皆さん、こんにちは。ファミリーオフィスドットコムです。本日は、3月8日月曜日。今週の見通しをお伝えします。本日は先週の振り返りを最初に行い、最後に1.9兆ドルの経済支援が議会を通過し、金利が上昇している状況の中で、ナスダック市場はどうなるのか、どういった株価が適正なのかをお答えしたいと思います。
[ 目次 ]
まず、先週の振り返りです。金曜日、雇用統計の発表がありました。結果としては、37.9万人増ということで、市場の予想を大きく上回る良い結果でした。ただ、中身を見ると、微妙なところもあります。
例えば、26週以上の失業者の数が増えていること。また、ほとんどの増加要因は、サービス業中心です。もちろん、ロックダウンの解除も伴って、雇用が増えたということは喜ばしいことなのですが、少し偏った上昇であるとも言われています。
U6と言われている、本当は働きたいのだけれども、仕方のない理由により正規社員ではない、被雇用になっている失業率が11.1%ということで、前回と変わらず高いままになっていることにも注意が必要です。
雇用統計のヘッドラインの数値としては、とても良かったのですが、中身としてはまだまだで、雇用については引き続き注目していかなければいけない、もしくはサポートしていかなければならない状況であることが、改めて認識されました。
金曜日の株価の上昇が、これは一過性のものなのか、それとも継続的なものなのかということについては、ここ数日間、マーケットの反応を見ながら、判断することが大事です。金曜日だけの上昇で、判断をしない方がいいでしょう。
振り返りですが、先週一週間は、要人発言が中心となりました。パウエル議長の発言に注目が集まり、金利が激しく上下。結果としては、テーパリングの開始についての言及、オペレーション・ツイストと言われているような、長期金利を抑える政策についての方向性にも言及がなかったことで、期待外れとして、金利が上がっていきました。
一方で、今までハト派として有名だったパウエル議長が、改めて少しタカ派に転じたのではないかという話もあります。これは、トランプ大統領が、今までずっと押さえつけていたものが、今回たがが外れて、元の状態に戻ったのではないかとされています。今後、パウエル議長の発言について、注目が必要でしょう。
では、いつも通り定点チェックです。ナスダックが単独で安くなる状況が続いています。金利が上昇していること、期待値が高かったということもあり、反動が中心になったと思われます。
次にグロースとバリューのスプレッドです。これはSP500のグロース株がどれだけ上がり、バリュー株がどれだけ上がっているかの、差を表したものです。チャートが上に行っている状態は、グロース株がすごく成長していることを意味します。今、グロース株の成長が高く、割高だったものが修正に入っていると見ていただきたく思います。これは、過去の数字から見ても、グロース株の調整が続くことは明らかと思われます。引き続き、グロース株は厳しい状況となるでしょう。
次に、こちらの表です。全体的に、先週一週間はコモディティが下がっています。少し金が余っていた状態から、お金が止まっていること。政策が少し追いついてきていることもあったのか、コモディティ価格は少し落ち着いてきています。その中で、引き続き金が安い状況が続いているのは、金利上昇の影響を受けてです。金が下がっているということは、今後リスクオフに完全になってはいないということで、まだまだ資金があまり、行先を探している状態が続いていると思われます。
10年金利は上昇しています。USドルも上がっているということで、先週と変わりません。引き続き、インフレ率の上昇、テーパリングがいつかスタートするのではないかという思惑、景況感によってのプラス要因での金利上昇、そういった要因があって、金利が上がっていっています。それに伴い、ドルの価値が上がっていくという形で、ドル高の金利高が続いていると思われます。
先週一週間、要人発言が多くありました。金利やドルが高くなっていること、また金が引き続いて安いこと等は、変わらずの展開になっています。ナスダックも引き続き弱いですので、今までの流れが継続していると認識していただければと思います。
そのなかで、今週の注目イベントです。まず、今日は日本の景気ウォッチャー指数が発表になります。こちらの方は、数字がよくなれば株価にプラスの影響がありますので、要チェックです。
また、アメリカで3月10日に消費者物価指数が発表されます。さらに、11日にミシガン消費者物価指数。こちらが、物価に関することなので、こちらの方は確認していただければと思います。もちろんこれが上がってくればということなのですが、この消費者物価指数というのは、直接PCE、デフレーター等に比べると、FRBが重視しているわけでもないです。数字として、少し誤差が出やすいとも言われている指標なので、参考程度に、物価がどうなっているかを確認すれば、十分です。
