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日銀が政策金利1.25%へ、円安は157円台・日経平均は6万5000円台回復。今後の追加利上げはどうなる?

日銀が政策金利1.25%へ、円安は157円台・日経平均は6万5000円台回復。今後の追加利上げはどうなる?

日銀は2026年9月18日の金融政策決定会合で、政策金利(無担保コール翌日物金利)を0.25%引き上げ、1.25%程度とすることを決定しました。この水準はバブル崩壊直後の1995年以来、実に31年ぶりの高さとなります。

今回の利上げは6月会合以来3カ月ぶりで、2024年3月のマイナス金利解除を含めると、植田和男総裁のもとで通算6回目の金融引き締めとなります。従来「半年に1回程度」とみられてきたペースが明確に加速していることを示しています。

利上げ加速の背景にある物価上振れリスク

日銀が利上げのペースを速めた最大の理由は、基調的な物価が2%の目標を超えて上振れするリスクへの警戒です。声明文では物価を押し上げる要因として、中東情勢の緊迫による原油高、世界的なAI需要拡大に伴う素材・機器類価格の上昇、そして外国為替市場における円安進行の3点を挙げています。

実際、8月の企業物価指数(速報値)は前年同月比7.6%上昇し、3カ月連続で7%を超える高い伸びを記録しました。原材料高や人件費上昇による企業間取引価格の上昇圧力が、消費者段階にも波及し始めています。

加えて、米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)がインフレ警戒からタカ派姿勢を強めて利上げを実施したことや、米国のベッセント財務長官が円安是正に向けた日本の金融政策対応を支持する姿勢を示したことも、日銀の判断を後押ししたとみられます。

「賛成7・反対2」が示すリフレ派委員の抵抗

今回の決定は政策委員9人による採決で「賛成7・反対2」の賛成多数で可決されましたが、2票の反対票が市場の大きな注目を集めました。反対票を投じたのは、高市早苗政権下で就任した浅田統一郎審議委員と佐藤綾野審議委員です。

浅田氏は、生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)の上昇率が2%を下回っており、経済情勢も強いとはいえないことを理由に挙げました。一方の佐藤氏は、経済・物価情勢が大きく加速しているわけではなく、現時点での利上げは適切ではないと主張しています。

両委員は金融緩和や積極財政を志向する「リフレ派(ハト派)」と位置づけられており、市場では金融緩和を志向する政権の意向や、利上げに慎重な政治的姿勢が投票行動に表れたのではないかとの見方が浮上しています。

円安進行と日経平均6万5000円台回復という対照的な反応

決定公表後の金融市場では、対照的な動きがみられました。外国為替市場では、決定前に1ドル=156円10銭台で推移していた円相場が下落し、一時1ドル=157円台と約2週間ぶりの円安水準を記録しました。

反対票が2票あったことで、今後の利上げ加速観測が後退したことや、利上げが事前に織り込まれていたことによる「材料出尽くし」感が背景にあるとみられます。海外ストラテジストからは、日銀の姿勢が期待ほどタカ派的ではなかったことへの失望感も指摘されています。

一方、株式市場では日経平均株価が3日続伸し、前日比882円70銭高の6万5018円95銭で取引を終え、節目の6万5000円台を回復しました。上げ幅は一時1300円を超える場面もありました。

反対票の出現によって、将来の急速な利上げに対する過度な警戒感が和らぎ、株式市場にとっての「適温相場」が続くとの思惑が広がったことが要因です。アドバンテストやソフトバンクグループなど半導体・AI関連株に買いが集まった一方、将来の利ざや拡大期待が後退した銀行株は売りに押されました。

中立金利のレンジ入りで、今後の焦点は慎重な見極めへ

今回の利上げにより、政策金利1.25%は、日銀が推計する「中立金利」のレンジ(1.1~2.5%)に入りました。日銀は声明文で「現在の金融環境は緩和的」であるとし、引き続き利上げを進める方針を強調しています。

ただし、金融緩和の度合いが縮小するなかで、今後は利上げが実体経済や金融環境に与える影響を、より慎重に見極める段階へ移行していくとみられます。

翌日物金利スワップ(OIS)市場の「2年先1年」金利は2.4%付近で推移しています。単純計算では、政策金利を1.25%に引き上げた後も、0.25%の利上げをさらに4回程度実施する水準です。

もっとも、この金利は将来の政策金利を正確に示すものではなく、期間プレミアムなども含む市場指標です。今後は政治環境に加え、物価・賃金・景気データの推移、そして利上げによる実質的な引き締め効果を確認しながら、極めて高度な政策運営が求められることになりそうです。

まとめ

今回の日銀の利上げを考えるうえで重要なのは、政策金利が1.25%になったことだけではありません。日米の金融政策決定後に、為替と超長期金利がまったく異なる反応を示した点です。ここには、両国の政府や中央銀行に対する市場の評価の差が表れていると考えています。

米国では、FRBの利上げ後にドルが買われる一方、30年金利は小幅ながら低下しました。市場は目先の政策金利上昇を織り込む一方、FRBがインフレを放置せず、長期的な物価安定を取り戻す方向で動くと受け止めた可能性があります。つまり、短期的には金融引き締めが強まっても、それが将来のインフレ期待を抑えるとの信認が、超長期金利の上昇を抑えたとみることができます。

これに対して日本では、日銀が利上げしたにもかかわらず円が売られ、超長期金利は上昇しました。市場が今回の利上げを、インフレを抑えるための十分な対応とは評価しなかった可能性があります。2人の審議委員が反対票を投じたことで今後の利上げペースに不透明感が生じたことに加え、政府の財政運営や金融政策への姿勢を含め、日本の政策運営全体に対する市場の慎重な見方も影響していると考えられます。

もちろん、政策決定直後の一日の値動きだけで、中央銀行や政府への信認を断定することはできません。短期金利は事前の織り込みや追加利上げ観測に左右されるため、日米を単純に比較することも適切ではありません。

それでも、為替と超長期金利の組み合わせは無視できません。通貨が売られ、同時に超長期金利が上昇する動きは、市場が将来のインフレや財政、政策運営に対して、より高いリスクプレミアムを求めている可能性を示します。日本では、物価上昇に対して金融政策の対応が後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」への懸念が、まだ払拭されていないということです。

今後確認すべきなのは、日銀が次にいつ利上げするかだけではありません。今回の利上げ後に、円安が止まるのか、10年・30年・40年の国債利回りが安定するのか、そして市場が織り込む期待インフレ率やタームプレミアムが低下するのかが重要です。

円安が落ち着き、超長期金利も安定するのであれば、日銀の政策対応に対する信認が徐々に回復していると判断できます。一方、利上げ後も円安と超長期金利の上昇が続くのであれば、追加利上げの回数だけでは解決できない問題として、金融政策と財政政策の一貫性が改めて問われることになります。

今回特に注目しているのは、日米ともに「利上げをした」という同じ表面的な事実がありながら、その後の市場反応が逆方向になったことです。米国市場は利上げをインフレ抑制への意思として評価した一方、日本市場は、今回の利上げだけでは物価と円安に対する政策対応が十分ではない可能性を意識しました。この違いは、政策金利の水準以上に、今後の金融市場を考えるうえで重要だと思っています。

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