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【米国金利】米国長期金利は5%を超えるか?米国債需給、金融政策、米国債保有状況などから分析。

【米国金利】米国長期金利は5%を超えるか?米国債需給、金融政策、米国債保有状況などから分析。

本日のテーマは、「米国長期金利は5%を超えるか?」です。

ここでいう長期金利とは、米国10年国債利回りを指します。現時点では4.8%まで上昇していますが、5%を超えるかどうかは、株式市場に非常に大きな影響を与えます。もちろん、金価格にも大きく影響します。

今回は、注目されている米国の長期金利がなぜここまで上昇してきたのか、背景と今後のポイントをお伝えします。ぜひ最後までご一読ください。

長期金利上昇は、FRBの利上げ観測だけでは説明できない

まず、現在の状況から見ていきます。

チャートの黄色い部分は、米国10年の実質金利を表しています。実質金利が上昇に転じていることに加え、米国の財政赤字や国債供給の増加などを反映する「タームプレミアム」も上昇していることが、長期金利を押し上げる要因となっています。

AI投資が長期資金を吸収:社債供給は過去最大規模へ

また、米国債の増発によって債券の供給が増え、金利が上昇しやすい状況になっています。ただ、債券を大量に発行しているのは米国政府だけではありません。ハイパースケーラーと呼ばれる大手テクノロジー企業です。

5社のハイパースケーラーにNVIDIAを加えた企業群が、多くの社債を発行しています。データセンターの建設をはじめとする大規模な設備投資には、非常に多くの資金が必要になるためです。

2026年には、3,206億ドル規模の資金調達が見込まれています。

こうしたAI関連企業は信用力が高いため、米国長期金利と需要を取り合う構造が強まると言われています。

米国債の供給量に加え、AI関連企業の社債供給量も増えているわけですが、どれくらい増えているのでしょうか。

デュレーションを10年換算で見ると、ハイパースケーラーによる供給は、2026年の米国債発行量の約70%に相当する水準まで増えています。それだけ大量の債券が市場に供給されているため、需給面からも金利が上昇しやすくなっていることがわかります。

5社による社債発行がすぐに止まるわけではありません。今年中は続くとみられるため、金利上昇の一因となっている債券の供給過多の状況もしばらく続く可能性があります。

米国債の買い手が変化:安定保有からレバレッジ取引へ

また、米国債の「買い手」も変化してきています。

以前、金についての記事でもお伝えしましたが、中国による米国債の保有額が大きく減少しています。

赤いチャートは中国の米国債保有額を表しており、2013年から2026年にかけて大幅に減少していることがわかります。

一方、グレーの部分はヘッジファンドです。こちらは2013年から2026年にかけて、米国債の保有を大幅に増やしています。

中国が減らした分は日本やイギリスが購入していますが、同時にヘッジファンドの存在感も高まっているのです。

ヘッジファンドの保有には、現物債と先物の価格差を利用するベーシス取引も含まれ、市場流動性を支えています。

反面、ヘッジファンドは長期保有を目的とした投資家というより、レバレッジをかけて短期的に取引するケースが多い投資主体です。そのため、今後は債券の売買が頻繁になり、金利変動が増幅される可能性があります。

以前と比べて金利の安定感が低下しており、状況が変われば金利が大きく上昇したり、大きく下落したりしやすくなっています。

原油高がインフレ懸念を再点火:長期金利を押し上げる

図表は、原油価格と米国10年国債利回りの相関を表しています。

現在、相関係数は0.7を超えており、歴史的に見ても、原油価格が上昇すると長期金利も上昇しやすくなっていることがわかります。

ただし、相関関係があるからといって因果関係があるとは限りません。原油価格が高ければ、必ず金利も高いままになるという意味ではありません。

それでも、現在の高い相関を考えると、原油高が続けば長期金利も下がりにくい状況が続く可能性があります。

G10債券でCTAショートが過去最大級:売り加速と反転リスクが併存

もう一度需給環境に戻ります。

これは米国債だけでなく、G10と呼ばれる主要国の国債にも関係する話です。

CTAと呼ばれるトレンド追随型ファンドが、現在、主要国の国債に対して過去最大級の売りポジションを取っている状況です。

債券を売るということは、金利上昇に賭けていることを意味します。現在の金利上昇には、CTAなどが債券を売り、金利上昇に賭けていることがわかりました。

金利上昇が止まれば、CTAが債券を買い戻す可能性があり、今度は金利低下が急速に進む可能性があるのです。

需給環境だけを見ると金利は上昇しやすい状況です。しかし、CTAなど短期トレーダーの動きを考えると、反転取引が起こりうることも念頭に置く必要があります。

利上げ後の長期金利は「上昇した理由」で決まる

需給面では金利が上昇しやすい一方、ヘッジファンドやCTAの動きを見ると、金利の振れ幅も大きくなりやすい状況です。

では、今後の金利を考えるうえで、どこを見ればいいのでしょうか。

下のスライドが非常に重要なポイントとなります。

下のチャートは、利上げ開始後、米国10年金利がどのように推移したかを表しています。上昇した例は1994年と2022年、下落した例が2004年と2015年です。利上げ後、10年金利がどう動くかは、様々なケースがあるのです。

