本日分析する投資信託は、ブラックロックゴールド・ファンドです。こちらは金(ゴールド)に投資するファンドではなく、金鉱株に投資するファンドです。金の価格が非常に注目を集めている中、それを上回る実績を残すことを目指して金鉱株に投資を行っていますが、金価格以上のパフォーマンスを残せるのでしょうか。
お願い
最初にお願いです。この記事は情報提供を目的として作成しており、投資の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。投資信託はランダムに抽出しています。運用会社、販売会社との間に業務提携は一切ありません。中立の立場でお伝えします。
投資信託概要
概要
ブラックロックゴールド・ファンドは、ブラックロックジャパンが運用しています。金鉱株ですから、国際株式であり、金などへのコモディティへの投資ではありません。NISA成長投資枠での投資が可能です。信託報酬は2.2%と高いですが、それを超えるだけのパフォーマンスを残せるのでしょうか。純資産総額は214億円です。
このファンドは、金価格に注目が集まっている中、世界各国の金に関連する企業に投資しています。金関連の企業とは、金の発掘、精錬を行う金鉱企業や、貴金属・一般的非鉄金属の発掘・精錬を行う企業です。こういった金関連企業の株式に投資するファンドです。金の先物に投資するわけではありません。
国別に見ると、カナダが約6割を占めており、他にはオーストラリア、イギリス、アメリカ、南アフリカに分散されています。金価格への投資ではないため、複数国に跨った投資となっています。
投資先は35銘柄とそこまで多くなく、株式市場であまり焦点が当たらない、珍しい銘柄を対象としたアクティブファンドです。金価格は中東情勢、地政学リスク、ドル価格を含めて注目する方が多い中、金鉱株はどうでしょうか。
チェックポイントです。金価格の上昇によって、価格以上の上昇を運用成績が期待されていますが、金鉱株は本当に金価格を上回っているのでしょうか。また、高い信託報酬を正当化できるようなパフォーマンスが残せているのでしょうか。
簡易パフォーマンスです。トータルリターンは、同じカテゴリの中で大きくマイナスとなっています。非常に不安定なトータルリターンだと言えます。リスクについても、カテゴリを大きく上回っています。標準偏差1で30%近くとなっており、標準偏差2では年間60%近い、かなり値幅の動きが大きなファンドです。
投資戦略
投資戦略です。金価格と金鉱株は同じ方向に動く傾向があり、金価格を反映してダイナミックに変動する金鉱株への投資を目的としています。
金価格が上昇すると、金に関わる企業の売上が増加します。すると、金に関わる金鉱企業の収益は増加し、株価は上昇します。金価格を受けて大きく上昇するのです。
また、金価格の上昇が金鉱企業の利益を増大させる、ギアリング効果を投資に活かしています。金の収入が上がると、コストは据え置きで利益が伸びます。金価格の上昇率は約17%ですが、金鉱企業の利益は約50%ですから、3倍近くの利益が上がります。このギアリング効果を利用すれば、金価格の上昇、世の中のニーズが高まる中では、金鉱株に投資すべきだ、ということを謳っています。
同じことはリーマン・ショック前にも言われており、2005年、2006年にも金鉱株は非常に注目されていました。15年以上経過した今は、どうなっているのでしょうか。
私も金融機関にいた時、こういったものを分析していましたが、非常にボラティリティが高い印象です。どうパフォーマンスに反映されているのか、後ほど確認したいと思います。
銘柄戦略
次に銘柄戦略です。35銘柄でカナダは60%を超えています。バリック・ゴールドはカナダでもかなり有名ですし、ニューモントも有名です。こういった銘柄を上位に加え、ギアリング効果の狙える企業を選んでいます。金鉱株の中では有名どころですが、世界株の中ではそこまで有名ではない企業が、どのような結果を残すのでしょうか。
ファンド・パフォーマンス
パフォーマンス
当該ファンドと株式との相関は低くなっています。金関連企業、金鉱株は、一般的な株式とは大きく異なる動きをしています。世界経済の影響、景気動向に左右されることもありますが、多くの企業は金などの価格に業績が影響を受けるため、世界の株式市場の好調さだけではなく、金の価格の影響も大きいです。
