本日は、日本株の投資信託で「スパークス・プレミアム日本超小型株ファンド(愛称:価値発掘)」という、超小型株に投資する日本株ファンドを分析します。
超小型株は、ご自身で銘柄を見つけたり、分析したりすることはなかなか簡単ではありません。そのため、このような投資信託に期待を寄せる方が多いと思いますが、実際のパフォーマンスがどうかが重要です。
お願い
最初にお願いです。この記事はあくまで情報提供を目的としており、投資の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。また、銘柄の抽出はランダムに行っており、運用会社や販売会社と当社との間に業務提携等は一切ございません。中立な立場での分析を行っています。
ファンド概要
概要
「スパークス・プレミアム日本超小型株ファンド(愛称:価値発掘)」は、運用会社は「スパークス・アセットマネジメント」です。日本株で、NISAの成長枠投資対象となっており、信託報酬は1.91%となっています。
純資産総額は159億円と少し小ぶりな印象がありますが、超小型株に大きく資金が集まるとマーケットを崩す可能性があるため、ほどよい金額と言えるでしょう。
日本の超小型株に投資を行うというのは結構珍しいファンドです。自分で超小型銘柄を探す、分析するというのは、分析資料も不足していることからなかなか難しいです。アナリストもほぼついていないため、こういった分析を任せたい方には興味を持てるファンドかと思います。
投資対象としている超小型というのは、時価総額において下位2%に属しています。より発掘の難しい銘柄を分析し、投資を行っていることとなります。
一般的にそういった小型株というのは売買が少ないことから、流動性が非常に低いです。値動きも大きくなりがちですから、一度に売買をするファンドとしては非常に難しいですが、どういった手法を持っているかに注目です。
チェックポイント
本日のチェックポイントです。
- 自分ではなかなか発掘できない銘柄投資をちゃんとカバーしてくれるか?
- 小型株ファンドとしてのパフォーマンスは?
- どインデックスファンドや他のアクティブファンドとの比較
の3点を確認します。
簡易パフォーマンスです。同カテゴリーに対するトータルリターンは、5年、3年ではプラスですが、1年では若干マイナスと、まちまちの結果になっています。実際にどういうパフォーマンス、銘柄選定をしているのか、見ていきたいと思います。
同じカテゴリーに対する標準偏差もまちまちです。1年がマイナスになっているということは、リスクを抑えていたものの、パフォーマンスが下がってきたという印象です。どういった流れがあるのかを確認したいと思います。
投資戦略
投資戦略です。スパークスが出している資料は、いつもながら非常にわかりやすくなっています。興味がある方は、ぜひ目論見書をご覧いただければと思います。とてもわかりやすいです。
さて、超小型株をマイクロキャップといいます。時価総額が小さいという意味ですが、時価総額の下位2%に属している銘柄を中心に投資を行っています。非常に多くの投資機会があり、スパークスが得意としているボトムアップリサーチで銘柄の選定を行っています。
時価総額でいえば大型株が非常に大きいですが、銘柄数は少ないです。小型株は時価総額が小さいものの銘柄数が多いため、いくらでもチャンスがあります。そういったチャンスのある銘柄の中から、経営者の質や企業の収益性の質、市場の成長性などを見て、キャッシュフローの予測などを行います。キャッシュフローは将来価値を決めるものですから、バリューにギャップがあり、評価が低く見積もられているものについて、キャッチアップするようなカタリストが起こる、流れの変化が起こる企業をしっかりと分析して投資しています。
個人では経営者の質、市場の成長、キャッシュフローの予想、カタリストがどういうきっかけで起こりうるかの想定は難しいため、こういったファンドに預けることは1つの選択肢となります。では、銘柄選定やパフォーマンスはどうなのでしょうか。
銘柄戦略
