近年、「ファミリーオフィス」という言葉を、資産家との会合や企業・金融機関からの案内などで耳にする機会が増えてきました。また、注目度の高まりを背景に、「親交のある資産家仲間がすでにファミリーオフィスを導入している」といったケースも珍しくなくなっています。
ファミリーオフィスとは、資産家一族が抱える多種多様な課題を解決するために設けられる、プライベートな組織のことです。主に、資産の保全・運用・承継といった重要なテーマに対応するものであり、資産家にとっては非常に有用な仕組みです。そのため、ファミリーオフィスについて知っておくことは、将来を見据えるうえでも有意義だと言えるでしょう。
今回は、ファミリーオフィスの基本的な概要について、「歴史」「今後の展望」「主な種類」といった観点から、分かりやすく解説していきます。
[ 目次 ]
1. ファミリーオフィスとは?その定義と注目される背景
まず、ファミリーオフィスがどのような目的で設立され、なぜ今、これほど注目されているのかを解説します。
1-1. ファミリーオフィスとは?
ファミリーオフィスとは、資産家一族を取り巻く多種多様な問題を解決するために導入される、プライベートな組織・専門のチームのことです。とりわけ大きな役割としては、資産の保全・運用・承継による、資産家一族の永続的な繁栄のサポートが挙げられます。
ファミリーオフィスの主な構成メンバーは、資産規模や家族構成、今後の課題などを包括的に分析し、投資、税務、法務、不動産などについて専門家として助言を行うエキスパートと、それらの意見をまとめて一貫性のある計画や戦略に落とし込むゲートキーパー的役割を担うウェルスマネージャーたちです。これらのスタッフ・専門家たちが、一族の資産に関する企画部門・財務部門を担当しながら総合的にマネジメントを行い、最適な資産の保全や投資判断を行うのが「ファミリーオフィス」です。
1-2. なぜ今、ファミリーオフィスが富裕層に注目されるのか?
- 富裕層の増加と「大相続時代」の到来 日本における純金融資産1億円以上の富裕層世帯は増加の一途をたどっており、これに伴い相続や事業承継に関する複雑なニーズが高まっています。
- 資産保全への危機感 低金利、インフレ、円安といった経済環境の中で、「預貯金だけでは不安」「資産を守りたい」という意識が強まっています。
- 従来の金融機関が提供するウェルスマネジメントサービスは、自社商品の販売を前提とした提案が多く見られます。そのため、真に中立的なアドバイスを求める富裕層にとっては、利益相反の懸念が課題となることも少なくありません。
- このような状況において、ファミリーオフィスは有力な選択肢となり得ます。自社商品の販売を行うことがないため、資産家一族の立場に立った助言やサポートを提供できる点が、特に金融機関に対して一定の不信感を抱く投資家層から高く評価されています。
【関連情報】 資産を守りながら増やす「超保守的運用」の考え方については、〜超保守的に資産を増やす方法〜自分で行うファミリーオフィス型資産管理講座(動画講座)も合わせてご覧ください。
2. ファミリーオフィスの歴史と日本における展望
ファミリーオフィスがどのように生まれ、発展してきたのか、そして日本における将来性について解説します。
2-1. ファミリーオフィスの起源と歴史的発展
ファミリーオフィスという概念は、19世紀のアメリカに端を発します。ジョン・D・ロックフェラーのような大富豪が、自身の一族の資産を専門的に管理するため、専属のオフィスを設けたのが始まりです。
彼らが求めたのは、単なる資産運用にとどまらず、税務・法務・慈善活動、さらには家族の教育支援に至るまで、幅広いニーズを一元的にサポートできる組織でした。
このモデルはその後、ヨーロッパをはじめとする世界各国に広がり、時代の変化や家族の在り方に応じて、多様な形態へと発展を遂げてきました。
2-2. 日本におけるファミリーオフィスの広がりと今後の展望
近年の日本では、従来の超富裕層に限らず、より広範な資産家層からもファミリーオフィスへの関心が高まりつつあります。その背景には、複雑化する税制、国際的な経済環境への対応の難しさといった要因が挙げられます。
さらに今後は、テクノロジーの進化により、ファミリーオフィスの業務は効率化が進み、コストも抑えられるようになると考えられます。これにより、従来は一部の超富裕層だけに限られていたサービスが、より多くの資産家にとっても利用しやすく、身近な存在になっていくことが期待されます。

3. ファミリーオフィスの主な種類と特徴
ファミリーオフィスには、提供形態やサービス範囲に応じていくつかの種類があります。ここでは、それぞれの特徴を比較しながら解説します。
3-1. シングルファミリーオフィス(SFO)とは?
Q. シングルファミリーオフィスはどのような富裕層に向いていますか?
A. 一つの富裕層一族のために設立され、完全にオーダーメイドのサービスを提供する形態です。多額の資産を持ち、プライバシーを最重視し、家族固有のニーズに特化したサポートを求める富裕層に適しています。
3-2. マルチファミリーオフィス(MFO)とは?
