると、株価の上昇はやや控えめともいえます。
コミュニケーション・サービスに関しては、株価リターンが2.2%に留まっており、業績の伸びと比較すると株価はあまり上昇していません。
その原因はPERの低下です。
今年株価の上値が抑えられているセクターには、業績が伸びているにもかかわらずPERが低下しているものが多くあります。
では、PERが下がっているのであれば、いずれ元に戻るだろうから買いなのではないかと考えて良いのでしょうか。こちらは後ほど確認します。
資本財や金融には過熱感。セクターごとの「買われすぎ・売られすぎ」が鮮明
2つ目は、現在のPERが過去5年間、10年間の平均を下回っているという事実です。

歴史的な水準から見ても、割高なセクターと割安なセクターが存在します。
例えば、資本財・サービスや金融は、歴史的に見てバリュエーションが高い水準にあります。5年平均では+7%、10年平均では+12%。資本財は大きく上回っています。
背景として、資本財・サービスでは、AI、データセンター、防衛、電力インフラなどへの投資期待があります。業績以上に過去のPERを上回るとの期待があるのです。
金融については、高金利環境による利ざや改善が評価され、やや割高な水準になっています。
一方、情報技術、一般消費財、コミュニケーション・サービスは、歴史的な水準と比較しても低くなっています。
S&P500全体では、過去5年間の平均との比較が0%、過去10年間との比較が+5%となっていますが、これらのセクターは下回っています。
例えば、情報技術やコミュニケーション・サービスでは、AIへの投資負担や2027年の成長鈍化への警戒から、業績が好調であるにもかかわらずPERが大きく低下しています。
一般消費財についても、高金利や景気減速による消費への懸念から、PERが低下傾向にあります。
歴史的なバリュエーションと比較しても、現在はセクターごとに割高・割安の差が出ています。
では、こうした状況を踏まえ、どのセクターを買えば良いのでしょうか。
伸びるセクターを探すには?
ここで注意したいのが、EPSが高成長で、PERが割安なら買いという考え方です。これは、必ずしもそうとは限りません。

好成長であるにもかかわらずPERが低下している背景には、将来の成長鈍化や業績リスクを市場が先に織り込んでいる可能性があるからです。
その意味では、現在のEPS成長率とPERだけで判断するのはリスクがあります。
重要なのは、今、割安かではなく、市場が予想している業績をさらに上回ることができるのかという視点です。
勝てる視点は、2027年の予想EPSが今後上方修正され、さらにプラスアルファが期待できるかです。
情報技術を例にすると、S&P500の2026年のEPS成長率+33%に対して+61.3%、2027年もS&P500の+12.1%に対して+31.7%と、非常に高い成長が予想されています。
にもかかわらずPERが下がり、歴史的なバリュエーションも下回っています。
なぜでしょうか。
2026年の+61.3%から2027年の+31.7%成長へと、成長率そのものは大きく鈍化しているからです。
高い成長を実現した企業やセクターほど、反動による成長鈍化が警戒され、PERが低下しやすくなる傾向があります。
だからこそ重要なのが、2027年の予想EPSに対して上方修正+プラスアルファがあるかどうかです。
ここでいうプラスアルファとは、市場がまだ十分に予想していないサプライズ要因です。
こうした材料が出てくれば、株価が見直され、PERの低下が止まる、あるいは上昇に転じる可能性があります。
現在のマクロ環境を踏まえ、注目したいセクターを3つ取り上げます。
ヘルスケアセクター
ヘルスケアは、2026年のEPS成長率が+1.1%に対し、2027年は+21.7%の成長が予想されています。
すでに2027年のEPS成長が見込まれているとも言われていますが、2026年の+1.1%という低い成長率は、新薬や製品サイクル、利益改善の鈍化などによって、2025年から成長が大きく停滞していることが背景にあります。
今後、新薬や製品のサイクルが再び回転し始めれば、現在予想されている+21.7%を上回る成長になる可能性があります。
さらに考えたいのが景気減速です。
来年の景気は基本的に横ばいで推移すると予想されていますが、リスクシナリオとして景気減速も考えられます。
ヘルスケアはディフェンシブセクターであり、仮に景気が鈍化しても医療需要は落ちにくいため、EPSの成長は持ちこたえやすい特徴があり、相対的に高い評価を受ける可能性があります。
こうした理由から、ヘルスケアに注目している投資家が多くなっています。
ハイテクセクター
基本的に成長性が非常に高いことに加えて、まだ十分に業績へ織り込まれていないと考えられている材料があります。
AI投資がクラウド、広告、ソフトウェアなどの収益化フェーズへ波及していくと言われています。AIへの投資が業績に織り込まれれば、今後、上方修正される可能性があります。
さらにプラスアルファとして、高金利環境への耐久力があります。
現在は、高金利がある程度維持される可能性が高いと見られています。そうなると、多くの企業にとって資金調達コストが負担になります。
一方、大型IT企業やビッグテックは豊富なキャッシュを保有しており、財務面での耐久性が高い企業が多くあります。
高金利環境が続く中で、こうした財務の強さが改めて評価されれば、見直し買いが入る可能性がある点も注目したいポイントです。
金融セクター
金融は過去のPERと比較すると高い水準にあり、少し割高なのではないかと見られることもあります。
ただし、業績面ではまだ上振れ余地があると考えられています。
1つ目が、高金利の継続による利ざやのさらなる改善です。
金利が高止まりし、現在の想定以上に利ざやが改善すれば、EPSがさらに上昇する可能性があります。
もう1つが信用コストです。
深刻な景気後退に陥らず、景気が横ばい、あるいはソフトランディングとなれば、信用コストが大きくは悪化しない可能性があります。この点は、まだ十分に織り込まれていないポイントです。
景気後退に至らなければ、信用コストが抑えられ、利ざや改善も続くため、業績が上方修正される可能性があります。
2026年のEPS成長率+15.9%に対して、2027年の+5.1%という予想は低すぎるのではないか、という見方も増えてきています。
今後、業績予想が上方修正されれば、金融セクターにも見直し買いが入る可能性があります。
今回ご紹介した3つのセクターは、あくまでも一例です。
それぞれのセクターが置かれている環境を、EPS成長率、バリュエーション、年初来の株価上昇を構成する要因から分析すると、見えてくることがあります。
皆さんが狙っているセクターについて、今後、業績の上方修正+プラスアルファを描けるのかが今後の狙い目になります。
プラスアルファが市場参加者の多くがまだ予想していないものであるほど、サプライズとなり、上方修正につながります。
夏休みという、少しリフレッシュしてさまざまなことを考える時間が取れる時期だからこそ、各セクターを改めて分析してみてはいかがでしょうか。
こうした分析が、この秋以降の投資パフォーマンスのプラスアルファにつながります。

