エヌビディアの決算は、5月28日の取引終了後に発表されました。取引前には株価が5%以上上昇する場面もありましたが、終値は2%高にとどまりました。この反応には、正直なところ違和感を覚えました。
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将来の需要は否定されていない
関税の影響や粗利率の継続見通し、自動運転や人型ロボットといった将来の需要が否定されたわけではありません。それにもかかわらず、市場は過度な熱狂を示さず、むしろ慎重な姿勢を見せた印象です。
数年前にChatGPTが登場して以来、革新的なAI技術が注目を集め、大手Webサービス企業はこぞって巨額の設備投資を発表。GPU需要は指数関数的に成長し、株価もそれに連動して上昇してきました。こうした動きは、技術革新の初期段階に見られる典型的な波動であり、企業のガイダンスや将来見通しを受けて株価は一時的に調整しながらも、長期的には右肩上がりを描く――まさに成長株に典型的なパターンでした。
2024年時点で、GPUは半導体市場の金額ベースで約17%を占めています。そして2034年には、GPU市場が現在の半導体市場全体の2倍以上に拡大するとの予測もあります。ただし、製造コストや価格の上昇見通しを加味すると、その成長にはやや違和感を覚える部分も否めません。
より慎重な見方が必要だと感じた理由
そうした中、私はエヌビディア株について慎重スタンスに変更しました。理由は主に2つあります。
1. 成長期待が「第一次ピーク」に達したと感じたため
成長が止まるとは考えていません。しかし、すでに市場が一巡した印象を受けています。中国勢の台頭は避けられず、あるアナリストは「半導体関連の設備投資の実質8割は中華圏。中国の装置メーカーが本格的に台頭すれば、価格競争が激化し、バブルは一時的に収束する」と指摘しています。
2. AI成長の源泉が、一般産業ではなく“軍事”である可能性
今朝まで海外のアナリストレポートやYouTube、X(旧Twitter)のコメントなどを調べたところ、AI分野の成長を牽引しているのは民間よりも軍事用途ではないかという見方が強まっています。実際、SaaS企業のC3.aiは、売上の4倍に及ぶ軍事受注を発表し、株価は一時30%上昇しました。これは、軍事需要によってAI関連銘柄が再評価される構図の一例です。
もちろん、今後もAI市場が成長を続けることには疑いを持っていません。しかし以下の点について、従来のような楽観的視点だけでなく、より慎重な見方も必要だと感じるようになりました:
- 大手企業による巨額設備投資の持続性
- 中東市場といった新興需要の具体性
- 自動運転分野の本格的な立ち上がりの時期
- 高性能化と製造コストのバランス問題
- 軍事分野におけるデジタル需要の再編成
WindowsやiOSの登場時に感じたような“希望に満ちた期待感”とは異なり、現在のAI・GPU市場には、どこか説明しづらい「違和感」がつきまとっている――そのように感じています。
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