2025年12月、金や銀などの貴金属価格が大きく上昇しています。国内の金小売価格は1カ月ぶりに最高値を更新するなど、市場は活況を呈しています。この急騰の背景には、米国の金融政策や政治情勢、株式市場の動きなど、複数の要因が複雑に絡み合っています。本記事では、現在の貴金属上昇を支える主要な理由を詳しく解説します。
米国の利下げ観測が貴金属を後押し
貴金属価格上昇の最大の要因は、米連邦準備理事会による追加利下げの観測です。金利がつかない金や銀にとって、金利の低下は相対的な投資魅力を高める重要な要素となります。12月9〜10日開催の米連邦公開市場委員会では、利下げ実施が9割近く織り込まれており、これが強力な追い風となっています。
さらに、次期FRB議長人事を巡る不透明感も市場に影響を与えています。トランプ米大統領に近いとされるハセット委員長が有力候補として報じられ、政権の意向に沿った金融緩和が進む可能性が指摘されています。中央銀行の独立性への懸念は米ドルへの信頼低下につながり、無国籍通貨である金や銀への資金逃避を加速させています。
AI株から実物資産への資金シフト
今回の上昇局面で特徴的なのは、人工知能関連株からの資金流出が貴金属への流入につながっている点です。昨年来、市場を牽引してきたAI株ですが、米半導体大手エヌビディアなどの株価が伸び悩む中、投資家はリスクオフの姿勢を強めています。
従来、主力株売却後の資金は米国債に向かうのが通例でしたが、米国の財政難やトランプ政権下のインフレ再燃懸念から、国債のリスクも意識され始めています。その結果、株式市場の利益確定で生じた待機資金が、地合いの良い貴金属市場へと向かうセクターローテーションが発生しているのです。
銀の需給逼迫が相場を牽引
今回の貴金属ラリーを主導しているのは銀です。銀の国際価格は年初から2倍以上の水準に達し、11月28日にはロンドン現物価格が1トロイオンス56.52ドルへ急騰しました。
銀が高騰する背景には、金融的要因に加えて物理的な需給逼迫があります。10月に最高値を更新した際、ロンドン市場では歴史的な品不足が発生しており、その供給問題は解決していません。専門家は銀価格が2026年には70ドル台、条件次第では100ドルに達する可能性もあると予想しています。この値動きの軽さが投機マネーを呼び込み、金やプラチナなど他の貴金属価格も引き上げています。
産業用需要の拡大
貴金属だけでなく、銅などの非鉄金属全体にも資金が流入しています。銅の国際価格も最高値を更新しましたが、これはAIデータセンターや電力向けの実需拡大が背景にあります。AIブームは株式市場では調整局面を迎えていますが、物理的なインフラ需要として銅などのコモディティ価格を押し上げており、貴金属を含む商品市場全体の底上げに寄与しています。
現在の貴金属上昇は一時的なブームではなく、米国の金融政策の転換点、政治的不確実性、AIバブルへの警戒感という構造的変化を反映したものです。金利低下とインフレ懸念が続き、AI関連株への警戒感が残る限り、実物資産である貴金属への資金シフトは継続する可能性が高いでしょう。
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