日経平均株価が史上最高値を更新~1年ぶりの記録的上昇の背景と市場動向
2025年8月12日の東京株式市場は、投資家にとって記憶に残る一日となりました。日経平均株価は前営業日比897円(2.15%)高の4万2718円で取引を終え、2024年7月11日以来約1年ぶりに史上最高値を更新しています。取引時間中には一時1170円を超える上げ幅を記録し、心理的な節目である4万3000円に迫る場面も見られました。東証株価指数(TOPIX)も続伸し、8日に付けた最高値をさらに上回っています。
株価上昇を支えた主要因
今回の記録的な株高には、複数の要因が複合的に作用しています。
企業業績の改善と市場予想の上振れが最も重要な要因として挙げられます。2025年4〜6月期決算発表では、米国の関税政策に対する当初の悲観的な市場予想を上回る内容が相次いで発表されました。TOPIX採用銘柄の集計では、経常利益が前年同期比7%減となったものの、7月15日時点で予測されていた16%減益を大幅に上回る結果となっています。7月以降に通期経常利益の見通しを上方修正した企業は50社に達し、下方修正した27社を大きく上回りました。
具体的には、ソニーグループが最大1000億円と見込んでいた関税影響を700億円以内に縮小する見込みとなり、2026年3月期の連結営業利益予想を上方修正したことが注目されています。トヨタ自動車も7日に連結利益予想の大幅下方修正を発表したにも関わらず、翌8日には株価が3%高まで反発し、前日の下落分を取り戻しました。企業業績を巡る「霧が晴れて視界が良好になってきた」という見方が市場に広がっています。
米関税政策の不透明感後退も重要な押し上げ要因です。日米の関税交渉が7月に妥結したことに加え、日本時間12日朝にはトランプ米大統領が対中関税の一部を90日間延期する大統領令に署名したと伝わりました。これにより、米中対立激化への懸念が一時的に後退し、投資家心理が前向きになったことで、リスクを取って株式を買う動きが先行しています。
円安進行と外部環境の追い風も株価を押し上げました。日本が連休中の米株式相場が総じて堅調だったことに加え、対ドルの円相場が一時1ドル=148円台半ばまで円安が進んだことで、輸出関連の大型株の採算改善につながるとの見方から、幅広い銘柄が買われています。また、米株式市場でナスダック総合株価指数が前週末に最高値を更新したことも、日本の半導体関連銘柄の株価を押し上げる要因となりました。
需給面の強さと「持たざる恐怖」現象
さらに、足元の株高の特徴として、需給の強さが挙げられます。2025年の企業の自己株取得枠の設定は過去最高ペースで積み上がっており、1〜7月の事業会社の買い越しは約6.5兆円と、2024年のほぼ2倍に迫る勢いです。4〜6月期決算に合わせて、INPEXやリクルートホールディングスといった大手企業が大規模な自社株買いを発表していることも株価を押し上げています。
買い遅れていた国内機関投資家も買わざるをえなくなり、関税影響や世界的な景気減速懸念を理由に弱気だった投資家が、売り建てのポジションを逆にする「ドテン買い」を迫られている状況です。これが「持たざる恐怖」に繋がり、買いが買いを呼ぶ展開を演出しています。
物色面でも多様な広がりを見せており、半導体関連、生成AI関連、内需銘柄、銀行株、商社株など幅広いセクターに資金が流入しています。大成建設による東洋建設買収や太平洋セメントによるTOB実施など、将来に向けた再編や攻めの成長投資も市場から高く評価されており、日本株に対する成長期待を支える要因となっています。
今後の展望と市場心理
現在の株高の持続性について、市場参加者の間では慎重な見方も存在します。日経平均の予想PER(株価収益率)は17倍を超え、2024年7月につけたピークにほぼ並んでいるからです。
しかし、ウォール街の格言「株式相場は不安の壁をよじ登る」が示すように、慎重な投資家が市場に一定数残っていることは、むしろ強気相場が長続きする条件と見ることもできます。最高値を上回ったことで日経平均は新領域に入り、チャート上の明確な節目がなくなる中、日本株に対する成長期待をどこまでつなぎとめられるかが、今後の株高持続の鍵となるでしょう。
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