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皆さんこんにちは。ファミリーオフィスドットコムです。本日は、5月10日月曜日。今週のマーケット見通しをお伝えします。
金曜日に発表された4月雇用統計が大減速しました。予想を大きく下回る内容になりました。この雇用統計に市場の注目が集まっていますが、実際には先週、非常に多くのマーケットにインパクトを与える材料がありました。例えば、イエレン財務長官の発言や、ダラス連銀カプラン総裁の発言。それ以外にも、FRBがリスクに関する警鐘を鳴らしたというニュースもありました。雇用統計も含め、大きな3点についてしっかりと分析していきたいと思います。
また、マーケットの反応と、市場に関係するコメントから見て、内容をミスリードしているのではないかと思うことがあります。今後の影響を踏まえ、今後の見通しをお伝えしたいと思います。
一つ目のポイントです。3日にイエレン財務長官が「追加的な歳出で米経済が過熱しないよう、金利は幾分か上昇する必要がある」とコメントしました。その結果、金利上昇に弱いナスダックが、一時期大きく下落する局面がありましたが、6時間後に火消発言を行う形で、周りのFRB関係者が否定しています。
その3日後、ダラス連銀カプラン総裁が「テーパリングについて早急に議論を開始したい」と発言しています。
このように、二つの出口戦略に関するコメントがありました。マーケット関係者は、元FRB議長や元々FRB投票権を持っていた人物のこのようなコメントから、いよいよ出口戦略に向かい、金利が上昇するのではないかと予測しました。ですが、実際には金利は上昇せずとなっています。
この事実を見たとき、マーケットの鉄則として考えたことは、「金融政策において緩和を行う場合には、サプライズで起こし、一方で、金融政策における引き締めは、事前に、なるべく丁寧に織り込んでいき、マーケットとの対話を行う」ということです。
対話をしながら、しっかりと今後利上げは行う、もしくはテーパリングの縮小を丁寧に行うというのが、コンセンサスになっています。そういった観点から、今回、地ならし役をイエレン元FRB議長(現財務長官)が行っていて、それを援護射撃するようにカプラン総裁が発言したのではないかと、マーケットは捉えています。そして、その地ならしを行い、FRB関係者はそれに対するマーケットの反応を見たかったというのが、一般的に捉えられがちな内容です。
しかし、改めて考えてみると、イエレン元議長は、そもそも金利を上げる権限を持っていないですし、そういった発言をすべきではない立場です。元FRB議長がそんな発言をすれば、パウエル現議長に迷惑ということは百も承知の上で言っているということになります。ですから、イエレン財務長官が地ならしに協力するというのは、解釈とて極端なのではないかと思っています。
さらに、カプラン総裁は今回、FRBでの投票権を持っていません。2020年は持っていましたが、今回は持っていない年度ですので、どのような発言をしても、今後の金融政策には関係ありません。
しかし、実はカプラン総裁の過去の発言を調べると、そもそも、今年1月、4月にテーパリングについて言及しているので、この意見は今に始まったものではありません。実は、イエレン長官の発言と、事を同じくしたことによって大きく取り上げられていますが、いつも言っていることと同じであると言えます。
ということは、今回のイエレン長官の発言とカプラン総裁の発言は、地ならしというわけではなく、偶然が時期が重なったのだと考えられます。
では、なぜイエレンさんがそういうことを言ったのか。それを考えるには、就任時から指摘されていたことにさかのぼる必要があります。
今、ドルインデックスが90を割り込む水準まで低下しています。これは昨年や2018年、ドルインデックスのボトムと言われている水準を割り込むレベルまでドルの価値が下がっているということを意味しています。つまり、アメリカが今回の経済対策でお金を大量に刷ったことにより、ドルの価値が徐々に失われてきているといえます。
ドル円で見ると、108円~109円台ですので、一時期よりも円安ドル高が進んでいる影響で、みなさんにはドルが安くなっているというイメージを持つ方は少ないかもしれません。ですが、日本円を含む外貨と比較した場合のドルの価値(ドルインデックス)は、確実に下がった状態が続いています。
イエレン長官は、今、財務長官です。国債を発行して、順調に消化してもらって、国の財政を支えることが主な目的です。その中で、ドルがどんどん下がってくれば、海外の投資家からアメリカ国債を買ってもらうモチベーションが下がり、将来に対するドル安の不安、投資した米国債券の運用損の不安が増長します。そのことから、今後極端なドル安をどうにか防ぎたいという思いがあるのです。
