近年、日本企業の株主構成が変化し、外国人投資家の保有比率が増加傾向にある中で、企業に積極的に意見を述べるアクティビストの存在感が高まっています。アクティビストは、企業の経営方針や資本政策に対して提言を行い、企業価値の向上を目指しますが、その是非については意見が分かれるところです。本記事では、アクティビストの戦略や日本での活動の背景、株主総会における役割、そして企業がアクティビストとどのように向き合うべきか、さらにはアクティビストが狙う銘柄の特徴と対策について解説します。
アクティビストとは
アクティビストとは、株主の立場から企業経営に積極的に関与し、企業価値の向上を目指す投資家のことを指します。一般的に、アクティビストは上場企業の株式を一定程度保有し、株主としての権利を行使して経営陣に対して様々な要求や提案を行います。
アクティビストの主な戦略としては、以下のようなものが挙げられます。
1. 経営陣との対話(エンゲージメント)
2. 株主提案の実施
3. 委任状合戦の実施
4. 社外取締役の選任
5. M&Aの提案
6. 自社株買いや増配の要求
これらの手段を通じて、アクティビストは企業の資本効率の改善、コーポレートガバナンスの強化、事業ポートフォリオの見直しなどを求めます。
日本でアクティビストの活動が活発化している理由
2000年代に村上ファンドが株の買い占めやM&Aを積極的に仕掛け、株主提案で話題になりましたが、2006年に村上氏がインサイダー取引で逮捕・有罪判決を受け、その後、リーマン・ショックを経て、アクティビストの活動は低調になりました。
しかし、2012年の第2次安倍内閣の「アベノミクス」をきっかけに、日本企業の生産性の低さ(株式持ち合い、内部留保、不透明なガバナンスなど)が問題視され、海外アクティビストが日本に注目し、企業改革を進めるための施策が相次いで導入されました。
そして、アクティビストの影響力は、近年のコーポレートガバナンス改革の流れもあり、着実に高まっています。実際に、ファナックやソニー、任天堂など日本の有名企業でも、アクティビストからの要求を受けて、自社株買いや事業売却、社外取締役の選任などが行われています。
企業の株主対応支援を専門とするアイ・アールジャパンホールディングスの調査によると、2023年に日本で活動するアクティビストの数は70に達し、過去最高を記録しました。この数字は、5年前と比べて3倍に増加しています。
近年、日本企業の株主構成が変化し、外国人投資家の保有比率は増加傾向です。これに伴い、株主の権利意識が高まり、企業に対して積極的に意見を述べるアクティビストが増えています。アクティビストは、企業の経営方針や資本政策に対して提言を行い、企業価値の向上を目指します。
企業にとって、アクティビストへの対応は重要な課題です。建設的な対話を通じて、株主との信頼関係を構築し、長期的な企業価値の向上につなげていくことが求められます。
一方で、アクティビストの提案が必ずしも企業価値の向上につながるとは限らないという指摘もあり、その是非については意見が分かれるところです。
株主総会とアクティビスト
アクティビストにとって、株主総会は重要な場です。株主総会では、取締役の選任や定款変更など、会社の方針に関する重要事項が決議されます。アクティビストは、自らの議決権を行使するだけでなく、委任状合戦などを通じて他の株主の議決権の取り付けを図ることもあります。近年では、インターネットを通じた議決権行使の普及により、アクティビストが株主総会に与える影響力はさらに高まっているといえるでしょう。
企業としては、アクティビストへの対応を事前に準備しておくことが肝要です。アクティビストの動向を注視し、必要に応じて対話を行うことで、不測の事態を避けることができます。また、平時からコーポレートガバナンスの強化に努め、資本効率を高めておくことも重要です。
アクティビストは、今後も日本の企業社会において重要な役割を果たしていくことが予想されます。企業はアクティビストとの建設的な対話を通じて、企業価値の向上を目指していく必要があるでしょう。
アクティビストが狙う銘柄の特徴と対策

アクティビスト投資家が狙う銘柄の共通点や特徴としては以下のようなものが挙げられます。
1. PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回るなど、資産価値に比べて株価が割安
2. ROE(自己資本利益率)が低く、収益性改善の余地がある
3. 手元資金が潤沢にあるにも関わらず、株主還元に消極的
4. コーポレートガバナンスに課題があり、経営の規律が必要な企業
5. 事業ポートフォリオの見直しや、非中核事業の売却等で企業価値向上が見込める企業
自分が保有する銘柄がアクティビストに保有された場合の対応は、一概には言えません。アクティビストの目的や要求内容、企業側の反応などを見極める必要があります。
アクティビストの提案に企業側が前向きに取り組み、建設的な対話が行われるようであれば、中長期的な企業価値向上や株主還元強化につながる可能性が高いでしょう。そのような場合は保有し続けることで、恩恵を享受できます。
一方で、アクティビストが短期的な利益のみを追求し、強引な手法で無理な要求をするケースもあります。企業側との対立が深刻化し、かえって企業価値を毀損するリスクもあるので注意が必要です。
いずれにせよ、アクティビストの登場をきっかけに株価が上昇した局面では、利益確定売りを検討するのも一つの選択肢になります。難しい判断が求められる局面ではありますが、アクティビストと企業側双方の主張をよく吟味し、自身の投資方針とも照らし合わせながら、冷静に対応していくことが大切です。
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