本日取り上げる投資信託は、アセットマネジメントOneの「One株式オープン」です。こちらは老舗の日本株投信で、2000年からスタートしていますが、ここ最近注目を集めてるようです。注目を集めている理由とパフォーマンスを分析したいと思います。。
お願い
この記事は情報の提供を目的としたものであって、投資の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。また、信頼できる情報を集めているつもりですが、その正確性を保証するものではございません。さらに、今回取り上げた投資信託も、これから取り上げる投資信託も、運用会社や販売会社と当社の間で、業務提携等は一切ございません。あくまでもランダムに抽出して、中立的な立場で評価・分析をしています。
概要
投資信託の特徴
それでは中身に移ります。今回取り上げるのはOne国内株オープンで、愛称としては『自由演技』として知られています。こちらは国内の大型株式を集めたもので、アセットマネジメントOneが運用しています。
NISAの成長枠対象で、信託報酬は1.76%と、国内の大型株にしてはやや高めの印象があります。純資産価格は473億円と、そこまで大きくない2000年に設立された運用歴の長い老舗ファンドとなります。
投資対象が日本株という以外は、運用手法や投資方針など、そのときのマーケットの動きに合わせて柔軟に変更するということで、『自由演技』となっているそうです。『自由演技』の効果かは後ほど説明しますが、こういったところが、『自由演技』の強みであり、注目を集めている理由だと思います。
純資産価格は473億円と、そこまで大きなファンドではないですが、最近急激にちょっと残高を伸ばしていることで注目を集めています。
パフォーマンス
では、簡単にパフォーマンスを確認します。老舗ファンドで10年以上の実績がありますが、10年間の年率リターンでは13.76%ということで、同カテゴリーの国内大型株の平均8.6%を、+5.16%も上回っているのが長期パフォーマンスです。ただ、単年度ではマイナスと、カテゴリーよりも少し低調な成果になっていることは注意が必要かと思います。
1年間の値動きを表した標準偏差、リスクは国内大型株の平均が±15.7%に対して、±15.62%ということで、ほぼ同じです。
リスクは抑えつつ、基本的には高いパフォーマンスを目指していることが分かります。10年のシャープレシオは0.88ですから、比較的優秀なファンドということがわかります。
投資信託の投資戦略
投資信託の投資戦略
投資信託の投資戦略を目論見書から抽出しました。最近なぜこのファンドに人気があるか。先ほどまでのパフォーマンスを見ても、そこまでずば抜けたパフォーマンスというわけではないように映るかと思いますが、投資戦略に人気が集まってる理由があると思います。
まずはマクロの経済環境の変化に応じて、投資スタイルを適宜変更するとしています。このように適宜投資スタイルを変更するというのは、まさにアクティブファンドらしいところが出ています。
ほとんどのファンドが通貨動向、景気指標を見ながら、マクロ分析での判断を行っているわけですが、このファンドは投資環境の変化に応じて、グロース系バリュー系と言われる成長株、割安株にも変化を持たせて対応します。また、大型や中小型株も変えることで、その局面において最適と思える投資スタイルに変更するとしています。
成長株、割安株と銘を打った投資信託は、なかなかスタイルを変えにくいですが、柔軟に対応するとしているところが一番特徴ではだと思っています。他のファンドでは、意外とできていないところが多いことから最近人気となっています。
パフォーマンス分析
では、パフォーマンスを分析していきましょう。ファンドの運用状況を見ると、組み入れ銘柄は約200と分散されています。日経225、TOPIXと比べてると少ないですが、それでも数は多く、少し分散されているイメージがあります。
組み入れ上位を見ても、トヨタやソニーや三菱UFJなど、日本を代表する銘柄が並んでいます。一見するとTOPIXとほぼ同じ動きをしそうですが、過去のパフォーマンスではそうではありません。
結論から申し上げますと、中長期で見て市場平均を大きく上回る成果が出ていることがわかりました。具体的には過去3年の騰落率で、ファンドは44%のリターンがあるにも関わらず、市場平均は35%。8.9%もオーバーパフォームしています。また、過去5年間では、市場平均に対して30%を上回っています。
黄色のチャートが日経平均、赤いチャートがファンドのパフォーマンスですが、30%を上回っている状況です。まず日経平均を上回っていて、TOPIXのスモールに対しても上回っています。
NT倍率(日経平均÷TOPIXの倍率)が、この5年間で13.2~14.3倍に推移しているため、日経平均対TOPIXでは、日経平均が上回ってる状況です。
