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皆さんこんにちは。ファミリーオフィスドットコムです。本日は4月30日金曜日、週末先読みマーケットをお伝えします。
本日のテーマは、4月27日~28日に開かれた、FOMCの内容についてです。ニュースなどを見ていると、無風で通過したというコメントや、FOMCの内容をあまり材料視していない向きが強いですが、声明文やパウエル議長のコメントを見ると、かなり重要なヒントが隠されています。
今後のテーパリングやインフレについての見通しにも言及していますので、そういったところはしっかりと見ていきながら、FOMCだけでなく、今後のマーケットへの影響についてしっかりと、先行きを見ていくことが必要だと思います。後半では、今回のFOMCの結果、どうマーケットが変わっていくか、お話をしたいと思います。
まずは、FOMCの内容です。ごく一部ではありますが、マーケット関係者から、テーパリングについて言及し始めるのではないかという憶測もありましたが、テーパリングについて議論する段階に無いと、明確に拒否をしています
また、全ての政策は、全て現状維持ということになっています。金利水準、毎月の債券の買い入れ額1200億ドルについても、全く今までと変わらないということです。そういった意味では無風でしたが、最初に申しあげたとおり、ここには今後の重要なヒントが隠されています。
FOMCは、中身を踏まえた声明と、その後のパウエル議長の記者会見で構成されます。この2つから内容を見ていきたいと思います。
今回の声明は、3月17日、前回開かれたFOMCの中で、パウエル議長が明確に答えていたことを、踏襲する流れになっています。前回は「政策枠組みの基本的な変更点は、予想に基づいて予防的に行動することは総じてなく、実際のデータを静観するというものだ」と述べていました。
つまり、これからインフレ率が上がることへの予見に対しては、予備的行動は取らず、結果が伴ったものを後追いでやっていくということです。今回も、過ぎ去った結果に、間違いなく出ていれば対応するものの、予見段階では行動を取らないと、改めて伝えたものでした。
例えば、声明文ですが、経済と雇用についてはこのように言っています。前回、3月のFOMCでは「緩やかなペースでの回復後、最近ペースが加速」していると言っていたものが、今回は「ワクチンの進展や強い政策支援により強まった」と、述べています。
つまり、バイデン政権の1.9兆ドルの経済対策や、ワクチンの普及で、経済指標が回復した事実を受けた声明に変わっているのです。強い支援策によって、経済、雇用が良くなったことを認めていることになります。
一方で、インフレに関しては、前回「以前2%以下で推移」しているというものが、今回「インフレ上昇の多くは一時的な要因」だと言っています
つまり、インフレ率が今回、各指標で軒並み高く出ていることは認めているものの、前年比などのベースが低くなったことによるかさ上げ効果(ベース効果)を十分に認識していて、今後もインフレ傾向が続かない限りは、その事実が無いものとして受け止めるということです。インフレは一時的なものとしか認識しておらず、継続性は予見的なもので、受け入れないということになります。
3つ目は、パンデミックリスクについてです。前回は「パンデミックリスクが著しく経済活動、雇用、インフレの重し」になっていたと言っていましたが、今回は「パンデミックが引き続き経済や見通しのリスク」になっていると述べ、雇用、インフレのリスクという文言を、外しています
つまり、パンデミックは経済に対するインパクトを持つものの、雇用、インフレの重しにはならなくなってきているということです。ワクチンの普及が、雇用を助け、インフレ率を上昇させている事実を受けた声明に、なっています。
このように、FOMCの声明文からは、3月17日のコメント通り、事実に対しては認めるものの、予見に対しては動かないということが、改めて分かりました。では、このことを、私たちの投資判断や、マーケットの見通しに活かしていけばいいのでしょうか。
今後、経済指標や実績が伴ってくれば、声明内容に、影響を及ぼすということが分かりました。今後経済にどういう影響があったときに、どのように声明文が変わっていくかを考えてみます。
