VIDEO
超保守的な投資信託マラソン で配信中
本日分析する投資信託は、りそなワールド・リート・ファンドで、世界のリートへ投資するリートファンドです。りそなと名前に付いていますが、実際の運用指図はアメリカのリート大手企業が行っているファンドで、超過リターンはどの程度期待できるかを確認します。ぜひ最後までご覧ください。
お願い
最初にお願いです。この記事は情報提供を目的として作成されており、投資の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。最終的な判断は、ご自身で行っていただくようお願いします。
また、投資信託はランダムに抽出し、中立的な立場から分析を行っています。運用会社や販売会社との業務提携は一切ございません。
投資信託概要
概要
まずは概要です。2006年に設立された日本を除く海外の先進国リートに投資を行うファンドです。アメリカのリート大手のコーヘン&スティアーズが運用指図を行っています。米リートという世界で最も大きな市場で、非常に長い歴史を持った会社が指図を行っています。そのため、銘柄選択の目利きができるのではと期待ができます。
ファンドの国別投資割合は、アメリカが約50%、オーストラリアが約15%と、リートマーケットの大きさに準じた配分と考えられます。ただ、時価総額としてはアメリカがより大きいため、アメリカ以外にも厳選されている印象を受けます。
当初は、「フドウさん」との愛称がユニークだとして話題となったファンドです。
今回チェックすべきポイントとしては、
1)米リート大手のアクティブ運用能力がどうか、銘柄選定力が高いのか。
2)また、アクティブリートと言うと、ボラティリティが高いイメージがあります。結果、リスクが大きくなっていないかを確認したいと思います。
3)さらに、リートインデックスファンドと比較してどうか
以上を確認したいと思います。
パフォーマンスです。10年、5年のパフォーマンスは良好でしたが、3年、1年のパフォーマンスは劣っています。
リスクは、同カテゴリーに比べて10年、5年は低かったですが、3年、1年のリスクは高くなっています。ここ3年は同カテゴリーと比べてもリターンが低く、リスクは高くなっています。これだけを見ると、少し不安の残るパフォーマンスとなっています。
投資信託の投資戦略
ファンドの投資戦略です。マクロ経済分析を基にしており、今の金利状況、GDPを分析し、リートの経営陣、ビジネスプラン、不動産のポートフォリオでバリエーションを評価しています。
リートは、金利の上昇に伴い価格が下がりやすい傾向があります。また、GDPの成長率が鈍化すると、不動産価格の下落や賃料の低下につながります。マクロに大きく影響を受けることを踏まえつつ、世界のREITの中から最適な地域を選択しています。
会社の能力についてです。1916年に設立されたコーヘン&スティアーズCM社は、アメリカ初のリート専門運用会社であり、リート運用では最大級の資産規模を誇っています。世界規模のリサーチ力を有しているため、非常に期待が高まります。
次に、パフォーマンス低下の原因について、詳細を分析してみましょう。
パフォーマンス
パフォーマンス
リートは現在、金利の世界的な上昇による逆風に直面しています。金利上昇により、リートの調達コストの上昇、銀行の不動産融資に対する姿勢の厳しさが増しています。2023年は、リートにとって非常に厳しい1年となりました。今後もこの傾向が続くかどうかは不透明ですが、現在はリートに対して向かい風の状況が続いています。そこを銘柄選定、運用力でどのように乗り越えるかがポイントとなっています。
リート全体で見れば向かい風の状況ですが、データセンターやヘルスケアなどの一部セクターは好調です。テクノロジーが進んだ世界の中ではデータセンターを作らなければなりませんから、そこに貸しているリートは非常に好調です。
ところが、このファンドは基本的にインデックスファンドに近い業種配分を行っており、具体的には時価総額の大きな産業用リート、小売リート、住宅リートの比重が多くなっています。本来アクティブファンドはデータセンター、ヘルスケアが上位に来るものですが、こちらのファンドはインデックスに近い配分となっています。そのため、それほどアグレッシブではないかもしれないとの印象を受けます。
ファンドの運用方針では、参考指標を設定せず、個別銘柄の分析に基づいた投資を行うと謳っています。しかし、実際には指標に近い運用をしている可能性があります。
この点を裏付けるデータとして、世界リートの代表的な指数であるS&P Global REITを円換算したものと比較すると、パフォーマンスがほぼ変わっていません。S&P Global REITは、日本や新興国のリートが含まれるためファンドとは異なるものの、パフォーマンスが類似するため比較対象となると考えています。
赤の再投資価格、世界リートがピンク色で示していますが、ほぼ変わらずとなっています。3年間ではオレンジに比べてマイナスですから、5年では同程度、3年間ではマイナスの状況です。
投資への検討ポイント
詳細分析
アクティブファンドとご紹介しましたが、アクティブファンドのイメージとは遠い印象があります。ファンドの信託報酬の分、インデックスや指標に負けているため、特段目立つ結果は出ていません。
厳しい言い方になりますが、インデックスファンドに少し劣っている印象があります。リート指標にほぼ追随しているものの、コスト分だけ負けていますから、あまりアクティブファンドらしさも見えません。
運用内容を見ると、国別ではアメリカが半分、オーストラリア、欧州、シンガポール、香港などのリートが組み入れられており、配分はされていますが、あまり成果が出ていない印象です。
あえて可能性を探るという意味では、先進国リートのインデックスファンドの代わりとなるかと検討する余地はあります。ただ、他のリート系アクティブファンドには、データセンター、ヘルスケア関連リートの配分を多めにするなど、アクティブファンドらしい運用をしていたり、景気環境によって配分を機動的に変えていたりするものも多くあります。そのため、こちらのリートをアクティブファンドとして、あえて選ぶ必要があるのかと感じています。
リート指数に近い動きを求めるのであればインデックスファンド、よりアクティブな効果を期待するのであれば他のリートファンドとなるでしょう。このファンドは中間的な存在になっており、長期投資すべきかどうかはやや疑問視される状況です。
資金流出入
資金流出入状況が、ここまでの内容の説明となっていると感じます。2019年から大きく資金の流出が続いています。これはファンドだけでなく、リート全体で資金流出が多くなっています。コロナによる空室の増加、インフレによる金利上昇、不動産市況の低迷で、リート全体で資金調達が厳しくなっています。ただ、その上でインデックスやアクティブファンドの中間で、はっきりしない立場であるため、資金が流出していると思われます。
評価
最後に評価です。評価は2とさせていただきました。少し厳しい印象があるかと思いますが、アメリカの大手リート専門運用会社による独自の選定力は見られず、非常に保守的な運用が行われているように見受けられます。
市況を考え保守的に選定している部分もあるかと思います。ただ、他のファンドがデータセンターやヘルスケアセクターに焦点を当てているのに対し、このファンドでは独自の選定があまり見られないというのが私の感想です。結果として、インデックスファンドでも十分だと感じています。
本日は、アメリカの伝統あるリート専門会社がグローバルに投資するリートファンドを確認しました。ただ、期待していた以上の成果は現時点では見られません。また、インデックスファンドとアクティブファンドの中間に位置するため、投資するという意思決定は難しい印象です。
インデックスファンドとアクティブファンドを比較し、その中間が望ましいと判断した場合には、このファンドが投資対象になる可能性はあります。
しかし、現状を考えると、このファンドを投資対象として検討する必要は少ないとも思われます。世界のリートに興味がある方は、他のファンドも分析しましょう。