日本株先週の振り返り
先週の日本株市場は、予想外の材料が次々と飛び出し、まさに「市場が踊らされた」1週間となりました。日経平均株価は週間で1600円超も上昇し、4万1400円台まで駆け上がりましたが、この上昇は単なる楽観ではなく、明確な“政策ドライバー”を伴ったものでした。
火元は、トランプ前大統領による日米関税交渉の「サプライズ合意」の発表です。日本側の対米投資の拡大と関税引き下げがセットで進められるとの報道が伝わると、特に自動車株に猛烈な買いが入りました。日本企業が米国側の機嫌を取る形で進める対米政策には複雑な思いも残りますが、マーケットは「理屈よりも材料」です。動くネタがあれば素直に反応する。これが相場です。
また、日銀の利上げ観測が急浮上したことも、相場を支える力となりました。副総裁が「企業全体の収益は堅調」と述べたことは、マーケットにとっては「利上げ継続のシグナル」として受け止められ、メガバンクを中心に金融株が買われました。
週後半には、米国がEUや中国との通商協議でも一定の進展を見せているとの報道も加わり、海外要因も追い風に。日経平均は一時4万2000円台を超えましたが、高値警戒感から週末にかけてはやや調整。ただ、4万1500円近辺ではしっかりと買いが入り、相場の地合いの強さも改めて確認できました。
日本株今週の見通し
今週の焦点は「決算トリガー」と「政策イベント」のダブルパンチで、今週の相場は一転して、より神経質な展開となりそうです。日本企業の決算発表が本格化するタイミングに入り、銘柄ごとの“明暗”がはっきりと分かれやすい状況にあります。
すでに信越化学が決算をきっかけに大きく売られる場面がありましたが、こうした「業績トリガー」による激しい値動きは今後も続くと見ています。期待が高まっている銘柄ほど、少しの失望で大きく売られる傾向があるため、決算をまたぐポジションには慎重さが求められます。
加えて、米国では31日にアップルやアマゾンの決算が控えており、日本株もこれに連動する形で動く可能性があります。特に、AIや半導体関連など米ハイテク株との相関が強い銘柄群は、米国企業の設備投資や見通しが変わるだけで、日本株にも大きなインパクトをもたらすため注意が必要です。
今週の為替注目点
ドル円相場は「日銀・FOMC・政局」の三重苦で乱高下が予想されます。為替相場は、今週は極めて重要な分岐点を迎えます。まずは、7月30〜31日に日銀の金融政策決定会合が予定されており、ここでのスタンス変更や植田総裁の発言が大きな注目点です。
政策金利自体に変化がなくても、「次の一手」を示唆する発言が出れば、それだけで円高要因となり得ます。前回の展望レポートで示された関税シナリオと比較すると、今回の合意はむしろ日銀にとってポジティブ材料となる可能性もあり、物価見通しの上方修正などがあれば利上げ圧力が再燃する展開もあるでしょう。
同時期に開かれるFOMCも、見逃せません。政策変更はないとの見方が大勢ですが、パウエル議長が「利下げへの地ならし」を始めるかどうかで、ドル円の方向性は大きく変わります。また、トランプ大統領の圧力に屈するのか注目です。
さらに、国内では石破首相の進退問題が政局リスクとして浮上しており、自民党内の動きにも目が離せません。金融政策、外交交渉、政治的不安定という3つの不確定要素が重なるなか、為替市場は荒れ模様になっても不思議ではありません。
8月相場の入り口で求められる“視点とテーマ”
来週以降は、季節的な需給の変化にも注意が必要です。例年、8月は米株の上昇が一服しやすく、金利もやや低下しやすい傾向があります。また、為替では円高が進行しやすい“夏のアノマリー”もあり、これらが一斉に重なると、これまで上昇をけん引してきた銘柄にとっては逆風になりかねません。
したがって、今週以降の投資戦略では、単に指数の上下を追いかけるのではなく、「テーマを持った個別株選び」が重要になってきます。
・米IT決算に注目するなら、連動性の高い半導体関連銘柄をウォッチ
・関税や政策の影響を見るなら、自動車関連・素材といった実需系銘柄に注目
・利上げ継続なら、銀行や生保など金融株の底堅さを確認
というように、「視点の明確化」が成功の鍵になる局面です。
いまは「イベントドリブン型」の相場環境
現在の相場は、ファンダメンタルズというより「イベントドリブン」の要素が色濃くなっています。政治・政策・決算という、ある意味で“読みづらい”材料が重なっているからこそ、日々の材料に機敏に反応する柔軟性が求められます。
ひとつ確かなのは、今の相場は「方向感が出てきたところ」ではあるということ。過度な悲観でもなく、過信もせず、材料を冷静に取捨選択しながら、テーマごとにメリハリをつけた投資判断が求められる――そんな1週間といえそうです。
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