本日分析する投資信託は、スマート・ファイブ1年決算型です。5つの資産にバランスさせる、バランスファンドを取り上げたいと思います。
5つの資産とは、日本債券、海外債券、グローバル株式、グローバルREIT、ゴールドを指です。注目する資産が含まれると思う方も多いのではないでしょうか。このファンドで低リスクで高リターンを実現することが期待できるのではないか、本当に実力があるかどうかなどを分析したいと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
お願い
最初にお願いです。この記事は情報提供を目的としており、投資の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。また、投資信託はランダムに抽出されており、運用会社、販売会社との間に業務提携等は一切ありません。あくまでも中立な立場から分析をお伝えします。
投資信託概要
概要
スマート・ファイブは、日興アセットが運用するバランスファンドです。NISA成長枠での投資が可能であり、信託報酬は1.47%、純資産総額は538億円です。バランスファンドとしては、そこまで大きな規模ではありません。
スマート・ファイブは日本国債、海外の債券、グローバル株式、グローバルREIT、ゴールドという5資産にバランスをとりながら投資を行っています。グローバル株式、グローバルREIT、ゴールドは、特にインフレに強いとされていますので注目です。
最近インフレが落ち着いてきてはいますが、世界的な趨勢としてインフレが高止まりしそうなことを考えると、インフレに強い資産を保有し、運用することが今後は特に重要になります。自分自身でインフレを考慮して運用するのが難しいと感じている方にとっては、ご興味を持っていただけるバランスファンドではないかと思い、本日はこちらを分析対象として取り上げました。
このファンドの特徴は、リスクパリティ戦略をとっていることです。これは各資産の値動きの影響度を考慮して配分を調整する戦略です。例えば、グローバル株式のリスク(変動率)が大きく上昇した場合、ファンド全体の年間変動率が大きく上昇する可能性があります。その時は、変動率が大きくなったグローバル株式の割合を減らし、変動率を低くコントロールしようというのがリスクパリティ戦略です。そのため、低リスクでの運用が期待できます。
さらに当ファンドは、資産配分の比率は定期的に見直され、相場の状況に応じて柔軟に変更しています。ファンドマネージャーが市場を分析し、適切な配分比率を決定しますから、プロによるバランスの取れた運用を期待できます。
投資先としては、各資産に応じたファンドを選び、特に株式においては高配当が中心となっています。グローバル株式では、成長性よりも配当重視の安定したバリュー投資が中心となり、リスクの低減が期待できます。
チェックポイント
チェックポイントです。
- ファンド・オブ・ファンズで低リスク・高リターンは実現できるか?
- リスクパリティ戦略のパフォーマンスは?
- インデックスファンドや他のアクティブファンドとの比較
の3点となります。
簡易パフォーマンスです。10年で3.2%、1年で9.59%とカテゴリーを上回っています。安定したパフォーマンスを出している印象です。
標準偏差はカテゴリーを上回ることも下回ることもありますが、1年~10年で見ると5%前後です。5%の変動に対して3%~9%のパフォーマンスが得られていることが、バランスファンドとして評価に値するかどうかを、以降では分析します。
投資戦略
投資戦略です。まずは、5つの資産の相関関係を考慮して配分(アロケーション)を判断します。何かの資産が上がれば何かの資産が下がるという、逆相関を利用した運用スタイルです。これにより、全ての資産が同時に下がる、下がるがないように配慮がされています。
例えば、日本債券や海外債券は、景気が良くなると金利上昇に伴って価格が下がります。一方、景気が良くなると、株式、REIT、金は価格が基本的には上昇します。これらは逆相関の関係になりますから、組み合わせることで資産成長を安定的に狙えます。逆に景気が悪くなると債券が買われ、株やREITが売られることでバランスをとっています。
ファンドマネージャーがこれらの配分を管理しているため、投資家にとっては安心感があります。
さらに、リスクの高まりに応じて資産の割合を変えています。市場が落ち着いているときは景気が良い傾向にあるため、金、REIT、グローバル株式の割合を6割近くにしています。
一方で、景気が悪化したり、市場の変動が高まったりすると、リスクが最も小さいとされる日本国債を75%以上まで高め、他のリスクが高い資産は圧縮し、価格変動を抑制しています。
