日本株先週の振り返り
先週(7月14日〜18日)の日経平均株価は堅調に推移し、前週末比で249.43円(+0.63%)高の3万9819.11円で取引を終えました。ただし、20日に控えた参議院選挙を前に、投資家は積極的なポジションを取りづらく、全体としては様子見ムードが強く漂う一週間となりました。
選挙結果によっては、市場の空気が一変する可能性が指摘されていました。仮に与党が参議院で過半数を割り込むような展開になれば、財政規律が後退し、バラマキ的な政策への転換が意識されると予想する市場関係者も多くいます。そうなると、日本国債の信用に対する不安が再燃し、格下げ、悪い円安、長期金利の上昇といった連鎖的なリスクが現実味を帯びてきます。そのようなシナリオが意識される中では、投資家の買い意欲が鈍るのも当然といえます。
週明け14日は、トランプ前大統領がEUやメキシコに対して30%の関税を課すと表明したことで、リスク回避の売りが先行しました。一方で、米国市場ではエヌビディアが最高値を更新し、半導体関連株に資金が流入しました。15日には東京エレクトロンやアドバンテストが上昇を主導し、日経平均は上値を試す展開となりました。16日には一時3万9900円台を回復し、18日には一時4万円台を突破しましたが、引けにかけては利益確定売りに押され、最終的には小幅な上昇で週を終えました。
注目すべきは、防衛関連株の動きです。野党が勢力を伸ばすような結果となれば、防衛費の拡充が政治的に難しくなるという見方が浮上しやすくなります。その懸念が先行し、防衛関連銘柄には売りが出始めています。
全体として、市場は現在、イベントリスクを強く意識した神経質な状況にあります。中途半端な楽観論では通用しない局面であり、当面は様子を見ながら慎重にポジションを組むスタンスが現実的と考えられます。
日本株今週の見通し
今週(7月22日〜25日)の日本市場は、参議院選挙をひとまず通過したことで、短期的には安堵感が広がる可能性があります。ただし、それは“嵐の前の静けさ”とも言える状態であり、材料難の中での上昇は限定的と見るべきでしょう。
焦点はすでに次の波に移っています。まず、米国との通商交渉が本格化する中で、8月初旬に控える関税猶予の期限が市場の不安材料として再浮上しそうです。ここで強硬な通商姿勢が確認されれば、日本株への外部プレッシャーは避けられません。トランプ前大統領が再び通商リスクの震源地となる可能性には注意が必要です。政局となれば、交渉体制も揺らぐことから8月1日をそのまま迎える可能性も否定できません。
その一方で、選挙結果によっては日本の政治体制自体に揺らぎが生じるリスクもあります。与党が議席を減らし、連立の再編や解散の観測が強まれば、財政方針の不透明感がマーケットにじわじわと波及していきます。英国でかつて起きた“トラス・ショック”のように、財政に対する市場の信頼が一度失われると、取り戻すには時間がかかります。日本でも同様の火種がくすぶっていることは、見落としてはならない視点です。
もっとも、政局に翻弄される一方で、企業決算シーズンが本格化してくる中では、個別株への選別的な資金シフトが起こりやすくなります。好決算や上方修正が出た銘柄には素直に資金が流れ、指数以上に物色の濃淡が出やすい地合いです。指数だけを見ていると全体感を誤る局面でもあるため、企業の“実力値”にフォーカスした投資判断が鍵になると考えます。ただ、政権や枠組みが変わるようであれば、セクターに対する市場の選好は変わる可能性が高く、押し目だ!と飛び乗るよりもやはり慎重に潮目の変化を意識してじっくりと判断すべきです。
日経平均のテクニカルレンジは3万8500円から4万500円あたりが意識されますが、実際には政策の方向性や通商環境、そして業績インパクトによって振れ幅は拡大しやすい局面です。下手に予想を固めてしまうと、逆方向に振られたときの反動が大きくなるため、相場の“モード転換”には柔軟な対応が求められます。
今週の市場は、一見落ち着いたように見えて、じつは足元の地盤が読みにくい“仮の安定”。この状況下で必要なのは、騒がず浮かれず、材料の変化に冷静に反応できる構えです。
今週の為替注目点
今週のドル円相場は、政治と金利、そして通商という3つの変数が複雑に絡み合う展開になりそうです。特に参院選の結果次第では、日本側から為替を揺さぶる要素が浮上し、短期的なボラティリティが高まる可能性があります。
たとえば、自公与党が過半数を失うような結果となれば、政局の不安定化が意識され、それに伴って「財政規律の緩み」や「政策の方向性不透明」といった見方が広がります。そうした空気が円売りを誘発し、ドル円は上方向に振れやすくなります。加えて、21日は東京市場が休場となるため、流動性の低さを突いた仕掛け的な値動きが出やすい点にも注意が必要です。
一方で、仮に与党が議席を減らしたとしても、現政権の継続が見込まれ、減税や財政拡大に慎重な枠組みが維持されるなら、むしろ過度な円売りは巻き戻される可能性もあります。政局は不安定でも、政策運営に“ブレ”がなければ、市場は一定の落ち着きを取り戻すというシナリオも捨てきれません。
ドル側の事情も無視できません。最近のドル高の背景には、米国の景気指標の堅調さと、それに伴うインフレ観測の再燃があります。とくに、8月に予定されている対中関税の引き上げが現実味を帯びてくる中で、インフレ期待が金利上昇につながり、ドルを押し上げる構造が強まっています。
ただし、楽観視は禁物です。米国内ではパウエルFRB議長の解任問題が再びくすぶり始めており、政治的リスクがドルの信認を揺るがす火種となる可能性があります。22日に予定されているパウエル議長の発言内容も、相場の方向感に大きく影響する要素になるでしょう。
今週の為替市場は、一見すると金利やインフレといったマクロ経済の話に見えますが、実際には「政治と政策への信認」が問われる週です。テクニカルな水準だけでなく、“ストーリーの流れ”を読む力が試される局面に入ってきました。
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