相続税対策の基本である生前贈与は、年間110万円の非課税枠(暦年贈与)を活用することで、次世代へ資産を計画的に移す有効な手段です。しかし、誤った認識で贈与を進めると、かえって税金を余計に納めてしまうリスクや、税務署に贈与を否認されるリスクがあります。
本記事では、生前贈与の節税効果を最大化するための、損益分岐点の計算から、現金以外の資産活用、そして税務上の落とし穴を回避する実践的な方法について、税理士の視点から徹底解説します。
[ 目次 ]
1. 暦年贈与の仕組み:節税効果を最大化する計算の極意
暦年贈与は年間110万円までの非課税枠を利用する手法ですが、この枠を「いつ」「どのように」「いくら」利用するかによって、最終的な節税効果は大きく変わってきます。
1-1. 贈与の損益分岐点と試算の必要性
生前贈与を行う上で重要なのは、「相続税を払うよりも贈与税を払った方が、総額で得になる」という損益分岐点を見極めることです。富裕層がそのまま資産を残すと50%を超える相続税がかかる場合、110万円を超えて幾ばくかの贈与税を払ってでも贈与した方が、最終的な税負担が安くなる可能性があります。しかし、相続税がそもそも基礎控除額以下でかからない場合、贈与税を払ってまで行う必要はありません。
1-2. 贈与効果を最大化するための計算方法
相続税がどれくらいかかるかの試算が必要となります。この試算に基づき、延々と贈与を続けるのではなく、相続税がかからない程度まで贈与すればよい、という見極めが重要です。また、暦年贈与では、1人110万円までという非課税枠を使い、親族(子や孫など)の人数を増やすことで、短期間で大きな金額を非課税で移転させることができます。
2. 生前贈与の実行戦略:現金以外の手段と契約書の鉄則
生前贈与は、単に現金を渡すだけでなく、現金以外の手段を検討したり、税務署に贈与の事実を証明するための法的措置を取ることが重要です。
2-1. 現金以外の資産を検討するメリット
現金を渡す方が多いですが、他の相続対策と同じく、不動産などの「モノ」に変えて渡した方が節税効果が高い場合があります。これは、不動産は現金よりも相続税評価額が低くなる(評価を下げられる)ためです。ワンルームマンションなどに変えて贈与することで、より効果的に資産を移転できる可能性があります。

2-2. 贈与契約書の作成と「税務署への記録」戦略(STEP形式)
贈与した事実を税務署に証明するため、以下のステップで対応しましょう。
- 【STEP 1】贈与契約書の作成: 贈与した人、贈与される人、金額を記載し、両者が署名・捺印する手書きの簡単な契約書でも十分に効力があります。
- 【STEP 2】銀行送金で記録を残す: 贈与契約書を作成した上で、贈与者と受贈者の銀行口座間で送金記録を残すことが、最も確実な証明方法です。
- 【STEP 3】あえて記録を残す戦略: 110万円の基礎控除からわずかに超える金額(例:111万円)を贈与し、少額の贈与税を支払うことで、税務署に記録を残すという戦略も考えられます。
2-3. 申告が必須となる贈与の注意点
住宅資金贈与や配偶者贈与といった特例を活用する場合は、贈与税がかからない金額であっても、必ず確定申告をしなければなりません。申告を怠ると、特例の適用が否認され、贈与税の追徴課税となるリスクがあるため、注意が必要です。
3. まとめ:生前贈与の成功は「知識」と「正確な実行」にあり
生前贈与は、暦年贈与の非課税枠を最大限活用することで、相続税を大きく軽減できる有効な手段です。しかし、その裏側にある損益分岐点の計算や、贈与契約書の作成、特例の申告といった「正確な実行」が成功の鍵となります。
ご自身の相続税がいくらかかるか分からないまま、独りよがりな対策を進めると、かえって余計な税金を納めてしまうリスクがあります。不確実なままで対策を進めるのではなく、中立的な税理士に相談し、正しい情報をもとに計画的に進めていきましょう。
【関連記事:【2025年最新】相続税対策の全ガイド|専門家が生前贈与から生命保険活用までを徹底解説】


