【米国株】今週の注目材料、企業業績と長期金利、そして需給環境を現状分析【10/15 マーケット見通し】

【米国株】今週の注目材料、企業業績と長期金利、そして需給環境を現状分析【10/15 マーケット見通し】

本日のテーマは『米国株今週の注目材料 企業業績と長期金利そして需給環境!』です。

アメリカの大統領選挙を3週間後に控え、マーケットとしては少し動きが緩慢になっています。ただ、企業業績の発表は今週から本格化しますし、一時期は3.6%まで下がっていた長期金利も4%を超えてきています。需給環境も以前より変わってきていますので、現在の環境がどうなっているかを分析したいと思います。ぜひ最後までご覧ください。

いよいよ7~9月期の企業決算スタート

今週から7~9月期の企業決算が本格化

まずは企業業績です。決算発表初日の11日、米大手金融機関の内容は非常に良好でした。今週、来週にも多くの企業が決算発表を控えています。

左のチャートはファクトセットのデータ、S&P500採用銘柄7~9月期の一株当たり利益の前年比増益率を示しています。7月末時点、7~9月期の決算発表は前年比+6.3%と予想されていましたが、8月末に+5.2%、9月末で+4.4%、10月11日時点で+4.1%まで低下しています。

ただし重要なのは、アメリカの決算発表では時間の経過と共に70%~80%の企業が上方修正を出すことです。来週以降は前期比の利益率が4.1%から徐々に上方修正されることでしょう。

もし上方修正されなければ、これはサプライズとなります。そのため、予想増益率が今週、来週で上方修正されるかの確認が1つ目のポイントとなります。

2つ目のポイントです。今後の2025年予想EPSは、2024年の10ヶ月間を反映したものとなり、25年予想がどうなるかは非常に重要なポイントとなります。2025年度業績見通しでネガティブなコメントが続かなければ、もし今期が予想通り4.1%程度であったとしても、株価は上昇する可能性が高いです。その理由はなぜでしょうか。

右のチャートをご覧ください。今後の見通しを表す緑の棒グラフを見ると、大きく上昇することを前提に、前年比で10%程度上昇する見通しです。ここが崩れない限り、株価に下押しはなかなか起きません。こちらが決算の見方ということを念頭にご確認いただければと思います。

ハイイールド債のスプレッドは縮小

次にハイイールド債券のスプレッドを確認します。炭鉱のカナリアとして以前からご紹介しているこちら、青がハイイールド債のスプレッド、S&P500が黄色のチャートです。現在の水準は2007年リーマン・ショックの直前の水準まで低下しています。ハイイールド債に資金が向かっているのは、現時点で企業におけるクレジット状況には問題がないとして、投資家が多く資金を入れていることがわかりました。

業績面では今のところ問題なく、クレジットの観点でも企業に対する信用不安も問題視されていません。その意味では株価が伸びやすい状況と言えます。

ただ、ここまでスプレッドが縮小している理由はもう1つ考えられます。こちらについては後ほどご説明します。

長期金利の動向

原油価格上昇が続けば金利が上昇する可能性も

原油価格が米金利状況に大きく影響を与えるため、ここからは金利について触れたいと思います。左の図表、黄色で示した米10年期待インフレ率、紫の原油価格が23年以降同じような動きで上昇しています。ですから、中東情勢の不安定さによる原油価格上昇が続くようであれば、10年期待インフレ率も上昇すると想定されます。現状は原価が上がると想定し、インフレ率が上がっています。

このことがどう影響するのでしょうか。右のチャートをご覧ください。紫のチャートが期待インフレ率、黄色が10年金利ですが、こちらも23年以降同じような動きをしています。期待インフレ率が上昇すれば10年金利も上昇するのです。原油価格が上がると10年金利も上がる可能性があるため、中東情勢の不安定さが続くようであれば10年金利が今後上がる可能性があるというのが1つ目のポイントです。

大統領選挙の見通しが金利に影響

大統領選挙も金利に影響を与えていると言われています。先週からトリプルレッド(大統領、上下院の全てを共和党が占める状態)の可能性が意識されています。そうなればねじれ国会ではなくなりますから、トランプ政権の法案が通りやすくなります。日経新聞等の記事によると、トランプ氏の減税公約を実行すれば、財政赤字は1,100兆円増となると紹介されています。そうなればアメリカの長期金利上昇、場合によっては格下げリスクも浮上してきます。今後の選挙結果が米長期金利に大きく影響を与えることが懸念されているのです。

右下のチャートをご覧ください。赤が共和党、青が民主党です。一時期、ハリス大統領候補が出て以降民主党がリードしていましたが、ここ最近のハリケーンへの対応から共和党の方がいいのではと認識され、共和党支持が逆転しました。もちろん様々な分析結果があり、どうなるかは一概には言えません。ただ、今考えるべきはトリプルレッドになった場合どうなるかです。

