18年半ぶりの金利水準が市場を揺さぶる
12月5日、東京株式市場で日経平均株価は前日比536円55銭安の5万0491円87銭と反落しました。前日に1,163円高と急騰し、5万1,000円台を回復したばかりでしたが、一転して売りが優勢となりました。この急落の主な要因は、長期金利の上昇でした。
この日、新発10年物国債の利回りは朝方に一時1.940%をつけ、その後1.950%まで上昇しました。これは2007年7月以来、約18年5カ月ぶりの高水準です。市場関係者の注目は株価よりも債券利回りに集まり、金利動向が株式市場全体を揺さぶる展開となりました。
金利急騰の背景には、日本銀行による12月18〜19日の金融政策決定会合での追加利上げ観測があります。報道によれば、日銀は内外の経済情勢に大きな変化がない限り、政策金利を0.75%へ引き上げる公算が大きくなっています。市場では利上げの織り込みが約9割に達しており、さらに積極財政派として知られる高市早苗政権がこのタイミングでの利上げを容認する姿勢であると報じられたことで、債券売りに拍車がかかりました。
縮小するイールドスプレッドが示す「割高感」
これまで株式市場は、金利上昇下でも「企業業績の拡大」や「デフレ脱却」を材料に株価上昇を続けてきました。しかし、本日の相場展開は、投資家がついに「金利高を無視できなくなった」ことを示しています。
その根拠となるのが、株式の予想益利回りと長期金利の差を示す「イールドスプレッド」の縮小です。安全資産である国債の利回りが2%に迫る水準まで上昇したことで、リスク資産である株式の相対的な魅力が低下しています。足元のイールドスプレッドは、2021年2月以来の水準まで縮小しており、5万円を超える日経平均株価に対して「割高感」が強く意識され始めました。
この意識の変化は、具体的な物色動向にも表れました。値がさハイテク株であるアドバンテストや東京エレクトロンが下落したほか、金利上昇が逆風となりやすいグロース株への売り圧力が強まりました。
一方、金利上昇の恩恵を受けるはずの銀行株も複雑な動きを見せました。三井住友フィナンシャルグループは朝方、利ざや改善への期待から上場来高値を更新する場面がありましたが、その後は利益確定売りに押されました。市場では「銀行株への利上げ織り込みは急速に進んでおり、材料出尽くしに近い」との指摘もあります。
新たなフェーズに入った日本株市場
本日の急落は、日本の金融市場が「超低金利」から抜け出し、金利のある世界での適正な株価形成を模索し始めたシグナルです。長期金利1.9%〜2.0%という水準は、もはや株式市場にとって無視できない「重力」として機能し始めています。
債券市場では、2年債利回りが1.030%と約18年ぶりの高水準をつけ、5年債も08年以来の高水準を更新しました。これは市場が、単発の利上げではなく、継続的な金利上昇サイクルを織り込み始めた証左と言えます。
12月の金融政策決定会合に向け、市場は米国の雇用統計やFOMCなどの重要イベントをこなしながら、神経質な展開を続けるでしょう。投資家は、単なる成長期待だけでなく、金利水準に見合った真の「稼ぐ力」を持つ企業を選別する局面に立たされています。
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