銘柄戦略
過去の動きから、この戦略が機能していたかを確認します。下のグラフは、各資産の比率が市場の状況に応じてどう変化したかを示しています。
赤が金、黄色がグローバルリート、ピンクは株式、緑は世界の債券、青は日本国債です。2013年から比べると金の割合が一定数増えてきています。一方、日本国債の割合は徐々に減少し、グローバル株式が徐々に増えてきています。今の状況は、リスクがある程度取れるとファンドが判断していることになります。
とはいえ、日本国債は40~50%を維持しており、全体的にリスクを抑えた運用が意識されています。また、2000年以降の好調な株式市場においても、株式の比率は極端に増やさない方針をとっているため、安全運転を心掛けていると言えます。
配分を変更するとはいえ、総じて金、債券といった守りの資産が多く組み入れられている、保守的なファンドのようです。リスクを抑えた安定運用が行われているバランス型ファンドになります。
また、ポイントとなるのは、アメリカドルが40%、日本円が37 %後半になっていることです。アメリカドルと日本円の割合が半分半分となっており、円高・円安の影響も半々となります。その意味でも、保守的な運用戦略を行っていると言えます。
ファンド・パフォーマンス
パフォーマンス
パフォーマンスです。年率リターンが3%、年率リスクが5%ですから、年間5%の変動に対して、年平均3%程度のリターンが見込まれます。パフォーマンスは市場環境にあまり左右されていないことが、過去の実績からはわかります。低リスクの安定型ファンドだと言えるでしょう。
ただ、リスクとリターンの数値を見ると、効率性をやや欠く印象です。年間5%のリスクをとるのであれば、4~5%程度のリターンが望ましいです。リスクに対するリターンが少し不足している印象です。
理由としては、投資先がアクティブファンドであり、運用コストが比較的高いことが挙げられます。また、頻繁な資産配分の変更も行っているため、運用コストが高くなっています。リスクよりリターンが低く感じられるのは、これらのコストが影響している可能性があります。
ファンドのもう1つの特徴は日本国債です。ポートフォリオの半分を占める日本国債への投資先は、基本的に超長期国債です。日本国債は、日本において最も変動が少ない資産の1つとして知られています。リスクを抑える目的で購入していることは理解できますし、ある程度のリターンを求めいることも理解できます。10年以上の長期国債における日本の金利状況に応じて、それなりの動きが今後出てくると思っています。
守りの資産も、それなりに金利の影響を受ける動きが今後出てくるでしょう。そのため最も安全とされる日本国債を投資対象としていますが、このことがリスクに対してリターンがやや物足りない、という印象に繋がっています。
株式市場が不安定な時期、為替の変動の影響による下落をクッションとして守ることができる資産を多く組み入れていることはファンドの強みです。ただし、超長期の日本国債が今後どのような影響を与えるかは、注意深く観察する必要があります。
右のチャートをご覧ください。適切な比較がなかったため、今回はTOPIX、世界株との比較を行いました。赤の基準価格を見てもわかる通り、横ばいに近い状態で緩やかに上昇しています。非常に安定的な推移と言えるでしょう。
ただ、下のチャート、緑で示したクイックの投信分類と比較すると、赤の該当ファンドはアンダーパフォームしており、リターンがあまり強くないことがわかります。リターンよりも守りに徹した運用を行うバランス型ファンドだと言えます。
良くないファンドかといえば、そうではありません。株式の値動きを避けつつ、リスクを抑えた安定運用を求める方にとっては、意外と向いているファンドとの印象を持ちました。
資金流出入
資金の流出入を見ると、2021年以降、流出が増えています。リスクに比べ、リターンが期待値に合っていないためだと考えられます。
評価
評価は2.5です。低リスクではあるものの、高リターンは狙いにくそうです。ただ、低リスクであることは事実です。期待リターンが3%程度でいい方にとっては、安定した実績を残す可能性があります。今後、日本の超長期国債の価格がどうなるかを考慮する必要はありますが、期待リターンが低い方には検討の対象になるかもしれません。余地があるでしょう。
本日はリスクパリティ戦略を採用し、低リスク、高リターンを目指すファンドを分析しました。思ったよりもリターンが高くない印象を受けました。低リスクではありますが、リターンはやや低めです。より高いリターンを目指す方は、他のバランスファンドと比較する必要がありそうです。