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米10年債利回りが5%超え 原油高と追加利上げ観測で米国株・金価格はどうなる?

米10年債利回りが5%超え 原油高と追加利上げ観測で米国株・金価格はどうなる?

世界の金融市場で、米国の金利急騰を背景とした「金利5%時代」が現実味を帯びています。米10年物国債利回りは約19年ぶりの高水準に達しました。堅調な米経済指標や中東情勢を受けた原油高、さらに世界的なインフレ見通しの引き上げが重なり、主要国の中央銀行による金融引き締め観測が一段と強まっています。こうした流れは株式市場にも波及し、ハイテク株を中心に売りが広がりました。本記事では、現在の市場を揺るがす金利上昇の背景と、各市場への影響を整理します。

米長期金利が約19年ぶりの高水準、「金利5%時代」が現実に

米国の長期金利の指標である10年物国債利回りは一時5.12~5.13%に達し、2007年7月以来およそ19年ぶりの高水準を記録しました。5年物国債利回りも前日比で一時20ベーシスポイント(bp)急上昇して5.03%を付け、約20年ぶりに5%の大台を突破しています。政策金利の動きを反映しやすい2年物国債利回りも4.92%へ上昇しており、イールドカーブ(利回り曲線)全体に金利上昇が広がっています。

金利急騰の背景には、米財務省が実施した5年債入札で最高落札利回りが2006年以来の高水準を付けたことがあります。加えて、市場予想を大きく上回る強い米経済指標が発表されたことも、金利上昇に拍車をかけました。

強い米経済指標と追加利上げ観測の高まり

米国の景気と物価の底堅さは、市場参加者の利下げ期待を後退させています。S&Pグローバルが発表した9月の米製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は57.0となり、市場予想を大幅に上回りました。サービス業を含めた総合PMIも58.4と、予想を大きく超える好調さを示しています。

とりわけ警戒されているのが物価圧力の再燃です。PMIの構成項目で、企業の原材料費などを示す「投入価格」は2022年10月以来の高水準へ跳ね上がり、根強いインフレ圧力が浮き彫りとなりました。

こうした状況を受け、米連邦準備理事会(FRB)高官からはタカ派的な発言が相次いでいます。FRBのバー理事は講演で、インフレ抑制に向けて「追加的な政策調整が必要になる可能性が高い」と述べ、追加利上げに前向きな考えを示しました。短期金融市場では、10月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の追加利上げが決定される確率が、前日の5割強から7割弱へと上昇したと報じられています。

中東情勢の緊張で原油高、金は3日続落

金利上昇にさらなる拍車をかけているのが、中東を巡る地政学リスクと原油高の再燃です。ニューヨーク原油先物相場(WTI期近物)は前日比1.8%高の1バレル92.16ドルへ上昇し、ブレント原油も一時103ドルを超えました。

米国とイランによる情勢打開に向けた交渉は難航しています。イランのペゼシュキアン大統領は国連総会で「制裁や圧力が強まるほど抵抗が強まる」と述べ、米国の姿勢をけん制しました。これに対し、米国のルビオ国務長官も「大きな進展があったとは言えない」との見方を示しており、ホルムズ海峡を経由するエネルギー供給への不透明感が原油の買いを誘いました。

エネルギー価格の再騰はインフレ懸念を増幅させ、「原油高→インフレ再燃→FRBの追加利上げ観測→長期金利上昇」という連鎖につながっています。

一方、金利上昇の影響を受けているのが金先物市場です。ニューヨーク金先物相場(12月物)は1トロイオンス4,318.4ドルと3日続落しました。利回りを生まない資産である金は、米長期金利が2007年以来の高水準に達したことで投資妙味が薄れ、売りが先行する展開となっています。

OECDが世界のインフレ見通しを引き上げ、主要国で利上げ継続へ

インフレの波及は米国だけにとどまりません。経済協力開発機構(OECD)が発表した世界経済見通しでは、G20の2026年と2027年のインフレ率見通しが従来予測から引き上げられました。OECDは、エネルギー価格の新たなショックや予想以上に強い需要圧力を受けて、多くの国・地域でインフレ率が目標値を上回っていると指摘しています。ただし、エネルギー価格の上昇が一時的でインフレ期待が安定している場合と、物価上昇が広範囲に波及する場合とでは、必要な政策対応が異なるともしています。