ただし、金の価格と強く連動するわけではなく、独特な動きをすることが特徴です。過去のパフォーマンスを見ると、世界株平均とは大きく異なり、値動きの連動性はほとんど見られません。
金価格との値動きを比較すると、短期的には金に連動しているように見えますが、中長期的には金とも異なっています。どちらかと言えば金価格に連動しやすいですが、相関が高いとは言えません。
5年、3年のチャートを見ても、独自の動きをしていることが分かります。ここ3年、金価格は非常に上昇しています。本来であれば、円換算の金先物の上昇に追随するはずですが、ファンドのチャートはアンダーパフォームしています。そのため、どこに連動しているのかが少し分かりづらい印象です。
また、リスクは高いです。総じて値動きは大きく、かなりのリターンのブレがあります。具体的には、リスクは年間30%前後と非常に高いですが、リターンは8~10%と、リスクに対してリターンが非常に低くなっています。
値動きは金にやや連動するとお伝えしましたが、ギアリング効果が効いているためか、金よりも値動きがかなり大きくなっています。過去3年間では、金価格が大きく上昇しました。本来であればファンドも大幅に上昇しても良いところですが、下落期間が目立っています。金だけでなく、金利や景気などの影響を受けることから、そのような動きになっているのでしょう。
そのため、シャープレシオは0.3と低く、安定的にリターンが積み上げられているファンドではありません。かなりボラティリティが高いと言えます。このファンドは、金や株とも動きが異なるため、あくまでオルタナティブな投資対象として扱うべきでしょう。
本来、長期でポートフォリオを組む場合、保有資産の連動性が低いか高いかなどを考慮しながら、相関関係を考慮して組み合わせ、リスクの分散を図ります。ただ、このファンドは、金価格に影響されやすいものの、株式とは大きく動きが異なります。ポートフォリオの一部として保有すると、相関性の低さがポートフォリオ全体の分散効果になることは期待できます。
ただ、とにかく値動きが大きいです。また、ギアリング効果を狙うといっても、人件費の高騰、インフレが企業の収益を圧迫する可能性もあります。一概に「このような時にはこのような動きをする」とは言えず、法則性が乏しい企業体を集めた結果、値動きは大きくなっています。大きな比率で保有するよりも、ほんの一部をリスクヘッジ的な感覚で、オルタナティブ投資として入れる余地はあるかもしれません。資産家の運用をサポートするファミリオフィスなどでは、GOLDへの投資は欠かせません。株式や債券などの伝統的金融資産との相関が少ないからです。また、その流れでギアリング効果のある金鉱株に投資を行うこともありますが、それはあくまでもアルファ戦略としてであり、一般的な投資においては、金のポジションをポートフォリオに入れることをまずは優先すべきといえます。
資金流出入
流出入はまちまちです。金鉱株が上昇すると考える方もいれば、金との連動が低すぎると考えて手放す方もいるのでしょう。
評価
評価は1です。あくまで金連動ETFのオルタナティブ先です。そもそも金自体への投資を行う方が株式、債券に比べて少ない中、金のETFを持っていない方が金鉱株を先に求めるというのは、少しステップを飛ばした感じになります。金連動のETFを持ったうえで、さらにオルタナティブと進むものです。ただ、最近のボラティリティ、ファンドのパフォーマンスを見ると、元々のヒアリング効果が達成できていないため、評価は1となります。
本日は金に関連する株、特に金鉱株に投資するファンドを分析しました。金価格が上昇すると、ギアリングで利益が上がると説明されており、以前から金鉱株投資は非常に人気がありました。ただ、ここ最近の人件費の高騰、物価の上昇で発掘コストが増加しています。そのため、業績は伸びていますが、金価格ほどの上昇ではありません。
金のETFなど、オルタナティブ投資の一部とするには適しているかもしれませんが、必ずしも必要なファンドでもありません。コモディティ、特に金に関連するさまざまなファンドを比較しながら検討していただければと思います。