金価格の見通しと、富裕層が本当に考えるべき資産設計とは
2026年現在、金価格の上昇が話題となり、「今が買い時か?」という相談が増えています。しかし富裕層にとって、金や銀の判断はタイミングではなく、資産全体の設計に基づくものです。
本記事では、金・銀の価格変動要因を整理した上で、富裕層が本当に考えるべき「なぜ持つのか」「どう持つのか」という視点から、資産設計上の最適な判断について解説します。
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Q:金と銀を増やすべきでしょうか?
最近、金と銀の価格が上昇しています。今後の世界情勢を考えると、資産の一部として保有比率を増やした方がいいでしょうか?
(40代・男性・上場企業オーナー/純資産約25億円)
ここ1〜2年、投資のリターンはある程度安定していますが、地政学リスクや米国経済の先行きが読みにくく、資産運用において「守り」の意識が強くなってきました。日本の不動産は過熱気味、株式市場も高値圏でのボラティリティが大きく、手元資金をどう配置すべきか悩んでいます。
現預金で持ち続けることによるインフレリスクも意識される中、実物資産への関心が高まり、「金や銀を今から増やすべきでは?」という問いが浮かびました。ただ、タイミングで判断して良いものなのか、あるいは戦略として捉えるべきなのか、自信が持てない状態です。その中で、「増やすべきかどうか」を本質的に考える必要性を感じています。A:ウェルスマネージャーからの回答
金価格の見通しだけで判断していいのか
ここ1〜2年、投資のリターンは安定していますが、地政学リスクや米国経済の見通しが不透明になる中、守りの資産への関心が高まっています。
日本の不動産は過熱気味で、株式も高値圏のボラティリティが大きく、現預金もインフレによる目減りリスクがある。
その中で「金や銀を増やすべきか?」という問いが自然と浮かんでくるのは当然です。
金・銀を取り巻く「上昇要因」
①2025年後半からの利下げトレンド
- 米FRBは2025年に3回利下げを実施し、2026年中にさらに1〜2回の利下げが織り込まれています。
- 政策金利の低下は、金利を生まない金にとって追い風となります。
②中央銀行の独立性への懸念
- トランプ大統領の再選と利下げ圧力により、FRBの独立性に市場の疑念。
- 金融システムや通貨に対する信頼が揺らぐと、実物資産への資金流入が進みやすくなります。
③地政学リスクの台頭
- 2026年1月、米国がベネズエラに軍事介入し、大統領を拘束。緊張感が一気に高まりました。
- 「有事の金」と呼ばれるように、リスクイベントは金価格に対してポジティブに作用します。
これらの要因を見ると、金・銀には引き続き上昇の余地があるように映ります。
特に利下げトレンドや地政学リスクの高まりといった構造的な背景は、金の価値を再評価する流れを強めています。
このように上昇要因が多い状況下では、金・銀は2026年も有望な資産として注目を集めそうです。
一方で意識すべき「下落要因」も存在
①中東リスクの一時的な緩和
- イスラエルとハマスが停戦合意。市場はリスクオフに傾きつつあります。
②米国の関税政策の安定化
- 企業活動への懸念が後退し、株式市場への資金流入も増加。金から資金が一時的に離れる可能性も。
このように、地政学リスクや政策不安が「一服」する局面では、金価格が短期的に調整する可能性も十分にあります。
有望な資産である一方で、常に一方向に進むわけではない点には注意が必要です。
金価格を左右する「構造要因」
① 需要と供給のバランス
世界の金供給量は約3,400トン(2024年時点)で、中国が最大の生産国です。
一方、需要面では中国・インドなどの中央銀行が、外貨準備の多様化やドル離れを背景に戦略的な金購入を進めており、下値を強く支える構造が続いています。
② 米ドルの動向
金はドル建てで取引されるため、ドル安局面では金価格が上昇しやすくなります。
現在は米国の利下げ観測を受けてドル安の流れが強まりつつあり、引き続き金にとってプラス材料となり得ます。
③ 金利の水準
金は利息を生まないため、金利が高いと相対的な魅力が低下しますが、現在は利下げ局面に入っており、金にとっては追い風の状況です。
④ インフレの影響
金はインフレヘッジとして機能する資産です。
2026年時点でインフレは一時的に鈍化しているものの、賃金上昇や構造的な供給制約など、将来的な物価上昇圧力は依然として存在します。
こうした構造的な要因を総合的に見ると、金は短期的な価格変動を超えて、2026年以降も一定の需要を維持・拡大していく可能性が高い資産といえます。
