寄付・財団設立・社会貢献投資：富裕層が選ぶフィランソロピーの3つの手法を比較

ファミリーオフィス型資産管理において、フィランソロピー（社会貢献）は、資産の「出口」の一つであると同時に、家族の理念と価値観を永続させるための「投資」でもあります。単なる寄付ではなく、戦略的な目的意識を持って活動に取り組むことが、富裕層には求められます。

本記事では、富裕層が実践するフィランソロピーの主要な3つの手法「寄付」「財団設立」「社会貢献投資（インパクト投資）」について、その特徴と、ファミリーミッション・ステートメント（FMS）に基づいた最適な選択肢を見つけるための視点を徹底的に比較解説します。

[ 目次 ]

1 1. 3つのフィランソロピー手法の徹底比較
2 2. FMSに基づく最適な手法の選び方と活用術
3 まとめ：フィランソロピーは「戦略」が価値を生む

1. 3つのフィランソロピー手法の徹底比較

各手法は、即効性、管理の複雑さ、そして税務メリットにおいて大きく異なります。ご家族の目的と資産規模に合わせて、最適な手法を選ぶことが重要です。

比較項目	寄付（Donation）	財団設立（Foundation）	社会貢献投資（Impact Investing）
目的	即座の社会支援	理念に基づいた継続的活動	社会的課題解決と財務的リターン
資金の性質	支出（消尽）	資産（永続）	投資（循環・再利用）
管理の複雑さ	低（事務処理のみ）	高（法人運営、ガバナンス必須）	中〜高（インパクト測定が必要）
税務メリット	高（寄付金控除）	高（非課税）	限定的（税制優遇は投資部分に適用外）
家族の関与度	低（都度決定）	高（理事会や運営を通じた関与）	中（投資判断を通じた関与）
ファミリーオフィスでの位置づけ	即効性のある戦術的支援	理念の永続化を担う戦略的基盤	資産保全と社会貢献の融合

1-1. 寄付（Donation）：即効性とシンプルな実行

寄付は、最もシンプルで即効性のある手法です。災害支援など、緊急性の高い社会問題に対して迅速に対応できます。税制上の寄付金控除を受けやすい点もメリットですが、資金は一度支出されるため、長期的な戦略や次世代の関与には結びつきにくいという側面があります。

1-2. 財団設立（Foundation）：理念の永続化とガバナンス

財団（一般財団法人、公益財団法人など）を設立する手法は、一族のフィランソロピーの理念を永続させたい場合に最適です。設立コストや運営の負担は大きいものの、活動内容、運用方針、助成金の配分などをすべてコントロールでき、家族が理事会や運営に深く関与することで、家族ガバナンスの強化にも繋がります。

1-3. 社会貢献投資（Impact Investing）：資産の循環と課題解決の融合

社会貢献投資は、投資を通じて社会的・環境的課題の解決を目指しつつ、同時に財務的なリターンも追求する手法です。従来のフィランソロピー（資金の支出）とは異なり、資金を再循環させながら社会を変革していくという点が特徴的です。FMSが「環境問題」や「貧困問題」に焦点を当てている場合、資産保全と理念の実現を両立させる有力な選択肢となります。

ファミリーオフィスが提唱する社会課題解決と財務リターンを両立する社会貢献投資の必要性

2. FMSに基づく最適な手法の選び方と活用術

最適なフィランソロピー手法は、FMSで定めた「家族の目的」によって決定されます。

2-1. 【STEP 1】「目的」と「時間軸」の明確化

フィランソロピーを始めるにあたり、まずはFMSに立ち返り、以下の点を明確にします。

時間軸: 「即効性（寄付）」か、「永続性（財団）」か、「循環性（社会貢献投資）」か。
関与度: 家族が運営に深く関わることを望むか（財団）、専門家に任せたいか（寄付・ファンド）。

2-2. 【STEP 2】次世代育成のツールとしての活用

フィランソロピーは、次世代に資産の「責任」を教え込む最高の機会です。特に財団の運営や、社会貢献投資のポートフォリオ選定に若手世代を参加させることで、リーダーシップと倫理観を育成できます。

フィランソロピーを通じて、家族がどのように共通の目的意識を持ち、絆を深めるのかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

2-3. 【STEP 3】税務戦略と活動の統合

財団設立や寄付を行う際は、必ず資産承継戦略やタックスプランニングと統合して検討します。どの資産（現金、株式、不動産など）を寄付に充てるかによって、得られる税務上のメリットが大きく変わるため、専門家による事前シミュレーションが不可欠です。

まとめ：フィランソロピーは「戦略」が価値を生む

寄付、財団設立、社会貢献投資の3つの手法は、それぞれ異なる強みを持っています。単に高額な寄付を行うことではなく、FMSという明確な戦略的基盤に基づいて、最適な手法を選ぶことが、フィランソロピーの価値を最大化します。

フィランソロピーを単なる支出ではなく、「家族の永続性と理念の継承」という無形資産を築くための戦略的な活動として位置づけましょう。

戦略的な社会貢献活動の設計と実行にお悩みの方は、中立的な専門家集団であるファミリーオフィスドットコムにご相談ください。

監修・執筆：渋谷豊

ファミリーオフィスドットコム株式会社　代表取締役大学卒業後、邦銀にてキャリアをスタート。大学院を修了後、Citibank N.A.、仏銀ソシエテ・ジェネラル信託銀行、Societe Generale Bank & Trust Singapore において、プライベートバンキングおよびアセットマネジメント業務に従事。海外勤務7年間を含め、グローバルな資産管理の実務経験を有する。帰国後は、上場企業グループ傘下の投資顧問会社の代表取締役として、富裕層および上場企業オーナー向けの資産運用助言・ファミリーオフィス業務を統括。資産運用・管理領域における実務歴は25年以上に及ぶ。 2019年設立のファミリーオフィスドットコム株式会社において、中立的立場から資産管理・運用に関する総合的支援を提供。また、2019年より、厚生労働省年金局資金運用課（GPIF 所管）の資産運用研修にて講師を務めている。慶應義塾大学大学院修了。

資産運用についてお悩みがあれば、
まずはご相談ください。

私たちファミリーオフィスドットコムは、金融商品・不動産・節税・相続など、あらゆる選択肢の中から、
お客様の価値観や状況に寄り添い、中立的な視点で資産運用をサポートします。
資産に関するお悩みや気になることがあれば、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。

無料相談のお申し込み

ファミリーミッションステートメント

寄付・財団設立・社会貢献投資：富裕層が選ぶフィランソロピーの3つの手法を比較