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原油100ドル突破、米国株4日続落・米10年債利回り5%目前 中東情勢と「トランプ配当」で今後どうなる?

原油100ドル突破、米国株4日続落・米10年債利回り5%目前 中東情勢と「トランプ配当」で今後どうなる?

中東情勢緊迫化で原油100ドル超え、供給不安が再燃

米金融市場で警戒感が急速に強まっています。中東における軍事衝突の激化を受け、米WTI原油先物(10月物)は1バレル=100ドルの節目を突破し、一時103ドル台まで買われ5月以来の高値を記録しました。北海ブレント原油先物も1バレル=108ドルを超えています。

イランが地下施設での弾道ミサイル生産を再開したとの報道や、中東地域での軍事衝突の拡大を受け、紅海やホルムズ海峡を通じたエネルギー輸送停滞の長期化懸念が高まっています。イランによる弾道ミサイル生産の再開については、既存在庫の部品を利用し、地下施設などで限定的な生産を再開していると報じられています。

さらにトランプ米大統領が、イランとの戦闘終結や原油価格の下落は11月の米中間選挙後になるとの見通しを示したことで、供給リスクが数カ月単位で続くとの見方が強まり、商品投資顧問(CTA)などの機械的な買い持ちも重なって上昇に弾みがついています。

米長期金利が5%目前に急騰、「トランプショック」も重なる

原油価格の急騰は、インフレ再燃への懸念として金融市場に直接波及しています。8月の米生産者物価指数(PPI)は前年同月比5.4%上昇と市場予想(5.3%上昇)を上回り、エネルギー高に伴う物価圧力の根強さが確認されました。

これを受け米10年債利回りは一時4.95〜4.96%と2023年10月以来の高水準へ上昇し、5%の節目に迫ったほか、米30年債利回りも5.36%と2004年以来の高水準を記録しました。短期金融市場では、FRBが9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げに踏み切る確率が約70%に上昇しています。

金利上昇に拍車をかけたのが、トランプ氏による大規模な現金給付構想と米財務省による国債買い戻し(バイバック)です。トランプ氏が共和党による上下両院の支配維持を条件に、米国の成人1人当たり5,000ドルの「トランプ配当」を打ち出したことで、財政赤字拡大への懸念が強まりました。全成人を対象とした場合、その規模は約1.35兆ドルに達するとの試算もあります。

また、米財務省の国債買い戻し額は約51.9億ドルとなり、事前に示されていた上限60億ドルには届きませんでした。インフレだけでなく、米国の財政・国債需給に対する警戒感も長期金利を押し上げる要因となっています。

米株4日続落、グローバル市場にも波及

こうした金利急騰と原油高の二重苦を受け、米国株式市場は全面安の展開を強めています。ダウ工業株30種平均は一時400ドル以上値下がりし、前日比316.56ドル安の5万2064.10ドルと4日続落しました。S&P500種株価指数も4日続落したほか、ハイテク株中心のナスダック総合指数も半導体株や大型株の買い戻しを欠き下落しました。

S&P500は前日比44.66ポイント安の7591.70、ナスダック総合指数は171.62ポイント安の2万6081.72で取引を終えています。

株安の波紋はグローバル市場へも広がっています。利回り上昇とドル高の影響で金スポット・金先物相場が反落したほか、欧州市場でも金融引き締めへの警戒から国債利回りが上昇し、株式市場にも下押し圧力がかかりました。

企業は燃料ヘッジで防衛、CPIとFOMCの行方に注目

深刻なエネルギー高に対し、企業側が金融手法で防衛を図る動きも顕著です。日本の航空大手2社(ANAホールディングスと日本航空)は商品スワップやオプション取引などを活用した燃料ヘッジを実施しています。

2026年4〜6月期では、ANAHDが燃油ヘッジによって160億円分のコスト上昇を吸収しました。また、JALでもヘッジ損益などによって燃油費を243億円押し下げる効果があり、中東情勢の混迷に伴う燃料費増大の影響を一定程度抑えています。ANAは燃油価格上昇による710億円のコスト増に対し、ヘッジや運賃・燃油サーチャージ、コスト削減などで影響を軽減しています。

金融市場は現在、地政学リスクの長期化と世界的なインフレ再燃・金利高という複合リスクに直面しています。今後発表される米消費者物価指数(CPI)の動向やFOMCでの政策決定、そして中東情勢の行方が、市場トレンドを大きく左右することになりそうです。

まとめ

今回の市場変動で最も重要なのは、「原油が100ドルを超えた」という事実だけではないと考えています。特に注目しているのは、原油高によるインフレ再燃、FRBの利上げ観測、そして米国の財政悪化と国債需給への懸念が同時に起きていることです。

米10年債利回りが5%に近づいている背景を、単純に「インフレが高いから」とだけ考えるのは十分ではありません。トランプ氏が打ち出した5,000ドルの現金給付構想は、実現すれば1兆ドルを大きく超える規模になり得ます。すでに米国の財政赤字や国債発行額が意識されているなかで、追加的な財政拡張が議論されれば、国債の需給やタームプレミアムを通じて長期金利に上昇圧力がかかる可能性があります。

ここはかなり重要だと思っています。

つまり、これから確認すべきなのは「FRBが利上げするかどうか」だけではありません。仮にインフレが落ち着いても長期金利が十分に低下しないのであれば、市場は金融政策ではなく、財政や国債需給そのものに対して高い金利を要求し始めている可能性があります。

一方、短期的な市場の方向を決めるのは、やはり原油とインフレです。

今後のCPIでも物価上昇圧力が確認され、原油価格が100ドルを超えた状態で高止まりするのであれば、FRBの追加利上げ観測はさらに強まりやすくなります。その場合、長期金利の5%突破、ドル高、株式市場のバリュエーション調整という流れには注意が必要です。特に金利上昇の影響を受けやすい高PERのグロース株には、引き続き上値の重い展開も想定しておく必要があります。

逆に、中東情勢が沈静化して原油価格が明確に100ドルを下回り、CPIでもエネルギー以外の基調的なインフレが落ち着いていることが確認できれば、状況は変わります。利上げ観測が後退し、長期金利が低下すれば、株式市場にとっては大きな安心材料になります。

金についても同様です。地政学リスクだけを見れば金価格にはプラスですが、現在はFRBの利上げ観測、実質金利の上昇、ドル高という金価格にとっての逆風が同時に発生しています。そのため、「中東情勢悪化=金上昇」と単純には考えにくい局面です。まずは金利とドルの動きを確認する必要があります。

今後、特に確認したいのは、①原油が100ドル台に定着するのか、②CPIでエネルギー価格上昇がサービス価格などへ波及しているのか、③FRBが9月FOMCで実際に追加利上げへ動くのか、そして④10年債利回りが5%を超えた場合でも国債需要が戻ってくるのか、という4点です。

今回の相場は「中東情勢による一時的なリスクオフ」で終わる可能性もあります。しかし、原油高がインフレを再加速させ、そこに財政拡張と国債需給悪化が重なれば、話は変わります。

その場合に市場が直面するのは、単なる地政学ショックではなく、「インフレが高いから金利が下がらない」という局面から、「財政と需給の問題によって金利を下げにくい」という、もう一段難しい局面への移行です。

私は、この違いを今後数週間の米国市場を見るうえで非常に重要なポイントだと考えています。

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