あとは、11日に週間原油在庫、12日にベーカーヒューズ・リグ稼働率が出てきます。これはアメリカ、シェールオイルの、生産稼働率が上がっていれば、原油が上がっていくという、コモディティに関する指標です。もし、原油価格が大きく上昇することがあれば、インフレ率が影響することも考えられますので、ここら辺は注意が必要です。
3月11日に、ECBの理事会もあります。こちらも、内容だけは確認してこうと思っています。
さて、今週の見通しです。まず、ブルームバーグの記事をご覧ください。先ほど冒頭にお伝えしたように、米国の雇用は、2月、37.9万人増と、予想を上回っています。失業率も、6.3%の予想に対して、6.2%ということなので、ヘッドラインとしてはとても良かったです。
ですが、先ほど言ったように長期、26週以上の失業者数は、増えている状態です。かつ、雇用も回復していますが、それ以上に賃金が上昇しています。つまり、ホワイトカラーと言われている人たちの雇用は回復していますが、ブルーカラーと言われる人や、人種的な問題によって、雇用に差がついているという状況を、アメリカ政府当局としては看過できないため、まだまだ雇用を重視する政策を打ち出すことは、明らかだという内容になっています。
ここに書いてあるように、雇用優先=金利は最優先ではない。金利の上昇は容認することを、改めて確認しています。この雇用統計の内容を受けて、イエレン財務長官がコメントをしています。雇用はまだまだ十分ではなく、金利上昇は景気の回復を伴ったものだということで、金利上昇はいいと言っている。そして、雇用に対してこれからもサポートしていくということも伝えています。ということで、金利上昇が続くということが、確認できました。
次に、週末にバイデンさんの追加経済支援策、1.9兆ドルが紆余曲折ありましたが、ほぼ満額回答に近い形で、上院を通過しました。下院に戻され、恐らく無事に可決されますので、こういったことがプラスになってきます。
この経済政策は、元々、法案としては通るだろうと言われていました。予想を大きく上回るような状況ではないのですが、これが実現してくると、企業業績や、個人消費、いろいろなものにプラス要因になります。
株価でいうと、EPSの上昇に寄与することが、期待できます。こちらは、経済対策=名目GDPの上昇が期待されていて、具体的には年初4.5%ぐらいの、今年のアメリカの経済成長率というのが、中心にありました。今は5.5%。人によっては、パウエル議長のように、今年6%にいくかもしれないとも言っています。強気の金融会社によっては、8%ということも出てきていますので、恐らく、5.5%~8%ぐらいまでのGDP、名目の成長率が実現できるかもしれない状況に、今近づいてきていることを、まず念頭においてください。
さて、冒頭にお伝えしたように、ここからが本題です。ナスダックや、SP500というのは、金利が上昇していて、経済支援策が通った状況において、どのくらいの価格が適切なのか、簡単にご説明します。
今のナスダック、SP500が適正な価格なのかということを、見ていきます。適正価格を判断するときには、一般的に機関投資家たちは、適正なPERはどうなのか、EPS、一株当たりの成長率がどうなるのかということを算出しながら、株価のレンジを決めて、そこにお金を投入します。
今現在は、今年の年初、株価に対してすごく強気な人が多い状況が続いていました。簡単に言うと、SP500に対しては、実質金利がマイナス1.1%、すごく低金利の状態だったので、22倍ぐらいのPERを期待している状況が続いていました。同じく、ナスダックもマイナス1.1%ぐらいの実質金利だったときには、32倍ぐらいのPERを期待していました。
ただし、今は全体がマイナス0.6%ぐらいまで、実質金利が上がってきている状態なので、SP500ではおよそ20倍、ナスダックに関しては、28倍まで期待が下がってきている状況です。そのことが原因となって、少し株価が重たくなってきていると思ってください。
もし、先ほど見てもらったように、イエレン長官も、パウエル議長も金利上昇自体を容認したとして、10年の金利がグイグイ上がっていく、1.6%~2%に上がっていくようなことがあれば、実質金利が0%に近づいていきます。そうなってくると、より期待されるPERは低下することになります。もし実質金利が0%になると、今、10年物価が2.2%なので、もし10年の金利が2.2%に近づいてくることがあると、PERはSP500が18倍、ナスダックが24倍までさらに低下すると言われています。
