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【米国株 】雇用悪化で景気後退懸念が再台頭。この後の備えはどうすべきか?【9/8 マーケット見通し】

注目を集めていた5日の雇用統計で、雇用が大きく減速していることが明らかになりました。それに伴い、景気後退するのではないかといった意見が多く聞かれるようになってきました。

このような不透明な状況の中で、今後に備えてどのようなことを考えていけばいいのか、どのように対応していけばいいのかを確認したいと思います。ぜひ最後までご覧ください。

景気への不安が高まっている背景

ISM製造業・サービス業はまちまちの内容

最初に、ISM製造業、サービス業の景況感指数をご覧ください。この指数は、先週の雇用統計と同程度、注目を集めた経済指標です。結論から申し上げると、結果は非常にまちまちで、景気が良くなるのか悪くなるのかを断定するには、やや材料不足でした。

青いチャートはISM製造業、赤いチャートはサービス業を示しています。製造業は50を割り込む水準で推移し、サービス業は50をやや上回って52と、そこまで強い数値ではありません。景気がいいのか悪いのかを判断しづらい状況にあるといえます。

サブインデックスの雇用と支払価格がポイント

また、ISMの全体を示すPMIもまちまちな結果でしたが、特に市場で注目されたのは2つのサブインデックス、青網掛けで示した雇用、赤網掛けの支払価格です。

ISM製造業景況感指数では、雇用指数が43.8と、前月からほとんど変わらず低空飛行が続いています。ISM非製造業景況感指数の雇用指数も46.5と、共に50を下回って、積極的な雇用を行っていないことが分かりました。

ISMは今後の先行指標となります。今回の雇用統計が悪かっただけでなく、今後も悪化する可能性があると、先週の段階である程度予想されます。

トランプ関税による事業見通しの不透明さが、企業の雇用抑制に繋がっている可能性が高く、まだまだ関税の不透明さは続くと思われるため、雇用が増える環境にはないことが見えてきました。

さらに支払価格を見ると、引き続き高止まりしていることが確認できます。製造業もサービス業も共に高止まりしており、今週発表されるCPIもある程度高い水準になるのではないかと見られています。突出して高くなるとは想定しにくいものの、大きく下がることも考えにくいでしょう。

景気が減速する中で物価がある程度高止まりするのではと、スタグフレーション懸念が台頭し、先週は株価がやや軟調に推移しています。

また、雇用統計の内容に目を向けると、8月は市場予想+7万5000人に対して、+2万2000人と、大きく予想を下回りました。6月も下方修正され、ついにマイナスの雇用となっています。ここ3ヶ月の平均雇用者数はわずか2万人と、非常に低い水準に留まっています。

先ほど見ていただいたISMの調査でも、雇用回復のめどがあまり立っていないことが確認できました。そのため雇用悪化=景気減速という認識が市場で強く意識されたのです。

加えて、9月9日には雇用者数の年次改定が発表される予定であり、約80万人規模の下方修正が行われるのではないかとも言われています。このように、雇用悪化が強く意識された1週間となりました。

雇用鈍化でもこれからも株価は上がり続けるのか?

M2が増加していても景気後退になれば話は別

ただ一方で、5日の株価を見て分かるように、雇用統計が予想を下回ったにもかかわらず、株価は大きく崩れてはいません。

この一つにM2が関係していると考えられます。M2が大きく増えている状況では、市場に資金が余っているため、株価が下がる局面でもしっかりと買い支えが入りやすく、株価が大きく下がりにくい傾向があります。

緑のチャートは、前年比でのM2の増加率を示しています。現在、M2は上昇傾向にあり、7月時点では前年比+4.8%となっています。残高としては過去最高の22兆1,200億ドルに達し、21ヶ月連続で増加している状況です。このような状況では株価が大きく上昇しやすくなりますし、仮に雇用が悪化しても下支えとなることが期待されているため、株価が大きく崩れない要因になっているといえます。

ただし、注意すべき点があります。M2は景気が減速し、景気後退に入ると資金の流通が鈍化し、前年比で減少に転じます。当然、その結果として株価も下落することになります。したがって、現在のようにM2が増加して株価を支えているのは、あくまで景気後退に入っていない場合に限られるのです。もしマーケットが懸念しているように景気が後退することになれば、M2がいくら増えても株価を支えられなくなる可能性があります。この点は今後の大きな注目ポイントになるでしょう。つまり景気次第でシナリオは大きく変わるということです。

今後ISMなどの経済指標への株価の感応度が上がりそう

次にご覧いただきたいのは、こちらのチャートです。紫のチャートはS&P500の前年比パフォーマンス、黄色のチャートはISM製造業指数を示しています。過去、ISM製造業指数とS&P500のパフォーマンスは非常に強い相関を持ってきました。