銘柄分析が難しい小型銘柄と書いてありますが、小型株というのはアナリストがあまりついていないこともあり、自分たちで分析するのはなかなか難しいです。そういったことをファンドマネージャー、アナリストがしっかりと行ってくれていることは、私たち個人投資家から見ると非常にありがたいです。
では、具体的にどういった組み入れ銘柄があるのでしょうか。オカダアイヨン、ナカノフドー、メディカルシステムネットワークといった銘柄が上位に入っています。一般的には大企業ほど知名度が高くない銘柄が集まっています。
このファンドのポートフォリオは東証のスタンダードの割合が多くなっていることから、小型銘柄が多く含まれているということがわかります。
組み入れ80銘柄のうち、半数近くがスタンダードですから、スパークスの分析がパフォーマンスに生かされていれば、十分に投資対象になりそうです。
ファンド・パフォーマンス
パフォーマンス
結論から言うと、残念ながらパフォーマンスはあまり良くありません。2022年、23年は日経平均よりも10%ほど好調だった場面もありました。ですが、基本的には日経平均と比較するとリターンが勝てていません。最近は半導体も含めて大型株優位の状況が続いており、日経平均に比べると負けています。
超小型株の特徴としては値動きが大きいため、このファンド自体の値動きも大きくなっています。上昇時には大きなリターンが期待できることが超小型株の特徴ですが、80銘柄に分散しているせいか、過去数年ではファンドの特徴があまり見られませんでした。大型株に資金がシフトしているため、小型株にあまり資金が流れていないということもありますし、80まで分散しているので、結果が伴っていません。
ただ、このファンドは大型株ではなく超小型株ですから、比べるものとしてはTOPIX小型との比較が適切です。そこでTOPIX小型との比較をすると、その動きともほぼ連動しています。
赤いチャートが基準価格、TOPIXの小型がオレンジですが、3年、5年もほぼ同じ動きとなっています。
日経平均に負けることは理解できるにしても、TOPIXの小型とほぼ変わらないということは、TOPIXの小型インデックスに投資すればいいのでは、と考えてしまいそうです。
TOPIXの中でも時価総額の低い銘柄インデックスであるTOPIX小型インデックスを比べてみると、構成銘柄が違うため、動きが異なる場面もありますが、中長期で見るとほぼ同じ動きをしています。残念ながら今までのところ、このファンドは市場全体の小型株の動きとほぼパラレルに動いていることとなります。
カタリストが起こり、組み入れ銘柄のいくつかが一気に上昇すれば、ファンドのパフォーマンスが大きく変わる可能性があります。
ただ、80銘柄も分散していると影響が薄れるため、良いファンドもあれば悪いファンドも含まれることとなり、総じて市場平均となるのか、という印象を持ちました。今後、市場全体として大型株ではなく小型株が優位になる場合、パフォーマンスを発揮する可能性があります。
そういった場合でもTOPIXの小型が適しているかもしれないことから、投資家としてはファンドをポートフォリオに加えるのは少し難しいと感じました。
資金流出入
最近は資金が流出気味の傾向がありますが、ただ、23年は非常に大きく資金が流入したとのことですから、今後の動向を見守る必要があります。
評価
評価は2つ星となります。スパークスお得意のリサーチ力を生かした個別銘柄選定能力は、十分に戦略としては心に響くものがありましたが、ただ、実際にパフォーマンスが伴っていない以上、無難にTOPIXの小型を買ってもいいのではないかとの判断にもなりかねません。
本日は、スパークスが運用する超小型の日本株ファンドを分析しました。日本株が非常に強い展開が続いています。大型株を中心にマーケットが引っ張られていますが、アクティブファンドとしてTOPIXの小型を上回るようなパフォーマンスがあれば、投資対象になり得る、ということで本日は分析しました。
残念ながら、今のところ銘柄選定能力がパフォーマンスまで及んでいません。今後の動向次第ではありますが、インデックスと比較しても大きな差がないということで、他の小型株ファンドとまだまだ比較する必要があると思います。