本日は、新経済成長ジャパンという、日本株ファンドを分析します。非常に高い株式の売買比率で細かい売買を行っていること、また、ボトムアップとトップダウンの両方を組み入れた手厚いアプローチで非常に高い成果を挙げているファンドです。運用スタイルと長期的な見通しを分析していきます。ぜひ最後までご覧ください。
お願い
最初にお願いです。この記事はあくまでも情報提供を目的として作成されており、投資の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。また、銘柄はランダムに抽出しています。運用会社や販売会社と当社の間に業務提携は一切ございません。あくまでも中立の立場から分析をお伝えします。
投資信託概要
概要
新経済成長ジャパンは、SBI岡三アセットマネジメントが運用しています。投資対象は日本株で、NISA成長投資枠での投資が可能です。信託報酬は1.71%、純資産総額は34億円です。
特徴です。日本株を対象に投資を行っています。経済や市場環境に応じて業種、テーマを決めるトップダウンアプローチと、個別企業などの分析を中心に組み入れ銘柄を決めるボトムアップアプローチを併用しています。両方のアプローチを採用した非常に手厚い運用が、どのような成果に結びついているのでしょうか。
また、ポートフォリオの構築にあたっては、業績動向、財務内容、バリュエーション、業種別比率などを勘案し、非常にオーソドックスな手法をとっているといえます。手厚い分析とスタンダードなポートフォリオ構築を行っている、王道の運用というイメージです。
チェックポイントです。手厚い分析がパフォーマンスに直結しているか、長期で安定したパフォーマンスが実現できるかを確認します。
過去のパフォーマンスです。同カテゴリーをコンスタントに上回っており、リターンがしっかり出ているファンドです。特にここ1~2年は非常に安定した高いパフォーマンスを上げています。
リスクに関しても同カテゴリーを下回ることが多いです。そこまで大きなリスクを取っていないにもかかわらず、ある程度リターンが積み上げられていることから、手厚い分析が成果を結んでいると考えられます。
投資戦略
投資戦略です。トップダウンアプローチとボトムアップアプローチを併用し、マクロとミクロの両方から企業銘柄を確認し、ポートフォリオを構築しています。トップダウンアプローチでは経済、政治、マーケットの動向を確認しています。ボトムアップアプローチでは産業構造やセクター、企業個別の問題、銘柄のバリュエーションなどを分析します。一般的には、アナリストの人員確保や分析の手間から、どちらか一方の手法を使うアクティブファンドが多いですが、このファンドは両方の手法を取り入れていることを明確に記載しているファンドはあまり見かけません。
実際には大きなアセットマネジメント会社になると、トップダウンについてはアナリストやエコノミストがしっかりと分析を行い、その上で個別のファンドがボトムアップを行っています。ですから全く実施していないわけではありませんが、ここまで目論見書に書かれていることから、非常に手厚く行っていることがわかります。
ファンドの運用においては、トップダウンもボトムアップもどちらも必要であり、どちらが優位という状況ではありません。
このファンドが注目している点として、トップダウンアプローチでは、開発競争が激化している生成AI、日本のデフレ脱却と日銀の金融政策の正常化による金利上昇がどう影響するのか、地政学リスクの高まり、日本政府の政策転換により重要性が再認識されつつある防衛産業などに注目している、非常に時代に即した運用を行っている印象です。
ボトムアップに関しては、業績変化や株主還元の姿勢、バリュエーションなどに注目し、PBRや配当利回りを基準に選定しています。最近ではアクティビストの動きも見られるため、株主還元策の姿勢の変化にも注目している点で非常に良いファンドです。
銘柄戦略
直近の具体的な行動として、情報通信、自動車関連、遊技関連の組入比率を引き下げ、トップダウンアプローチからは銀行、証券、電力、不動産、海運などの組入比率を引き上げています。マクロ面の要素をしっかりと組み入れた投資行動が伴っています。
ファンドの最大の特徴は、頻繁な銘柄入れ替えを行っている点です。直近1年間では、売買回転率が年9倍と、預かっている資産の9倍程度の資金を動かしていることがわかります。ファンド内でかなりの売買が行われていると言えます。
ポートフォリオは40銘柄と、比較的集中投資を行っています。集中投資を行いながら、保有銘柄を大型株と中小型株に分け、売買回転を行いながらリスクをコントロールしています。
上位の組み入れ銘柄を見ますと、海運や電気、銀行、証券を組み入れており、非常にまんべんなくコンスタントに投資を行っていることがわかります。
ファンドパフォーマンス
パフォーマンス
売買が多いだけでなく、それに応じてファンドのパフォーマンスも良好です。過去5年間のデータでは、TOPIXを20%程度上回っており、短期的な動きでTOPIXを上回って推移しています。
リターンが高いことに加えて、リスクも市場平均と同程度に抑えられており、シャープレシオは1.5と高くなっています。非常に運用効率がいいファンドです。
このファンドは2013年に設定され、約11年間運用されていますが、TOPIXの分配金ありの設定来が222%に対して、このファンドは228%と、ほとんど変わりません。11年間の運用でファンドのパフォーマンスはTOPIXの配当を大きくオーバーパフォームしているわけではありませんが、安定した運用結果を残しています。ここがファンドの評価ポイントの1つになるでしょう。
ファンドの良さは売買頻度の高さにあります。売買頻度が高いと、判断を誤ると一気にパフォーマンスが悪化するリスクがあります。しかし、設定以来のパフォーマンスを見ますと、大きく市場に負けた期間があまりなく、市場平均と同程度のパフォーマンスを維持しつつ、狙えるところで上を狙っています。日本株のアクティブファンドの中では優秀な部類に入ることは間違いないでしょう。ただ、繰り返しになりますが、設定以来のパフォーマンスがあまり変わらない点をどう評価するかがポイントになると思います。
資金流出入
最近は流出が目立っています。2022年、2023年は非常に流入が多かったですが、2024年に入ってからは流出が増えています。
評価
評価は3.5です。トップダウンとボトムアップのアプローチを採用し、過去5年間ではパフォーマンスに非常に堅調に推移しているファンドですが、設定以来の11年間を見ると、TOPIXとあまり変わりません。ここ最近のパフォーマンスが今後も続くかどうかが、ファンドの評価につながります。最近の5年間の動きを見る限りでは、非常にリスクをコントロールできている印象があるため、今後もその流れが続くと期待できそうです。設定来での評価は星3~2.5ですが、ここ5年間の動きを見て、また、今後も続きそうな蓋然性が高いと判断し、星3.5とさせていただきました。今後のパフォーマンスに注目していただきたいファンドです。