ところが、2023年以降は状況が変わりました。ISM製造業指数が50を下回り続けても株価は上昇する、という状況が続いたのです。そのため、両者の相関が薄れたのではないかとよく指摘されるようになりました。

転換点となったのは2023年ですが、この時期にはM2が大きく上昇に転じました。ISMが景気の悪化を示していたにもかかわらず、M2の増加が株価をしっかり支えていたわけです。これが、ISMなどの経済指標が弱くとも、株価が高値を維持できていた理由です。

ただ、景気後退、もしくは減速がさらに深まってくると、いくらM2が多くとも株価を支えられない可能性がありることは前述の通りです。もし景気が悪くなる流れが強まれば、低迷を続けるISM指数と同じように、株価も下落に転じる可能性があります。そのため、今後はこの点に注目していく必要があります。

ここ数年間は、株価はISMにあまり反応してきませんでしたが、今後は経済指標への感応度が高まり、景気で悪い指標が出れば株価も下がる、という状況になりやすくなる可能性があるということがポイントです。

利下げ見通しが年3回程度に高まる

5日に株価が大きく下がらなかった理由として、もう1つ、利下げ期待があると思います。雇用が悪化したため、FRBが利下げを行うのではないかという期待が株価を下支えしたのです。

こちらのチャートはFFレートの先行き見通しを示しています。赤い点線が3ヶ月前、青い点線が1ヶ月前、黒い点線が直近です。ご覧の通り、利下げの予想回数は増えており、現在は年3回程度の利下げと予想されています。利下げが行われれば株価の支えになることが、マーケットにとっての安心材料となっていたのです。

歴史が示す利下げによる2つのシナリオ

ただし、注意が必要なことがあります。1985年以降、6ヶ月以上利下げを停止した後に再び利下げへ転じたケースは6回あり、この6回は大きく2つのパターンに分けられます。

1つ目は、景気が悪化する前に保険的な利下げを行ったケース。2つ目は、景気が実際に悪化してから景気対策として利下げを行ったケースです。

保険的利下げを行った1985年、1995年、2019年のケースでは、株価は大きく上昇しました。保険的な利下げになりそうな今回は、利下げ後に株価が上昇する可能性があります。

ただ、その後、景気減速の足音が聞こえてきたことで、マーケットは新たな懸念を抱き始めています。1990年、2002年、2008年のように、実際に景気が悪化してから利下げを行う後追い的な利下げになった場合、株価が非常に低調となり、大きく下落してきた経緯があります。今回も同じような可能性があるのではないかという懸念が強まっているのです。

2~3週間前までは、利下げによって株価が支えられるとの期待が中心でしたが、景気が後退、減速に向かうのであれば話は別です。景気後退や減速が確定したわけではありませんが、可能性が高まったことにより、マーケットに不透明感が漂ってきたのです。

株式にこれ以上資金を積み増すのは様子を見ようと考え、現在は上値が少し重くなる状況となっています。

では、このような景気の行方が読めない不透明な局面で、何を考えるべきでしょうか。

どのような利下げにも強い金への資金流入が続きそう

結論から言えば、先行き不透明な環境では金が上がりやすいです。

黄色いチャートが金価格、青いチャートがFFレートの利上げ、赤いチャートが利下げ、左軸の数値は利下げ確率を示しています。つまり赤いチャートが上に位置している状態は100%利下げが行われると見込まれている状況を表します。現在、9月の利下げ確率は100%に近づいています。

ご覧いただきたいのは、赤いチャートが示す利下げ期間中、金価格がどう推移したかというと、金価格は大きく上昇していることが分かります。また、利下げ確率が100%に近づけば、さらに金価格が大きく上昇することも確認できます。

利下げが行われるような場面、世の中の不透明感や景気減速懸念がある局面では、安全資産として金が買われる傾向があります。さらに、金利が低下する局面では、金利を出さない金は相対的に価値が高まりやすくなるため、金価格が上昇しやすいのです。

一方で株価については、保険的な利下げか景気対策的な利下げかによって、その後の動きが大きく異なります。雇用指標を見ても、まだどちらの可能性も残されているため、投資家としても株式に新たな資金を投じにくい状況です。

そのため、利下げ局面に強い資産である金に資金をシフトする動きが、先週からさらに強まっています。これまで株式に投資し、金を検討してこなかった方にとっても、こうした状況を踏まえて、ポートフォリオの一部に備えとして金を組み入れることは1つの考えとなるでしょう。

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