イエレンさんが就任したときから、90年代にクリントン政権を財務長官としお手支え天才と言われたローレンス・サマーズ元長官はイエレンさんに対して「財務長官に就任したのであれば、ドル高を推進しなければいつか調達に困難をきたす」、つまり、ドル高を推進しドル安は目指してはいけないと言っていたのです。
イエレン長官が今、この発言をしたのは、金利が少しでも上がることを匂わせ伝えていけば、ドル高に基調が戻って、国債の調達に支障が無いと考えたからではないかと思うのです。
ですから、今回は、元FRB議長としての発言というより、現財務長官として必死にお金を調達するための発言だったと言えるのではないかと思います。
今週11~13日に3年・10年・30年ものの国債入札があります。この調達に失敗すると、また大きく金利が上がるきっかけになります。金利が大きく上がってしまうと、今度は調達コストに対する支障が出てきてしまうでの、ドルを高い基調に戻したいと考え、金利について言及したのではないかと思います。
ここから、財務省としては基本的にドルを少し上げていきたいという思いを持っているので、ドル円では、ドルが少し強くなる可能性があると考えられます。また、金利が上がることに関して、イエレンさんもパウエルさんも容認することが改めて確認できました。そのことから、状況によっては今後、金利が上がりやすい状況になってくるでしょう。
二つ目のポイントです。6日、続けて二つの発言がありました。一つは、4月に就任したSEC(証券取引委員会)のゲンスラー委員長による、仮想通貨、その他の投資に対する規制強化についての言及です。
次に、二つ目は、同じく6日、FRBは金融安定性報告(FSR)というレポートの中で、リスク資産の評価が高くなっていて、価格急落につながるかもしれないと述べています。
今回のSECの言及やFRBのフロス状態への発言から、先ほどの地ならしとは違い、実際にマーケットで確認できるフロスや、マーケットに見えるバブルの兆候をどうにか取り崩したいと考え始めていることが分かります。
金融政策を低金利政策であり、緩和的に続けざるを得ない状況で、これは仕方が無いとみんな思っています。
一方で、反作用としてマーケットにフロスやバブルの兆候があることは、SECもFRBもともに認識しているということです。つまり、私たちが感じている、少しバブルなのではないかという兆候は、当局も感じていることが読み取れます。
SECがゲンスラー委員長を4月に委員長に就任させたことは、SECがフロスがバブルになってはじけないよう規制を強めていくことを、マーケットに対するメッセージとして送っていることは間違いありません。個人投資家に対するレバレッジ規制や、仮想通貨に対する規制がこれから導入されても、全く違和感の無い委員長の就任だと言えます。
そして、この委員長は、民主党急進左派のエリザベス・ウォーレンとネットワークが深いと言われています。格差を埋める思いが強い、つまり、富裕層からお金を取って、それを再分配することを推進したいと思っている方と関係が深いということは、これから起こってくる規制も、当然その流れをくむ可能性があります。ということで、マーケットの緊張感が少し高まっていることを、認識してください。
そして、FRBの今回の責任者であるコメントから見ても分かる通り、マーケットがフロスとして認識していたものを、FRBも認めてきています。先週もパウエル議長が、フロスが見られるとFOMCの後にコメントしていますので、そういった流れを踏襲して、対応策を取ると言っています。内容を細かく見てみましょう。
バリエーションが高い、CLOはリスクがあると言っているのですが、この二つはマーケットにある程度委ねるしかありません。しかし、レバレッジに対する規制が必要だというニュアンスの発言から、この前のアルケゴスの問題も含めて、レバレッジへの規制が起こりやすいことが分かります。
このように、6日だけでSECとFRBからマーケットに対する規制が入りそうなニュアンスが強まってきました。今後、規制に対するニュースがいつ何時出てきても、おかしくないでしょう。きっかけはマーケットに大きな変更点を表します。ルールの変更こそ、マーケットに対して大きなインパクトがありますので、ここについては、いつ出てきてもおかしくないとの認識を持ってほしいと思います。
最後、三つ目です。雇用統計の内容です。驚かれた方も多いと思います。予想ではプラス100万人ぐらいかと言われていたものが、ふたを開けてみると26.6万人とかなり大きく減少しています。
失業率も5.8%ぐらいまで低下すると思っていたものが、6.1%まで戻ってきている状況です。黒人などの雇用についても、全く回復していないように、個別で見てもあまりいい内容は無かったというのが、一般的な報道のされ方になります。
正直に言いますと、雇用統計は大きくぶれが出るものです。2月・3月も大幅な修正が入っていることから、雇用統計の数字は常にぶれるものだとは、マーケットは認識しています。