まずは、経済です。今後「米国雇用法案」「米国家族計画法案」の、歳出規模の縮小などがあれば、雇用と経済の回復が遅れることになりかねません。
今回は、声明文において、経済が順調に回復していることを、匂わせています。例えば、ワクチンの進展や、強い経済支援によって、より経済が強まったと言っています。
しかし、もし、経済対策の歳出額縮小が伴えば、声明文が「巡航速度での景気回復が続くけれども」のように変更され、トーンダウンすることにつながりかねません。
前回の記事でもお伝えしましたが、「米国雇用法案」「米国家族計画法案」が7月4日、もしくは7月末までという期限を設け、成立させる努力をしています。しかし、もし、これが成立しない場合、当然ながら6月~7月に予定されているFOMCにおいて、成立していない法案に対して、予見をもって政策を変えることは、あり得ないということになります。
法案が、FOMCの開催前までに通ったうえで、経済の回復が、強い政策によって実現したというトーンになれば、テーパリングの議論についてスタートする可能性があります。しかし、法案が通らないことには、FOMCの声明文に変わることが無いと言えます。
さらに、7月末まで、もし、この法案が通らない場合は、8月はアメリカの上院・下院共に議会が休会し、議題が進みません。8月末に予定されているパウエル議長の、ジャクソンホールのミーティングで、出口戦略について言及するのではないかという思惑も、外れてきます。そうなれば、9月以降のFOMCに、先送りされることになりますので、テーパリングの議論も先送りされることになります。
また、テーパリングの議論を起こす場合には、事前に前もってアナウンスすると言っています。もし、7月まで法案が通らず、事実が伴っていないとして、FOMCで言及できず、8月に議会が休会し、議論が進まず、さらにFOMCで言及できず、ジャクソンホールでもコメントも無ければ、9月以降のFOMCでコメントする可能性が出てきます。ただ、それは法案が満額近い状態で通った場合です。減額されれば、どうなるか分かりません。
そうなってくると、テーパリングを行うかなり事前に相談するとなっていますので、2021年末にテーパリングをスタートするという話は頓挫し、2022年以降になると、どんどん後ろにずれていく可能性があると、今回の声明文から見て取ることができました。
テーパリングが先送りになることによって、安心感が生まれる一方で、過剰流動性が増えることで、お金がだぶつき、マーケットで一部、バブルが発生するところも出てきます。マーケットは、いい部分と悪い部分の両方を懸念しながら動くことになるので、少しそわそわした、足場の固まらない状況が続く可能性があると、思っています。
次に、パンデミックリスクについてです。パンデミックリスクに関しては、ワクチン普及により、雇用とインフレの重しではなくなったと、今回、メンバーが認識しているということです。
ですから、雇用とインフレの数値さえ満たせば、コロナウイルスはあまり経済への足かせになっていないと考えるということです。雇用とインフレの数字が上がってくれば、コメントが変わってくるということが分かりました。
そのうえで、今回、声明文の後に開かれた、パウエル議長の言葉にも、ヒントがありました。声明文から推察するに、物価と雇用がFOMCメンバーの予想を超えてきた場合、テーパリングを示唆する時期を前倒しする可能性がると、改めて確認できました。
パウエル議長のコメントから、FOMCメンバーの見通しを推察します。「消費は強まり、価格を引き上げた。しかし、おそらく一時的である可能性が強い」というコメントがありました。
消費が価格を引き上げたということですので、ディマンド・プル・インフレ(需要増大による物価上昇)は一時的であると考えている。つまり、前回、1年前のパンデミックリスクにより、外出を控え、消費を控えたことに対する反動が、一時的な需要の高まりを生み出しているのであり、あくまで、それが継続するとは限らない。だから、一時的であると、改めてメンバーは認識していることになります。
もし、この認識がずれた場合には、物価上昇を認めざるを得ないということになります。ということは、ディマンド・プル・インフレ、需要に喚起された物価上昇ではなく、仕入れ価格の上昇(コスト・プッシュ・インフレ)や、世の中のインフレ価格の上昇によっておこるインフレは、起こらない前提で考えているということになります。