実需に支えられた堅調な需要、政策環境の変化、そしてインフレや通貨リスクへの備えとして、金の存在感は今後も中長期的に続いていくと見られます。
金を「なぜ持つのか」を明確にする
金や銀を「価格が上がりそうだから」「いま話題だから」といった理由だけで判断してしまうと、長期的な資産運用の軸がブレてしまいがちです。特に富裕層においては、単なる値動きではなく、「何に備えるために金を持つのか」を自分なりに明確にしておくことが、資産戦略を安定させるうえで極めて重要です。
金が資産の中で果たす役割は、いわゆる“リターン狙い”とは異なります。主に以下のような目的で保有されます:
- 通貨リスクへのヘッジ(円やドルの価値が下がった場合の備え)
- 地政学リスクや金融システム不安への備え(有事の安全資産として)
- 資産全体のボラティリティ緩和(他資産との相関が低いため、ポートフォリオ全体の安定化に貢献)
これらの機能は、マーケットの環境が変わっても比較的変わりにくい「構造的な価値」です。
だからこそ、金を持つ理由を明確にし、自分のポートフォリオの中で「どのように機能させたいか」を考えることが、保有判断のブレを減らし、長期的な安心につながります。
金の保有割合は「一律」ではない
「金はポートフォリオの5〜10%程度を目安に保有するのがよい」といった情報は広く流通していますが、これはあくまで一般的な目安に過ぎません。特に資産構造が複雑な富裕層にとっては、そのような一律的な割合では不十分です。
実際には、以下のような要素を総合的に踏まえて、金の保有割合や形態を個別に設計することが求められます:
- 事業資産や不動産とのバランス
- 外貨建て資産の保有状況や為替感応度
- 税務上の扱いや承継時の分割性
- 金をどう持つか(現物・ETF・外貨建て・法人名義 など)
こうした背景を踏まえたうえで設計された金の保有は、単なるリスクヘッジにとどまらず、ポートフォリオ全体の安定性や承継の円滑化に寄与する戦略的な手段となり得ます。
銀の位置づけは?
銀は、金と同様に「実物資産」として注目される一方で、性質は大きく異なる面があります。
特に価格のボラティリティが高いため、富裕層のポートフォリオに組み込む際には慎重な設計が必要です。
銀は、金と違って工業需要との連動性が非常に強い資産です。
主な需要分野としては、以下のような成長領域が挙げられます:
- 電気自動車(EV)
- 半導体・電子部品
- 水素関連技術や太陽光パネル
こうした分野の拡大に伴い、中長期的な実需は堅調に推移することが期待されますが、同時に景気変動や供給の影響も受けやすいため、価格変動は金よりも大きくなる傾向があります。
金:銀の比率は?
一般的な目安としては、金:銀=9:1〜8:2程度のバランスが推奨されます。
銀は金のような「資産防衛」の性質というよりは、金の補完的なポジションとして、ポートフォリオ全体のリスク許容度や資産分散戦略の中で調整されるべき資産です。
銀を活用する際のポイント
- インフレ耐性や実物資産としての魅力はあるが、単独での大きな保有は避けるべき
- 金とセットで考え、補完資産として機能させる設計が望ましい
- 景気敏感な側面があるため、タイミング・ボラティリティへの許容度を踏まえて判断
金と同じ「実物資産」でありながら、リスクプロファイルがまったく異なるのが銀の特徴です。
あくまで資産全体のバランスを考えたうえで、適切な比率とタイミングで慎重に組み入れることが、銀を活かすための鍵となります。
結論:「買うべきか」より「どう持つか」
2026年現在、金価格の上昇は米国の利下げ局面、地政学的リスクの高まり、通貨不安といった複合的な要因によって支えられています。こうした短期的な価格動向に注目が集まる一方で、富裕層にとって金は「値上がりを狙う資産」ではなく、「資産防衛のための機能的なポジション」として捉えるべきものです。
一般的に語られるような「5〜10%の保有比率」といった画一的な判断は、複雑な資産構造を持つ富裕層には適していません。事業資産、不動産、外貨、ファンドとのバランスや、税務・承継といった観点を踏まえた資産全体との整合性のある設計が不可欠です。
金は価格のタイミングで判断するのではなく、「なぜ自分が持つのか」「何に備えるのか」という目的が明確であれば、長期にわたって確実に機能する資産となります。今こそ、資産防衛の視点から、金や銀の位置づけを再定義するタイミングかもしれません。
ご相談のご案内
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