本日分析する投資信託は、フィデリティ・グローバルファンドです。このファンドは、フィデリティが自慢の調査能力を駆使し、グローバルな個別銘柄に投資を行っています。グローバルな個別銘柄分析を丁寧に行う運用スタイルで世界株を大幅に上回ることができるのか、分析したいと考えておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
お知らせ
初めにお願いです。この記事は情報提供を目的として作成しています。投資の勧誘や売買の推奨は目的としていません。取り上げている投資信託はランダムに抽出しています。運用会社、販売会社との間に業務提携は一切なく、中立的な立場でお伝えしています。
投資信託概要
概要
フィデリティ・グローバルファンドは、グローバルに投資をしているファンドです。フィデリティ投信が運用している国際株式で、NISA成長投資枠での投資が可能です。信託報酬は1.9%。こちらがパフォーマンスにどのような影響を与えるかも、後ほど確認します。純資産総額は1372億円と、中型のファンドです。
今回、日本を含む世界各国の株式から優良銘柄を厳選して投資を行っているため注目をしました。優良銘柄に分散投資を行っているファンドです。銘柄選定能力の有無、売買戦略がパフォーマンスに大きな影響を与えそうです。
投資戦略としては、ボトムアップアプローチを採用し、アナリストたちの意見を重視し、企業に真の価値があるものを選んで投資しています。個別企業の分析により成長企業を選定し、利益成長と比較して妥当と思われる株価水準で購入しています。成長に対して割安に放置されている銘柄を購入するバリュー投資となります。
ポートフォリオはほぼ先進国で固められています。国別ではアメリカが約60%、残りは日本を含む数%となっています。世界株に投資する方と同じような配分ですから、その中でどのような違いを出せるかに注目です。
チェックポイントです。優良株の選定能力がなければ、世界株を上回ることは容易ではありません。しっかりと世界株式をオーバーパフォームできているかどうかが1つ目のポイントです。また、長期的に安定したパフォーマンスを出せるかどうか、リスクとリターンが見合っているかどうかも注目です。
過去のパフォーマンスです。同カテゴリーに対して全て上回っていますから、この時点で非常に期待ができるファンドです。標準偏差を見ると、カテゴリーよりも下回っているということで、リスクを抑えてリターンが高いことが確認できます。
投資戦略
このファンドは非常にオーソドックスな戦略を採っています。各個別企業への投資も行っていますが、投資している企業の先、関連企業の成長性があるかどうかを確認するため、仕入れ先や関連企業の調査を行い、独自のグローバルネットワークを活かして他の競合他社と比較して分析しています。単体の企業だけでなく、取引先の成長や関連会社の成長をしっかりと見ることを謳っています。かなり細かなボトムアップリサーチをしているとのことです。
銘柄戦略
ポートフォリオのほとんどを先進国が占めています。アメリカが約60%、残りはオランダ、カナダ、インドが約5%程度です。
世界株平均と比較した特徴としては、金融が業種別に最も多いことが挙げられます。金融が多いことは、世界株平均と比べると特徴的です。
個別銘柄全体としては、全体的に大型株が圧倒的に多く、銘柄数が70と、やや分散を意識したポートフォリオになっています。分散が多いことがリターンにどう影響するかが注目です。
売買の回転率は1前後と、売買頻度はあまり高くありません。成長株を機動的に取り入れるというよりも、比較的安定株を多めに長期保有する運用となっています。
回転率が高く、銘柄も少し特徴的なものとなってくれば、成長株を機動的に取り入れている印象ですが、ほとんどが認知の高い銘柄であり、アメリカを中心にしています。売買の回転率が1前後ということは、比較的安定したファンドだと言えるでしょう。
ファンド・パフォーマンス
パフォーマンス
過去のパフォーマンスを振り返ると、基本的には世界株平均と似た動きとなっています。しかし、実績を細かく見ると、指数に負けている期間が目立っています。例えば、過去3年間では指数に比べて約20%、過去1年間では約2%劣っています。1997年以来の設定でも大きく差が出ていることが、長期で見るとわかってきました。
ある程度の期間を区切って見ると、指数に勝っている期間もありますが、例えば過去5年間では指数とほぼ同じリターンで、2021年は10%上回っています。基本的には世界株と同じような動きをしますが、その時の相場環境によって、勝つことも負けることもあるパフォーマンスです。非常にリターンのばらつきが多いファンドと言えます。
リターンのばらつきを仮に受け入れるとしても、設定来の長期で見ると大きくインデックスを下回っていますから、ばらつきがいい方向に作用していないと言えるのではないかと思います。
最近のパフォーマンスを細かく見ると、指数を下回っている要因としては、情報技術セクターや半導体セクターの配分が指数と比べて少ないことが挙げられます。また、個別銘柄でエヌビディアなどを保有していないことも要因となっています。
また、過去の多くの期間で米金融株の比率が高くなっています。ここ最近、金融株はまだ持ちこたえていますが、以前はパフォーマンスが良くなかった影響がかなり大きかったのでしょう。
リスクは、他の世界株平均とほぼ同程度です。売買頻度はあまり高くないため、売買によるリスクをそこまで大きく取っているわけではありません。大きくリスクを取った運用でもなく、リスクを抑えた運用というわけでもありません。
シャープレシオ自体は安定しており、長期にわたって1.1程度で推移しています。ファンドの運用効率としては悪くない部類だと言えるでしょう。
世界株平均を下回る局面もありますが、リターンで上回っている局面もあります。しかし、長期で負けているということは、長期で預けるには少し頼りないファンドとなっています。
ファンドを分析する際には、短期・長期でいいとき、悪いときが出てきますが、いいとき、悪いときでぶれ幅があるファンドでは、長期で勝っていないと、ぶれ幅は単なるリスクの大きさにつながります。パフォーマンスを見ると、長期で任せられるファンドではないかもしれません。
比較的保守的な銘柄を選定しているため、一部の成長株だけが上がる今のような状況では、どうしてもパフォーマンスが弱くなるでしょう。
資金流出入
最近は流入の方がやや大きくなっています。これはファンドの知名度、フィデリティが運用しているところに期待する方が多いためだと思います。ここ最近のパフォーマンスを見ると、そこまで期待を持てるファンドではないとの印象を持ちました。
評価
評価は2です。優良株の関係先、取引先まで調べたうえで、優良株だと判断したものを選んでいることから、オーソドックスな運用スタイルと言えるでしょう。ただ、優良株を選んだものの長期的なパフォーマンスには結びついていないことから、長期で投資を行うファンドとしては不足の印象を持ちました。
本日は、世界の優良株に投資する世界株ファンドを取り上げました。期間を長くとるとパフォーマンスは非常に劣っていて、いい時と悪い時がはっきりしています。リスクが少し大きく、リターンにばらつきが出ることから、長期で預けにくいファンドとの印象を持ちました。
世界株に投資したい方は、アクティブで色が強い、もしくはアクティブの色が少し薄いものの、コンスタントにインデックスを上回るものに分けて投資すべきです。その観点からすれば、このファンドは両方に当てはまらない印象です。他のファンドと比較しながら、特徴を踏まえて判断いただければと思います。