そういったことで、今後金利が上がってくると、期待PERがどんどん下がってくるということで、株価の水準が下がってくるというのが、背景になっています。
一方で、こちらに書いてあるように、EPSは各年度によって、上がっていくことが想定されています。例えばナスダックであれば、21年は400ポイントなのですが、22年は480ポイント、23年は545ポイント。すごく上昇しています。こういった状況があるので、株価は先行きが明るいことは間違いないです。
さらに、今回経済支援策1.9兆ドルの支援が入ったということで、この経済支援は、名目GDPの押し上げになります。仮に、2~3%の押し上げ効果があるとした場合、そのときは1株当たりのEPSのプラス寄与度が、5%~10%あると言われています。今回の1.9兆ドルの財政支援策が通れば、EPSが、さらに5%~10%上昇することが期待できると言われています。
市場関係者はPER、金利の低下自体は織り込んでいっているけれども、その-部分を今回の1.9兆ドルの経済支援策、EPS上昇の想定プラスアルファで補っていけるかどうかを、見ています。
例えば、ナスダックを例に取ってみると、年初は32倍のPERが正当化されていました。2021年の1株当たりのEPSは400ポイントでしたので、恐らく、12,800ポイントが底値となり、そして、22年の480ポイントまで上がっていくことを想定すると、株価としては15,360ポイントまで上がっていくのではないかという、期待がありました。
つまり、年初のPER32倍と、EPSを前提にすると、ナスダックの適性は上が15,360、下が12,800というレンジだったのです。年初に12,600ポイントでスタートしたナスダックは、2月12日に最高値、14,000までぐっと上がっていって、さらに15,000を目指す展開があった。その中で金利がドンと上がり、期待PERが下がったことで、株価の水準が下がってきたと言われています。
では、今の適性はどうなのか。今の実質金利マイナス0.6%では、PER28倍まで下がってきます。28倍に対して、EPS400をかけると、11,200ポイント。そして、もし年末に向かって22年のEPSを取り込んでいった場合は、13,440ポイントになります。上限が13,440ポイントで、下が11,200ポイントまで下がってきた状態になっています。
今の12,920ポイントから考えると、上の方が少なく、ナスダックが下がるだろうということが、市場のコンセンサスになっています。今後金利が上がっていく状態が続けば、より株を売ってこようという向きが、強くなるバリエーションになっているかと思われます。
ただし、1.9兆ドルの支援策を提供したことによって、EPSの上昇も加味されてきます。そうなってくると、実際には28倍、今の金利水準で考えた場合、レンジはどうなるかというと、下が12,300ポイントぐらい、上が14,500ポイントぐらい。今が12,900ポイントぐらいなので、上にも下にも行きやすいとして、レンジ幅の期待値が、少し上がってきている状況です。
ということで、簡単にまとめますと、年初32倍あったPERが、28倍になり、今後金利が上がってくると、さらに下がる状況になるので、株価は下がりやすいモーメンタムが続いています。一方で、1.9兆ドルの支援策によって、EPSの上昇は、少しプラスになるということになっています。
今の金利が続くのであれば、12,900ポイントというナスダックの指標は、ちょうど中間地になるので、上にも下にもいける状況になっています。ただし、今後金利が上がってくる状況が続けば、当然ながらレンジがさらに下がるので、上値が重くなってくるということで、今後引き続き金利を中心としたマーケットであることは間違いありません。また、そこに影響を与えるインフレ、テーパリングの開始、政策金利の引き上げということも、ポイントが集まってきます。
最近、忘れられているところでは、法人税の増税ということは、1株当たりの利益に対するマイナスインパクトが結構大きいです。この話が出てくると、さらにEPSも低下します。1.9兆ドルのプラスを削るぐらい、マイナスになってくることも考えられるので、上値はまだ重たいということを念頭に持ちましょう。
ただし、金利が落ち着いて来れば、株価は元の状態にいくでしょうし、金利が上がっていくことを放置すれば、株が重たくなってくる構造は、先週一週間たっても、まだ変わっていないことが分かりました。引き続き、注意深くマーケットを見ていただければと思います。
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