本日は、日本株投資の三井住友DS日本バリュー株ファンド(愛称:黒潮)を分析します。徹底的な割安株の発掘を行うファンドで、長期的に高いリターンを現時点では実現しています。今後も高いリターンが続くのかどうか、運用スタンスや具体的な内容を分析し、その結果を皆さんにお伝えします。
お願い
初めにお願いです。この記事は情報提供を目的として作成しており、投資の勧誘や売買の推奨を目的としたものではございません。また、投資信託はランダムに抽出しています。運用会社、販売会社と当社との間に業務提携は一切ございません。あくまでも中立の立場から情報をお伝えします。
投資信託概要
概要
三井住友DS日本バリュー株ファンド(愛称:黒潮)は、三井住友DSアセットマネジメントが運用しています。投資対象は日本株で、NISAの成長枠の投資対象です。信託報酬は1.67%、純資産総額は399億円と、比較的小規模なファンドです。
今回取り上げた理由は、割安株に投資を行う日本株ファンドであるためです。割安株ファンドは、銘柄発掘がうまければ安定したパフォーマンスが実現できます。実際どのようなパフォーマンスを残しているのでしょうか。
当ファンドの割安判断基準は、ROE、PER、PBRから定量的に判断しています。ポートフォリオの直近の数字は、ROEが9%、PERが15倍、PBRは1.3倍と、いずれも市場平均よりも低い数字です。
ポートフォリオの中身は、3月末時点でROEが市場平均9.4に対して8.9。PERは17.4に対して15.1。PBRは1.6に対して1.3と、全てが割安となっています。特にPBRに注目しており、1倍割れの銘柄に積極的な投資を行っています。
PBR1以下のものを買ったとき、パフォーマンスがいいかどうかは議論の分かれるところです。バリュートラップとはならないPBR1倍割れを選んでいれば、今後も期待できるファンドだと言えます。もしパフォーマンスが伴わなければ、バリュートラップに引っかかっている可能性があります。
チェックポイントです。PBRに注目した投資が、本当に中長期にわたる高い投資成果につながっているのか。ROEに着目して投資を行っているとのことですが、長期的な安定成長につながっているのでしょうか。
簡易パフォーマンスです。同カテゴリーに対して、結果は概ね上回っています。標準偏差も大幅に下回っていますから、割安銘柄を選んでいる以上、リスクは抑えつつプラスアルファを狙えていることがわかります。
投資戦略
非常に王道の運用です。割安と判定される銘柄を割安グループとして、その中から銘柄を抽出しています。ファンドマネージャー、社内アナリストなど、個別企業の調査・分析に基づき、割安グループの中から銘柄をピックアップしています。
また、マクロ状況、金利、世界の景況感を考慮しながら、業種別・規模別配分を決定後、ポートフォリオを構築しています。非常にアクティブファンドらしいオーソドックスな運用スタイルです。
銘柄戦略
銘柄数は100を超えています。106という銘柄数ですから、銘柄はかなり分散されていることがわかります。ただ、銘柄の入れ替え頻度は低いです。売買回転率が0.5ですから、機動的に銘柄を入れ替えるというよりも、比率調整が中心となっています。全体を大きく変えるのではなく、マクロ環境、行政状況によって比率の調整を中心に行っていることがわかりました。
比率調整については、銘柄別、業種別でも細かく行っています。直近では割安感から本田技研工業や東京建物のウェイトを引き上げる一方で、割安感が薄れてきた第一生命ホールディングスや伊藤忠のウェイトは引き下げています。
全売りするわけではなく、ウェイトを引き上げたり下げたりしながら、微調整を行っていることがわかりました。
業種ではTOPIXに比べて機械、電気、小売、サービス業をかなり少なくして、輸送用機器、金属、銀行については多めに配分しています。アクティブファンドらしいセクター選択と言えます。
ファンド・パフォーマンス
パフォーマンス
大胆な銘柄の入れ替えは行わず、細かな比率調整やリバランスが運用の中心となっています。その結果、このファンドのパフォーマンスは非常に良くなっています。
資金の高い効率性も特徴です。効率性を示すシャープレシオは中期的な水準で1.7、長期的な数字でも、設定来、多くの場面で1を超えていますから、非常に効率の良い運用と言えます。
これは値動きをかなり抑えた運用ができているためです。リターンが良く、リスクもかなりコントロールできているため、資金の効率性が高くなっています。マーケットの下落局面でもリスクを抑えているため、その後の立ち上がりが高いです。その結果、ファンドのパフォーマンスは良くなっています。
具体的なリスク値は11~13%程度と、市場平均や他のファンドと比べても低いです。これが可能な理由としては、割安株を定量的に分析して投資を行っていること、銘柄数100超と分散をかなり効かせていること、バイアンドホールドと言われる長期投資を行っていることが挙げられます。値動きを抑えた運用によって長期的なリターンの積み上げができているファンドです。
具体的なファンドのパフォーマンスを見ると、日本株ファンドとしては非常に驚異的な数字です。過去3年、5年の基準価格を見ると、青で示した世界株を上回るペースで伸びており、黄色で示したTOPIXもオーバーパフォームしています。過去5年で+50%、過去3年で+30%もTOPIXを上回っており、世界株の中でも好調だったS&P500と並ぶリターンです。日本株でありながら、S&P500と同程度のリターンを上げる優秀なファンドです。
リスクをコントロールした運用であるため、設定来での差はさらに大きくなっています。1999年からスタートしたファンドですが、設定来では105%近くベンチマークを上回っています。値動きを抑えた運用で長期的なリターンの積み上げ、効率的な運用が実現できています。
参考指標とは、ベンチマークのTOPIXに配当を加えたものです。これを105.8%も上回っていますから、非常に良いパフォーマンスだと言えます。
このファンドは日本株だけでなく、世界株と比較しても好調なパフォーマンスが発揮できており、とても優秀な運用を長期的に続けていることが確認できました。アクティブファンドの中でも非常に安定したファンドだと言えるでしょう。
資金流出入
資金の流入が増えています。パフォーマンスの良さを見て、投資家が資金の流入を強めているのでしょう。
評価
評価は4.5です。バイアンドホールド戦略を採用してウェイトをコントロールする、コストのなるべくかからない無駄のない運用を行っています。
TOPIXと比較して設定来+100%以上ですから、極めて高い銘柄選定力だと言えます。リスクを抑えたことに銘柄選定力が加わり、着実にパフォーマンスを積み上げているため、評価は4.5としました。
まとめ
本日は、日本のバリュー株に投資をする日本株ファンドを分析しました。派手に入れ替えることなく、購入したものをしっかりウェイトコントロールしながらパフォーマンスを積み上げています。
無駄な手数料を発生させないことでリスクを低く抑え、シャープレシオを高めに維持した結果、長期的で見るとインデックスを上回るリターンが積み上げられています。着実でありながら、アクティブファンドらしい動きをしているファンドです。
ファンドには、入れ替えを大きくしながらパフォーマンスを残すものと、今回のファンドのように入れ替えを少なくしながらもパフォーマンスを上げているものがあります。いろいろなものと比較しながら、ご自身に合ったファンドを選んでいただければと思います。