金(ゴールド)と銀がともに高値を更新し、市場の注目を集めています。この記事では、金と銀の価格上昇を支える要因や今後の見通しについて解説します。
金の価格上昇の背景
現在、ドル建てと円建ての金価格はともに史上最高値を更新しています。この背景には、中東情勢の緊張と不透明感が大きく影響しています。特にイスラエルと親イラン組織ヒズボラとの緊張が高まっていることなどから、安全資産である金の需要を押し上げているのです。
また、大統領選挙も金価格に大きく影響を与えています。現時点では、接戦による不透明感で金価格が上昇しているという側面もありますが、それに加えて、トランプ大統領が就任した場合を先取りした動きともいえます。
前回、2017年1月20日にトランプ氏が合衆国大統領に就任した時、1年間の金価格は総じて堅調に推移しました。2017年1月20日の大統領就任当日は1オンス=1,204.90ドルでしたが、2018年1月22日時点で1,331.90ドルまで上昇し、10.5%もの値上がりになりました。またその期間中の最安値は2017年1月27日に付けた1,179.70ドル、最高値は2017年9月8日の1,362.40ドルとなり非常に安定していたことが、投資家心理に残っていることが背景といえます。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物は12月限で2,700ドル台後半まで上昇し、史上最高値を更新しました。国内でも金の小売価格は15,000円台に[耕山1] 達し、高値更新が続いています。投資家たちはこの状況下でリスク回避のために金を購入し、価格の上昇を支えています。
金価格の上昇には、米連邦準備制度(FRB)による利下げ期待も影響しています。低金利政策が続く中、無利子で保持できる金は魅力的な投資対象となり、さらなる買いが進んでいるのです。
銀価格の動向とその背景
銀価格も上昇傾向にあり、ニューヨーク先物市場では12年ぶりの高値を更新しました。銀の価格上昇には、金と同様に地政学的リスクに対する安全資産としての側面があり、さらに産業用途での需要も背景にあります。特に銀は太陽光発電パネルの電極として使用されるため、再生可能エネルギーの普及とともに需要が増加しています。
中国は主要な銀消費国であり、その景気動向も銀相場に大きく影響を与えます。最近では、中国の太陽光発電需要の拡大に伴い、銀の需要も高まりつつあります。また、銀ETF(上場投資信託)を通じた投資も増加しており、これが価格上昇の一因となっています。
金と銀の今後の見通し
今後も金と銀の価格動向には注目が集まります。中東情勢や米大統領選の行方次第で、安全資産としての需要がさらに高まる可能性があります。一方で、金価格は既に高値圏にあるため、利益確定の売りや米国債利回りの上昇が価格を一時的に抑制する可能性もあります。また、ここ数ヶ月は、各中銀の購入額も減速しており、その理由は、金価格が高値を更新していることが理由ではないかとされています。今後、金価格を押し上げる要因はE T Fへの資金流入になりますが、これは米金利動向次第といえますので、大統領選挙の結果次第となります。
銀に関しては、金と比べて割安感があり、特に投機的な買いが入りやすい状況です。しかし、銀は値動きが軽く、中国の景気悪化などのネガティブ要因が出た場合には急落するリスクも抱えています。投資家は、リスクとリターンを慎重に見極めることが重要です。
まとめ
金と銀はともに高値を更新し、地政学的リスクや産業需要を背景に今後も注目が続くでしょう。ただし、高値圏にあることから、金利動向次第では調整リスクも念頭に置く必要がありそうです。