本日分析する投資信託は、フランクリン・テンプルトン米国連続増配株です。名前の通り米国の連続増配株へ投資を行っています。S&P500を上回るパフォーマンスを残せるかを分析したいと思いますので、最後までご覧ください。
お願い
この記事は情報提供を目的として作成しており、投資の勧誘や売買の推進を目的とはしていません。投資信託はランダムに抽出しており、運用会社、販売会社との間に業務提携等はございません。中立的な立場から情報をお伝えします。
投資信託概要
概要
フランクリン・テンプルトン米国連続増配株は年2回決算です。運用会社はフランクリン・テンプルトン。米国株ファンドで、NISA成長投資枠で投資可能です。信託報酬は1.69%、総額は30億円と、かなり小ぶりなファンドです。
このファンドを取り上げた理由は、連続増配企業にフォーカスして投資を行っているためです。株式投資の世界では、連続増配できることは好業績の証となります。かなりいい企業をセレクションしているのではないかと推測されます。ファンドのポートフォリオの多くは、10年以上連続増配している優良企業で構成されています。
長期にわたって連続増配する企業は、かなり安定した業績の企業です。そういった企業に集中投資するファンドは、いいパフォーマンスが期待できるため、取り上げました。
チェックポイント
チェックポイントは、
- 連続増配企業に投資をするとS&P500を上回るリターンは期待できるのか?
- 長期投資に適しているのか?
- インデックスファンドや他のアクティブファンドとの比較
の3点です。
簡易パフォーマンスです。トータルリターンは同カテゴリーと比較して5年、3年では上回っていますが、過去1年間では大きくアンダーパフォームしています。ファンドにむらがある印象です。この原因はどこにあるかを、後ほど分析します。
標準偏差を見ると、5年、3年、1年の全てでカテゴリー平均を下回っています。リスクがコントロールされている印象がありますから、保守的な運用をしている可能性が見えてきました。
投資戦略
投資戦略です。連続増配企業とは、長年にわたって安定した収益基盤を持ち、毎年着実に配当を増やしてきた企業を指します。その中で、10年以上増配を継続している企業へ投資しています。
このファンドが米国の連続増配企業に注目しているのは、グローバルにおいて高い市場シェアを有しているためです。米国の連続増配企業は、大規模な小売業界で世界シェアの50%を占めています。清涼飲料分野では、連続増配の企業が世界シェアの23%を有しています。アメリカの連続増配企業はグローバルにおいても高いシェアを持つ傾向があり、アメリカのみならず世界の経済成長を取り込むチャンスがあるとして投資を行っています。
次に収益成長です。連続増配企業の1株当たり利益(EPS)の推移を見ると、2023年は少し落ち込みましたが、2024年、2025年は堅調に上昇すると予想されています。
また、長期的に見た場合、連続増配企業は良好なパフォーマンスを示しています。連続増配企業を青、米国株全体を赤で表したチャートを見ると、2000年から長期投資すると大きくパフォーマンスの差が出ています。増配企業は配当が多いだけでなく、業績が良好なため、株価が上昇する傾向があるため、このような投資戦略を採用しています。
銘柄戦略
ポートフォリオの特徴として、公共サービスなどの公益関連、生活必需品、REITなどへの配分が多いです。平均予想利回りは4.4%と非常に高くなっています。
配当利回りが高く、長期にわたって増配している米株に投資しています。これらの企業の多くは安定した業績を出しています。4.4%の配当を出しているということは、非常に業績が安定していると考えられます。
組み入れ上位10銘柄を見ると、多くの方がご存知の会社が並んでいます。例えばコカ・コーラやジョンソンアンドジョンソンなどのディフェンシブな銘柄は、配当が高いだけでなく、安定した企業です。
ここまでの内容では、他の高配当ファンドと変わらないように思われるかもしれません。ですが、このファンドの最大の特徴はREITを組み入れている点にあります。ポートフォリオにREITが15%近く入っており、他の高配当ファンドとは異なる動きとなっています。このファンドの生命線は優良銘柄だけでなく、REITがどのようなパフォーマンスを残すかにあることがわかりました。
ファンド・パフォーマンス
パフォーマンス
残念ながら、パフォーマンスはあまり良くありません。ここ最近の低迷の背景には、15%を占めるREITの不振があります。
また、連続増配銘柄のパフォーマンス自体も、市場全体に比べてやや遅れを取っています。結果として、過去5年間でS&P 500に比べて70%、3年間で25%もアンダーパフォームしています。
連続増配企業を集めた指標である、S&P500配当貴族指数との比較ではどうでしょうか。こちらと同程度であれば、マーケットのインパクトによると言えます。結論としては、過去5年間で50%、過去3年間で20%も下回っていますから、パフォーマンスがいいとは言えない状況です。
S&P 500の配当貴族指数は、25年以上連続配当を行う銘柄を集めた指標です。このファンドとは若干異なるものの同じような投資スタンスとなっています。配当貴族指数にも大きくアンダーパフォームしていることから、あまり褒められたものではありません。
これらの指標に大きく劣ったのは、REITを15%組み入れた影響だと考えられます。REITは、ここ2年間で大きく米金利が上昇した影響と、コロナで空室率が上昇したことなどから価格が大きく下落し、ファンドに大きなマイナスのインパクトを与えました。
リターン以外の面を見ると、年間変動率を示すリスクは平均よりもやや小さい程度で、13~14%となっています。市場平均が15~16%であることを考えると、リスクはややコントロールできていると言えますが、リターンが良くないため、影響はあまり大きくないでしょう。
効率性を示すシャープレシオは、リスクは低いもののリターンも低いため1前後となっており、効率的だとは言えません。連続増配企業への投資というテーマは魅力的ですが、REITの組み入れの影響で近年のパフォーマンスは悪化しています。
ただ、今回のファンドパフォーマンスの不信は、業種の外的要因(マーケット要因)が大きいです。グロースが強いとき、安定企業には資金が流入しにくくなっています。ただ、銘柄選定が間違っているわけではなく、銘柄選定自体はしっかりと行われています。今後ディフェンシブ銘柄に焦点が当たる可能性があり、また、ここ数年大きく売り込まれたREITが金利低下を受けて改善する可能性が十分にあります。通常の高配当株に比べ、REITが入っている分、魅力的なところもあると言えるでしょう。
資金流出入
最近のパフォーマンスから、資金流出が多くなっています。今後バリュー株やREITへの見直しが進むと、資金流出が流入に代わる可能性は十分にあるでしょう。
評価
評価は3つ星です。ここ最近のパフォーマンスはやや不調ですが、サイクル的にバリュー株やREITのターンが今後来る可能性は十分に期待できます。今のリターンは2.5程度ですが、今後のサイクルを考えると、3~3.5つ星と考えました。
本日は、高配当に焦点を当てて投資するファンドを分析しました。REITを15%組み入れていることが、ここ最近のパフォーマンスにマイナスの影響を及ぼしていますが、今後の市場でREITが上昇する可能性があります。高配当に投資したい方にとっては検討の余地がある投資信託だと感じました。