黄色いチャートの日経平均をファンドが上回っているということは、このファンドはTOPIXについてはさらに上回っていることとなります。ここ5年間では、非常に良いパフォーマンスだったと言えます。
3年に関しても、パフォーマンスが良いことがわかりました。
大型株という括り(カテゴリー)では、パフォーマンスがあまりないように見えても、確実にベンチマークを上回っていることがわかりました。細かく分析すると、パフォーマンスが良いことが改めて確認できます。
資金流出入
次に、資金流入を確認します。23年は資金流入が上に棒グラフが伸びるますが、このファンドは非常に資金流入が増えています。19年、20年はコロナショックなどもありお金が流出しがちでしたが、22年~23年にかけて約2年間、かなりの流入がありました。これは市場リターンを上回る成果があったからだと言えます。
投資の検討ポイント
パフォーマンスが高い要因
では、なぜパフォーマンス良いかです。ここで、スタイルリスクというあまり聞きなれない言葉が出てきています。スタイルリスクへの対応が秀逸だということで、お伝えしたいと思います。
ここには載せていませんが、23年の運用報告書を確認しますと、「基本的には大型株をコアで保有する一方で、中小型株の組み入れは限定的としました。しかし、株式市場全体が上昇した2023年の4-6期において、外国人投資家の買い物色なった大型株に対して、中小型株の上昇幅が限定的だったことを受けて、期末にかけて大型株から中小型株へのウェイトシフトを行いました。同時にバリューとグロースにおいても、スタイルリスクを限定的に留めていましたが、少しグロース色を強めました」との記述がありました。
簡単にご説明します。このファンドは通常、大型株を中心に保有しています。中小型株の保有は限定的とすることが基本方針なものの、23年4-6期に外国人投資家が大型株を大幅に買い越したことでバリエーションが大幅に上昇したため、大型株が割高になりました。一方で、中小型株は割安で放置されていると判断し、23年の期末にかけて、大型から小型にウェイトを大きくシフトした、つまり、割安で放置された方に資金を振り分けました。大型、中小型にこだわることなく、割安なものにお金を振り分けたそうです。また、バリューとグロースにおいても、グロースが伸びるだろうと判断しグロースの割合を増やしました。
スタイルリスクを限定させる秀逸ファンド
スタイルリスクとは、ファンドが大型、小型、中小型株にこだわらなければならない、また、バリューやグロースにこだわらなければならないことで、つまりスタイルにこだわらなければならないことで利益機会損失が生じることを言います。
運用報告書には、スタイルリスクにならないよう状況を見て投資方針を変えたと書かれています。このようなファンドはかなり少なく、状況を見て、うまく対応を変えていることがわかります。
ここ2~3年の中小型株ファンドのパフォーマンスが良かったということで、大型から中小型株にお金を移せ、グロースにもお金を移せたタイミングの良さというのが、秀逸だとわかってきました。
こういったスタイルリスクを限定的に留めるスタイルは、アクティブファンドらしいということで評価を集めています。
このように分散投資をしつつも、大型、中小型株、もしくはバリューとグロースといった投資対象をうまく調整しながら、相場の動きを捉えていくことが得意なファンドのようです。
その結果、設定来でも市場平均を大きく上回っていて、ここ最近の純資産総額の伸びに繋がった印象があります。これを対象にする方はどういった方かといいますと、個人でスタイルリスクを限定的に留める、小型、中型、大型などの振り分け、バリューやグロースの振り分けが自分では難しい、コストを払ってでもファンドに任せたい方に適したアクティブファンドとの印象を持ちました。
評価
評価をお伝えします。評価は4.5ということで、かなり高い評価になりました。ここに書いてありますように純資産は少ないものの、スタイルリスクを限定した、アクティブファンドらしい投資信託という印象があります。
ということで今回は、アクティブファンドらしいファンドということでご紹介しました。スタイルリスクといい、自分が大型株、もしくは中小型株、バリューやグロースにこだわり続けることによって機会損失装置がないよう、流動的にマクロ状況を見ながら判断することを実践した結果、23年も非常に高いパフォーマンスが出ました。
NT倍率が上がっていく中で、日経平均を上回るパフォーマンスを残していることを考えますと、アクティブファンドらしいファンドです。興味のある方は、ぜひご自身でホームページや評価などいろいろなものを見ながら、最終的にご判断いただければと思います。
こういったアクティブファンドは、日本においてあまり多くありません。注目に値するファンドだと思います。