重要なのは、利上げ後の長期金利がなぜ上昇したのか、つまり利上げを行う理由です。

利上げ後に長期金利が上昇した2022年と1994年を見てみましょう。

2022年は、インフレがまだまだ続くという見方から利上げが継続され、米国10年金利は上昇しました。

一方、1994年は、市場の想定以上に利上げが繰り返され、利上げ開始から90日間で長期金利が大きく上昇しました。

インフレが収まらない場合や、想定以上の利上げが繰り返される場合には、長期金利が上昇しやすくなるのです。

次に、利上げ後に長期金利が下落したケースを見てみましょう。

2004年は、事前にある程度の利上げ回数が市場に織り込まれており、実際の利上げが想定ほど多くなかったため、長期金利が下落に転じました。

2015年は、一度利上げした後、追加利上げについて慎重な姿勢が示され、長期金利が下落しました。

では、2026年はどうでしょうか。

チャートは、黄色い部分がインフレ率、青い部分がタームプレミアム、緑の部分が実質金利です。

今回、特に大きく上昇しているのが実質金利です。

実質金利には将来の政策金利見通しが反映されるため、今回の長期金利上昇のかなりの部分は、政策金利が上がるのではないかという織り込みによって発生しています。

現在は、2~3回の利上げが織り込まれてきています。実際には利上げが1回で終わる、あるいは利上げ後にインフレが低下するのであれば、10年金利は低下する可能性があります。

一方、利上げ後もインフレが収まらず、さらに利上げを続けなければならない状況になれば、1994年や2022年のように長期金利は上昇する可能性があります。

来週に控えるFOMCの結果、そこで出てくるコメント・ヒントが、今後の10年金利に大きな影響を与えるでしょう。

季節性は年末に向けた金利低下を示唆:ただし今回は構造要因が強い

次に、今後の季節要因について、アノマリーの観点からお伝えします。

第3四半期から第4四半期にかけては、1962年以降、需給面から長期金利が低下しやすい傾向があります。

ただし、今回はこのアノマリーがそのまま当てはまるとは限りません。FOMCの結果やインフレ動向、原油価格などから大きな影響を受けるでしょう。

現在は需給環境によって金利が上昇しやすくなっています。また、米国債市場ではCTAやヘッジファンドの存在感が高まっているため、金利の変動幅も大きくなりやすい状況です。

そして現在、来週のFOMCで利上げが行われる確率は約60%と見込まれています。利上げだけではありません。利上げ後にどのようなコメントが出るのかによって今後の長期金利の方向も変わってきます。

結論:金利は高止まりする可能性が高い、ただし斑点時の低下は早い

最後に、3つのシナリオを考えてみます。

今回のテーマは「米国長期金利は5%を超えるか」ですが、5%を超える可能性はあると考えています。

ただし、条件付きです。

まず、5%方向を試すシナリオです。相関が高まっている原油価格の上昇が続き、インフレが高止まりする、FOMCでの利上げ後もCPIが高止まりし、PCEも高い状態が続くようであれば、長期金利は5%方向に向かう可能性があります。

かつ、AI関連企業による大量の社債発行によって米国債の入札が不調になったり、FOMCで追加利上げが示唆されたりといった条件が重なれば、1994年型のタカ派サプライズとなり、長期金利が5%方向を目指す可能性は十分にあります。

次に、高止まりするシナリオです。現在の水準からやや低下し、4.5~5%程度のレンジで推移するケースです。

景気が現状を維持する一方、財政懸念や債券供給圧力が残るのであれば、今の状態を維持する可能性があります。

では、金利が低下する可能性はあるのでしょうか。

その場合、まず原油価格の低下、インフレの沈静化が必要になります。特にPCEが大きく低下することが重要です。

さらに、来週のFOMCで利上げが1回にとどまる、あるいは利上げを見送り、その後も追加利上げが行われない見通しとなり、CTAなどによる債券の買い戻しが発生する可能性があれば、長期金利は低下する可能性があります。

現在の長期金利は多くの複合要因によって動きます。その中でも今回は、FOMCをはじめとする金融政策が非常に大きなポイントです。ぜひ来週のFOMCに注目しながら、今後の金利動向を見定めていただければと思います。

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