そこで右のチャートでは、前回トランプ大統領が当選時の10年金利、ハイイールド債券のスプレッドを示しました。2015年~2016年の大統領選挙では、選挙前の10月、景気拡大を示す経済指標を受けて10月初旬に1.6%強だった金利が、月末には1.8%まで上昇しました。

その後、大統領にトランプ氏が就任することが決まり、トリプルレッドとなった際には投票日の11月9日に利回りは大きく上昇し、一気に2%まで長期金利が上昇しています。トランプ氏の考える財政支出の拡大、減税が進むとの思惑が高まったためだと言われています。

今回も巨額の債務残高、金融緩和縮小に大型減税が揃えば、金利上昇の完璧な環境が整うとの指摘もあり、前回同様10年金利が大きく上昇する可能性があります。原油動向、大統領選挙の動向から考えると、今後は金利が大きく上昇する可能性があるのです。

ただ、それに加えて今回は利下げもあります。一概に金利上昇するわけではないのですが、目先の中東情勢悪化もあり、大統領選挙の結果が出るまでは金利が上昇する可能性があるというのが1つのポイントとなるでしょう。

ただし、2016年の金利上昇時には米国株が大幅高となっており、マイナスの影響を受けていないことを忘れてはなりません。

中銀の政策とバリュエーションへの影響も

このことがどう影響するのでしょうか。左のグラフをご覧ください。これは、これから30日間でアメリカの株式市場に何がプラスとなるのか、マイナスとなるのかを調査したものです。最も投資家が期待しているのは、ここから1ヶ月のFRBの緩和的金融政策です。ただ、原油価格が上昇し、トリプルレッドの可能性が出てくると景況感が良くなる可能性があります。そのため、なかなか利下げできないと考えられるようになると、期待が剥がれる可能性が出てきます。

一方、株価に対してネガティブなインパクトがあると考えられているのはバリュエーションです。バリュエーションにはやや警戒感があり、利下げできないとなればバリュエーションに対する意識が強くなると、様々なアンケートからは確認されています。

では、今のバリュエーションはどうでしょうか。右のチャートをご覧ください。赤いチャートはS&P500の推移です。青のチャートは3つあり、上からPER20倍、15倍、10倍のレンジにどう収まってるかを示しています。

現在はPER21.6倍ですが、過去の事例では20倍を超えると後ほど調整が入っています。バリュエーションに警戒感を持っている投資家は、FRBの利下げがあまり行われない場合、バリュエーション調整が起こることを警戒していることは把握いただければと思います。

今の21.6倍が高い水準かどうかよりも、今後の需給環境が動く可能性があることは把握しておく必要があるでしょう。

米国株式市場の需給環境

需給環境はやや過熱状態

最後に需給関係を2つ確認します。1つ目はAAII全米個人投資家協会のセンチメント調査です。紫がS&P500、黄色がAAII全米個人投資家協会のセンチメント、AAIIが低い水準(弱気の割合が少ない状況)だとわかります。

一方、AAIIの上昇は弱気の割合増加を示しますが、これは逆張り指標として知られています。ですから弱気が少ない状態の後には、S&P500が調整する傾向が非常に強いのです。これだけ強気の方が増えると、今後調整が起こってもおかしくない需給環境だと言えます。

Fear and Greed Index

次にCNNのFear and Greed Indexです。青が75%を超えている箇所は、強気が多くなっていることを表します。その後はすぐのタイミングではありませんが、S&P500の赤いチャートが下落するというのが過去の傾向です。

CNN調査、個人投資家協会の調査、いずれもかなり強気筋が増えてきており、シナリオが少しでも変われば調整が起こりやすい環境と言えます。さらに大統領選挙を3週間後に控えていますから、マーケットは需給環境でも動きやすいことを把握しておく必要があるでしょう。

選挙後は株価が上がる傾向

最後に選挙後の株価が過去どうなっていたかを確認します。平均を表す緑のチャートを見ると、選挙後の株価は基本的に上がっています。次に民主党が勝った場合の青、共和党が勝った場合のオレンジを比較してみましょう。どちらの場合も上がっていますが、1年間単位で見ると民主党政権の方が上がりやすい傾向があります。一方で、短期的には共和党政権の方が上がっています。

ただ、注意すべきなのは、選挙前には下落する傾向があることです。今は下落しやすい環境で、需給環境もかなり悪くなってきていますから、ここから3週間は業績が仮に良くとも目先は注意が必要となるでしょう。

選挙後は上がっていく傾向がありますが、企業業績、金利動向、金融政策、マクロ経済の影響などを見ながら、冷静な判断が求められます。

最近はインフレがかなり改善されましたが、前回の雇用統計が本当に正しい数字かはやや難しいと指摘されています。そこも含めて、ぜひ冷静に分析していただければと思います。

今週以降も業績発表が続きます。金利も少し上がる傾向にあります。ただ、利下げ後は将来的に下がる傾向もありますので、一時的な要因なのか、それともずっと上がっていく要因なのかをしっかり分析する必要がありそうです。

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