ということで、ディマンド・プル・インフレは、基本的に起こりにくいと思いますが、一方で、価格上昇の芽は出てきています。例えば、米中貿易戦争による輸入価格のインフレ、原油価格によるインフレ、世界的需要回復によるインフレ、コモディティ価格の高騰などにより、コストが上がってくる可能性は十分にあります。
そういった兆候が出てくれば、FOMCのメンバーの予想を上回るインフレ率になり、その後、声明文の見直しとなり、インフレが上がってきたので、対応を打つことになる可能性は、十分にあると思われます。
ただし、FOMCメンバーは、そもそもインフレは、年末時点でどうなっているかを注視していると言っていますので、今の時点で、数か月上がったからと言っても、動く可能性は非常に低いでしょう。
明らかに、年末までに物価が上がっていくモメンタムが見えた場合には、テーパリングについての議論の前倒しということがあるものの、モメンタムが確認できないようであれば、年末まで議論が進むことは、ほぼ無いと考えられます。
最後に、パウエル議長のコメントからのヒントとして、雇用に関する話です。雇用に関するFOMCメンバーの見通しは「3月雇用の伸びが継続するとは予想しない」ということです。
前回、97万人近く雇用が増えましたが、今後、4月~5月と雇用が増えることを想定していないということは、4月~5月の雇用統計が100万人を超えてくれば、事実に対して、見通しを変更することになります。
今回も、例えば、4月~5月の雇用統計で、数字が上がってくるようなことがあれば、今後、その見通しが変わってくることがあるので、雇用を見ていく必要があります。
今までの声明文と、コメントから見て、今回、FOMCメンバーが想定外と考えることは3つです。
1つ目は、今までの話を踏まえると、バイデン政権による財政政策が、7月末まで成立すること。しかも、満額に近いような形の、大型財政出動であること。
そして、2つ目は、コスト面からの物価上昇が続くような、インフレーションが続くこと。つまり、需要喚起ではなく、供給の限定によって、価格が上がってくるような、コスト・プッシュ型のインフレになってくることです。FOMCメンバーの予想を上回る、高い物価が出てくると、対応を早めなければならないと考えることになるでしょう。
そして、3つ目が、4月~5月の雇用が100万人を大きく超えてくること。
この3つが、FOMCメンバーの、今回のコメントから見られる、想定外のことになります。これらがそろった場合には、6月~7月のFOMC、もしくは8月末のジャクソンホールでの会合で、テーパリング開始について、コメントが出てくる可能性があります。
ただし、今の流れから見ると、その可能性はとても低いと思われており、未だに、ゴルディロックス相場が続く可能性があるというのが、今のマーケットの認識です。緩やかな低金利と、緩やかな経済成長によって、経済が適温相場で上がっていくということを前提に、マーケットは動きます。
ただ、過剰流動性相場という、お金が大量にばらまかれている状況はいまだに続いています。過剰流動性相場により、株価や低格付け債券(劣後債)の価格が以上に上がりすぎて、国債とのリスクプレミアムが縮小しすぎることで、需給調整、株価暴落も、十分に起こりえます。
また、過剰流動性相場により、普通はお金が入らないところに、過剰にお金が入り、弾けてしまうような、局地的なバブルが起こる可能性もあります。
適温相場であるからこそ、起こる悪い面もありますので、そういったことをにらむ必要があります。今回のFOMCの内容は、夏場以降まで神経質な展開が続くような、FOMCだったと思われますので、無風だったということでは決してありません。
声明文や、コメントの中から見られる、今後の変更点や、そこから生まれるシナリオ、適温相場が続くだろうけれども、その反面として、局地的なバブルや、リスクプレミアムを元にした調整は、これからますます、可能性が高まってくると認識して、マーケットに臨んでいきたいと思います。
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