その後、バイデン大統領が雇用統計の内容を受けて、講演会でコメントしています。すぐに結果が出るものではないので、今後4兆ドルの家族法案や米国雇用法案が必要だと、再三繰り返しています。
そもそも共和党は、失業給付が大きすぎる。週300ドルも配るのなら、会社に戻って仕事をしようとする気力が失せる。そういったことを続けるから、失業率がなかなか下がらないし、雇用が増えないとの指摘を、ずっと行っていました。今回のアメリカ雇用統計を見てみると、共和党の指摘通りになったと言われています。
ということは、一つ目のポイントとして、9月6日レイバー・デーに終了すると思われていた給付金が、悪い状態になれば、さらに延長になるかもしれないという、マーケットの若干の期待に対し、共和党が強烈に反対してくると考えられます。今回の、給付金を伴うような新たな経済対策は、民主党も出しにくくなります。9月以降はその効果が薄れてくると思ってください。
一方で、失業給付が無くなることによって、悪くなることも考えられます。それを補完するものとして、米国雇用法案や米国家族法案などの、4兆ドル規模の財政出動法案可決を急ぐ機運が高まるのも、間違いありません。
民主党の反対で失業給付を出さない代わりに、法案を通し、アメリカを強くしていこうという国民の後押しが出てくる可能性があります。共和党も、そこについては議論を進めていく可能性が出てきています。ですから、4兆ドルも実現できないと言われていましたが、もしかしたら実現性が高まってくるかもしれません。マーケットが考える以上に可能性が高まってきていることが、今回の注意点です。
既にバイデン大統領は講演会を通じて、28%まで増やすと言っていた法人税を、25%まで下げてもいいと言っています。妥協して、どうにかして4兆ドルを可決しようとしていると言われています。
そして、この雇用統計にはもう一つ大きなポイントがあります。モンタナ州におけるモデルが、注目されていることです。週300ドルの普及を頼り仕事に戻らない人に対し、違うモチベーションを与えようと、仕事に就いたときに特別ボーナスを出すことで、就業を促進しています。
今後、全州に及ぶかは分かりませんが、いろいろな州で採用されています。これにより雇用が伸びれば、今回の雇用トレンドは一過性のもので、今後雇用が進んでいくことは間違いありません。
さらに、今回の雇用が失業給付による、雇われる側のモチベーションだったことを考えれば、雇う方はまだまだ、雇用したいと考えていることになります。ここから、今後、雇用が落ち込むことは無いと言えます。そのため、雇用統計については、あまり心配の必要が無いでしょう。
一方で、雇用統計をきっかけにして、4兆ドル規模の法案が通りやすく、もしくは、通る流れができつつあるのではないかと考えるのが正しいです。
今週のまとめです。雇用統計の振れ幅は、元々大きなものになっています。単月で判断できるものではありませんが、企業側が雇用したいというモチベーションは変わりません。
失業給付が足かせになったのであれば、モンタナ州のように、就業によるボーナス給付で改善する可能性があります。来月以降も低い雇用統計が続くようであれば要注意ですが、続かない可能性が高いと考え、雇用はしっかりと進んでいくと考えるべきでしょう。そのため、雇用統計を材料にした売りは、無いと考えています。
一方、これをきっかけとして、新しい経済支援策を通そうという意欲が、民主党の中で強まっていて、共和党もある程度の妥協が出てくる可能性があります。今週12日、バイデン大統領は民主、共和両党のトップに対して今後の法案の在り方について説明します。そこでうまく話が折り合えば、今後マーケットがプラスになる可能性があります。
マーケットには金融緩和が続くというニュアンスと、財政法案が通るかもしれないというニュアンスの両方が見えています。さらに、雇用統計が思ったほど悪くないという三つの内容から、今週はリスクオンになる可能性が高いと推測しています。
この流れはある程度続く可能性がありますが、先ほど言ったように、SECもFRBも共に、フロスやレバレッジに対する規制の意欲が、すごく強くなっています。間違いなく、局地的にバブルが起こっていることを、当局者は認識しています。
この認識に対する対策がいつ出てくるかは、分かりません。リスクオンの状態が続く中で、突発的に出てくる可能性があるというのが、一つ目の問題点です。
そして、二つ目の問題点は、イエレン長官が意図しているように、金利を少し上げることでドルを強くしたいという意向が財務省にある場合、もしかしたら共通認識になる可能性があります。
金利が上がることに対し、ハイテク株が嫌気を示す2月のような状況になることも、十分に考えられます。リスクオンとはいえ、そういった要因がまだまだ存在しているということを認識して、マーケットに向かっていただければと思います。
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