OECDの予測では、米国で2026年第4四半期にあと1回の追加利上げが実施される見通しです。日本銀行による追加利上げのほか、ユーロ圏、オーストラリア、韓国でも緩やかな利上げが見込まれています。一方、英国の政策金利については当面据え置く見通しであり、主要国が一律に同じペースで引き締めを進めるわけではありません。

またOECDは、世界経済の成長軌道自体は維持されているとしつつも、トランプ米政権下での関税や輸出規制といった通商政策の変更と、中東の戦争に対する持続的な解決策の有無が今後の大きなリスク要因になると評価しています。

米株式市場に金利ショック、ハイテク・高PER株に売り

債券利回りの急騰とインフレ・利上げ観測の再燃は、高値圏で推移していた株式市場を直撃しました。23日の米株式市場では、ダウ工業株30種平均が前日比351.27ドル安の5万1,512.42ドルと続落しました。前日まで最高値を更新していたナスダック総合株価指数も308.241ポイント安の2万6,936.037と、5営業日ぶりに大きく反落しています。S&P500種株価指数も下落し、幅広い銘柄に売りが広がりました。

特に打撃を受けたのが、これまで相場をけん引してきたAI・半導体関連のハイテク銘柄です。「金利5%時代」の長期化懸念から、エヌビディア、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、ブロードコム、マイクロン・テクノロジーなど高PER(株価収益率)銘柄に調整圧力がかかりました。

実体経済への影響も意識されています。マクドナルドは投資家向け説明会で物価高に伴う客足の伸び悩みを指摘し、売りが先行しました。ナイキやホーム・デポなど消費関連銘柄も下落しています。一方で、エネルギー高の恩恵を受けるシェブロンや、個別材料のあるセールスフォース、ボーイング、キャタピラーなどは上昇し、銘柄ごとの選別色が強まっています。

まとめ

私が今回特に注目しているのは、米10年債利回りが5%を超えたという水準そのものより、何が金利を押し上げているのかです。景気の強さによる金利上昇なら、企業の利益成長が株価を支える余地があります。一方、原油高によるインフレや国債需給への懸念が主因なら、企業の資金調達コストと株式の評価額には、より厳しい影響が及びます。

主要金融機関も、米10年債利回りが5%超で定着するという見方で一致しているわけではありません。J.P. Morgan Asset Managementは、中東情勢が緩和し、追加利上げの織り込みが進めば、利回りが4.50~4.75%へ低下する余地を示しています。一方、Charles Schwabは、インフレや財政への懸念を背景に、おおむね4.50~5.00%での推移を見込んでいます。

その分岐点として、新たに重みを増したのがホルムズ海峡です。ロイターは9月22日、イラン高官が「米国が軍事的圧力を緩め、イランの港湾への封鎖を解除すれば、7日以内にホルムズ海峡を再開できる」と述べたと報じました。開放が決まったわけではありませんが、原油の供給障害が長期化するという市場の前提を変え得る提案です。

米国が具体的な対応を示し、船舶の通航と原油輸出が実際に回復すれば、原油高からインフレ再燃、追加利上げ観測、長期金利上昇へと続いてきた連鎖は弱まる可能性があります。反対に、交渉が進まなければ、供給不安による原油高が再燃しかねません。報道を受けて原油と米長期金利はいったん低下しましたが、今後は発言よりも通航量と原油価格、そして原油が下がった後の米10年債利回りを確認したいところです。

株式市場では、金利が落ち着いたとしても、AI投資の規模だけで評価が決まるわけではありません。投資が上昇した資本コストを上回る収益を生むか、決算で設備投資とキャッシュフローの関係を見極める必要があります。金についても、名目金利に加え、実質金利がどう動くかが重要です。ホルムズ海峡の実質的な再開は、現在の金利高シナリオを変える有力な条件の一つとして注目しています。

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