Q. マルチファミリーオフィスを選ぶメリットは何ですか?
A. 複数の富裕層一族にサービスを提供することでコスト効率を向上させつつ、より幅広い専門知識やネットワークを提供できる形態です。SFOほどのカスタマイズ性はなくとも、質の高いサービスを手頃な費用で利用したい層に適しています。
3-3. コマーシャル・ファミリーオフィスとは?
Q. コマーシャル・ファミリーオフィスはどのようなサービスですか?
A. 専属のオフィスを持たず、外部の専門家(税理士、弁護士、プライベートバンカーなど)のネットワークをコーディネートする形でサービスを提供する形態です。比較的小規模な資産家でも利用しやすく、柔軟な対応が可能です。
4. ファミリーオフィスの具体的な機能と役割
ファミリーオフィスが提供する多岐にわたるサービスは、富裕層の複雑なニーズにワンストップで応えることを目的としています。ここでは、主要な機能をステップ形式でご紹介します。
4-1. STEP 1: ファミリーミッションステートメントとライフプランニング
ファミリーオフィスの役割は、資産の管理や運用にとどまらず、一族の富を長期にわたって維持・発展させるための総合的な支援にあります。
【関連情報】 海外移住とビザ戦略の全容は、「富裕層のための海外移住・ビザ戦略完全ガイド|各国ビザの種類と最適な選択肢」で詳細に解説しています。
4-2. STEP 2: 資産保全・運用戦略の立案と実行
最も中心となる機能であり、家族の長期的な目標に基づき、リスクを抑えつつ資産を守り増やす「超保守的運用」を実践します。アセットアロケーションの最適化、金融商品の選定、定期的なリバランスなどを行います。
【関連情報】 富裕層向けのポートフォリオ戦略の全容は、「【2025年決定版】富裕層のポートフォリオ戦略完全ガイド|守りながら増やすためのアセットアロケーション術」で解説しています。
4-3. STEP 3: 税務・法務戦略の策定と実行
相続税・贈与税対策、不動産税務、法人税務など、税負担の最適化を図るとともに、法的リスクを回避するためのアドバイスと実行支援を行います。提携する税理士や弁護士との連携により、複雑な問題を解決します。
【関連情報】 相続税対策の全手法については、「【2025年最新】相続税対策の全手法|専門家が生前贈与から生命保険活用までを網羅解説」で詳しく解説しています。
4-4. STEP 4: 事業承継・M&Aの支援
企業経営者である資産家にとって重要なのが事業承継です。経営者の年齢や企業の状況に応じた最適な承継プランの立案、M&A戦略のサポート、後継者育成の助言などを提供し、円滑な事業承継を支援します。
【関連情報】 事業承継に必要な準備の全体像は、「事業承継に必要な準備とは?準備の重要性をケーススタディで確認!」で解説しています。
5. ファミリーオフィスを選ぶ際の重要なポイント
信頼できるファミリーオフィスを見極めるためには、いくつかの重要なポイントがあります。
5-1. 中立性と「押し売り」のないスタンス
自社で金融商品を保有・販売する銀行や証券会社とは異なり、ファミリーオフィスにおいては、独立した立場から中立的なアドバイスを提供できるかどうかが非常に重要です。手数料目的で金融商品や保険商品を勧めるような「押し売り」がないことは、資産家にとって大きな安心材料となります。
こうした中立性の高さこそが、ファミリーオフィスの本質的な価値のひとつであり、資産家一族の長期的な利益に資する信頼性の源でもあります。
5-2. 徹底した費用透明性
ファミリーオフィスサービスは「高額」というイメージを持たれがちですが、実際には、提供されるサービスの内容とそれにかかる費用が明確に示されているかどうかが重要な判断基準となります。
すべての費用項目を事前に開示し、不要なコストを排除する姿勢があるかどうかは、信頼できるファミリーオフィスを選ぶうえで欠かせないポイントです。価格の高さそのものよりも、費用の透明性と対価に見合った価値が提供されているかを見極めることが大切です。
【関連情報】ファミリーオフィスの費用に関する疑問は、「ファミリーオフィスへの依頼費用はなぜ高いのか」で詳しく解説しています。
6. 世代を超えて資産と家族を守るために
ファミリーオフィスは、単なる資産管理の枠を超え、一族の資産を「堅実に守りながら、着実に増やす」という超保守的な運用方針を基盤に、相続・事業承継・ライフプラン設計までを包括的に支援する、資産家にとって心強いパートナーです。
この仕組みを正しく理解し、適切に活用することで、金銭的なメリットにとどまらず、複雑な資産課題の解決や円滑な世代間承継が可能になります。結果として、資産を減らすことなく、次世代・次々世代へと確実に引き継ぐ体制を築くことができます。
ファミリーオフィスは、まさに「資産を守り、家族をつなぐ」ための中核的な存在と言えるでしょう。
資産運用についてお悩みがあれば、
まずはご相談ください。
私たちファミリーオフィスドットコムは、金融商品・不動産・節税・相続など、あらゆる選択肢の中から、
お客様の価値観や状況に寄り添い、中立的な視点で資産運用をサポートします。
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