本日ご紹介する投資信託は、フィデリティ・米国優良株ファンドです。運用歴が25年を超え、まだ米国株が今ほどは注目されていなかった頃から運用されている老舗ファンドです。新NISAのスタートに伴い雑誌などの媒体で取り上げられる機会も多く、このファンドに興味を持っている方も多いでしょう。
そこで、本日はこちらの投資信託を取り上げました。どういったファンドか分析したいと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
お願い
最初にお願いです。この記事は、売買の推奨や勧誘を行うものではなく、当社が販売することもありません。皆さんが投資を行う際にはご自身でご判断いただきますようにお願いいたします。さらに、私たちが今回投資信託を選んだ背景は、あくまでもランダムに抽出して中立的な立場で分析を行っています。運用会社、販売会社と当社の間における業務提携等は一切ございません。
ファンド概要
概要
フィデリティ・米国優良株ファンドは、アメリカの株式を集めたものです。
NISAの成長投資枠、NISA積み立ての対象にもなっていることから、他と一線を画したファンドであることが分かります。信託報酬はあくまでアクティブファンドの同カテゴリーとして出ているものですが、同じカテゴリーでは低めとなっています。純資産価格は1000億超えです。大きめのファンドだと言えるでしょう。
このファンドが設立されたのは1998年で、25年を超えるファンドです。米国株の中で、様々な景気局面を生き抜いてきた大型優良株をセレクションしています。大型優良株といえば、短期的な相場サイクル、スタイルなどに左右されずに着実なリターンを生み出す企業、もしくはグローバルに展開することで分散された企業収益を有している株式のことです。ですから、仮に米国の景況感が悪化して、グローバルの経済成長が続く限りは利益を得ることができることを目的にしています。
世界の時価総額のかなりを占める米国株の中で、時価総額が大きい企業、企業規模の大きい銘柄に投資する大型優良株ファンドです。
S&P500や米国株のインデックス、パフォーマンスでどのように違いを出しているのでしょうか。
ウェルスアドバイザーのパフォーマンスを見ると、10年超の実績があります。10年の同じカテゴリーが+10.16%の年率リターンに対して+13.74%と、+3.58%上回っています。1年、3年、5年でみてもオーバーフォームしていることがわかります。この限りでは優秀なファンドに見えます。
さらに標準偏差(リスク)を見ても、カテゴリーが年間±19.93%に対して、±17.15%と低くなっています。リターンが高くリスクが低いファンドのようですから良いファンドのように見えます。
パフォーマンス詳細分析
次にパフォーマンスを確認します。2004年からのS&P500の円ベースと比較すると、当ファンドのリターンが+380%に対して、S&P500を円ベースのインデックスファンドは+640%ですから、明らかにインデックスファンドの方がいいと言えます。
過去3年間で見ても当ファンドが+80%に対して、S&P500の円換算リターンは+87%ということですから、こちらもアンダーフォームしていることが分かります。組み入れ銘柄を見ても上位は、Microsoft、Apple、NVIDIA、Amazon、Alphabetなどのアメリカ時価総額上位の銘柄がずらりと並んでいます。特にこだわったセレクションというよりも、大型優良株を選んでいる印象です。
投資の銘柄数は90と、S&P500に比べれば集中投資しているものの、3年でも10年でもパフォーマンスが上がっていないのではあまり集中投資の効果が出ていないことが分かります。
下のチャートは、3年間のパフォーマンスを表しています。赤がS&P500の円建て、eMAXISの米国株で、青が当該ファンドです。ご覧になってわかるように当該ファンドがアンダーパフォームしています。
短期的なパフォーマンスに限っては、市場平均とあまり変わりませんが、中長期で見ればパフォーマンスは良くありません。当ファンドでは、市場と差をつけることが難しそうに見えてきました。また、手数料を取る分だけパフォーマンスが劣っていると言えます。
前のページのウェルスアドバイザーのパフォーマンス一覧とは異なるパフォーマンス結果になっていますので、このように詳細な分析の必要があることが分かります。
パフォーマンス分析 資金流出入
資金の流入を見ると、22年も23年もプラスとなっています。積み立てNISAの対象であることも関係しているのでしょうか。もしくは、老舗ファンドだということもあり、人気化して資金が入ってきている可能性があります。しかし、冷静に分析すると、資金が入ってくるようなパフォーマンスではないにも関わらず、資金流入が確認できている状況でやや違和感を感じます。
ファンド評価
投資の検討ポイント
分析をしましたが、正直なところ特に突出した特徴はありませんでした。分析してみるとパフォーマンスは市場平均と比較しても良くありません。また、ここ数年間は、米国株が上昇基調であり、そこに円安が加わって80%の上昇となっていますが、ベンチマークのS&P500を上回ることができていない現実です。
株式市場の中で時価総額の多い主役銘柄は、その時期によって異なっています。このファンドはアクティブファンドのため、時代によってテーマが変われば、銘柄を入れ替えていると強調しています。月次報告書でも出ていましたが、2007年であればエクソンモービル、GEが主流だったことから、2020年にはApple、Microsoftなどに入れ替えてきたと強調されていました。
ただ、S&P500も当然ながら時価総額の変動に銘柄の上位は入れ替えがなされます。アクティブファンドだから入れ替えがあるということではありません。ポートフォリオは、非常に一般的に優良な銘柄が入っていることから、インデックスを上回ることはなかなか難しいと思われます。そのため、このファンドをアクティブファンドとして、あえて選択する必要はないように思います。
評価
最後に評価です。評価は星2つとさせていただきました。残念ながら、現時点ではインデックスファンドを超えるような特徴が見出せませんでした。過去10年においても、ここ3年においても、パフォーマンスとしてはインデックスを上回っていません。今は、インデックスファンドで低コストなファンドが数多くあります。それを超えてない以上は、アクティブファンドとしての期待はあまり持てないため、積み立てNISAであれ、成長投資枠であれ買えないため、評価が低くなりました。
フィデリティ・米国優良株ファンドは、25年を超える運用実績を持つ老舗ファンドです。年末年始多くの雑誌でも見かけますし、証券会社のWebサイト等でも多く取り上げられていた有名なファンドですが、パフォーマンスを見ると短期でも長期でもあまり特筆したパフォーマンスがなく、インデックスを下回るパフォーマンスとなっています。もし興味のある方は慎重に分析することをお勧めいたします。