本日は、ニッセイAI関連株式ファンド(愛称:AI革命)という、AI関連銘柄に投資を行うファンドを分析します。
AIといえば、これからの時代を間違いなく大きく変える要素であり、注目している方が非常に多いと思います。AI関連の銘柄に集中投資を行っているこのファンドに、成長率が非常に高いNASDAQ100以上のパフォーマンスが期待できるかを分析していきます。ぜひ最後までご覧ください。
お願い
最初にお願いです。この記事はあくまでも情報提供を目的に作成されています。投資の勧誘や売買の推進を目的としたものではございません。投資信託についてはランダムに抽出を行っています。運用会社や販売会社と当社の間に業務提携は一切ございません。あくまでも中立の立場で分析を行っています。
投資信託概要
概要
概要です。ニッセイAI関連株式ファンド(愛称:AI革命)、はニッセイ・アセットマネジメントが運用しています。世界株に投資を行っており、NISA成長投資枠での投資が可能です。信託報酬は1.89%、純資産総額は1,153億円です。
特徴です。世界の株式の中からAIに関する銘柄に投資するという、非常にわかりやすいファンドです。
ここで言うAI関連企業とは、AIの基礎技術を提供する企業、AIを開発・提供する企業、AIを活用した製品・サービスを提供する企業に分かれています。その中でも、AIの基礎技術を提供する企業が組み入れの7割近くを占めているファンドのパフォーマンスはどうなっているのでしょうか。
実際の運用の銘柄選定は、TCWアセット・マネジメントという米企業が行っています。運用の世界では、とても有名な運用会社です。
チェックポイントです。最近注目を集めているAI関連企業の銘柄選定能力、パフォーマンスはどうか、長期的に安定したパフォーマンスにつながるかを分析します。
過去のパフォーマンスは、同カテゴリーを大きく上回っています。AIに関する関心の高さ、業績の伸びが確認できます。
一方で、標準偏差はボラティリティが高くなっています。リスクを抑えることを目指しているのでしょうが、どうしても値動きが大きくなり、標準偏差が高くなっています。標準偏差が高い状態でリターンが高いことが、ファンドのパフォーマンス評価にどう結びつくのでしょうか。
投資戦略
ファンドにおけるAI関連企業とは、AIの基礎技術を提供する企業、AIを開発・提供する企業、AIを活用した製品・サービスを提供する企業を指しています。
実際の運用は、非常に優れた運用会社であるTCWが行っています。
運用プロセスは非常にシンプルで、日本を含む世界の各国の株式市場からAI関連銘柄を抽出します。ただし、時価総額、流動性をしっかりと分析しますから、あまりにも小さな株式には投資せずに投資群を決めています。
投資群を決定した後はしっかりとバリエーションチェックを行い、今後の成長性などの蓋然性をしっかりと分析しながらウェイトをコントロールしてポートフォリオを作るという、非常にスタンダードな運用方針です。まさに銘柄の選定能力が問われるファンドの運用と言えるでしょう。
銘柄戦略
業種別比率では、情報技術が7割を占めています。国別ではアメリカが8割と、非常に多くの割合を占めています。それ以外にはAIで有名なイスラエル、オランダが入っていますが、ほぼアメリカとなっています。
組み入れ銘柄数は35銘柄と、集中投資が行われています。組み入れの多い個別銘柄には、エヌビディア、メタ、アルファベットなど、アメリカを中心に世界を代表する情報技術セクターの大型株が集まっています。
運用方針としてはバイ・アンド・ホールドが中心となっており、保有銘柄の比率調整は行うものの、大胆に銘柄を入れ替えることはありません。AIに関連する企業はそこまで多くないため、基本的にはバイ・アンド・ホールドとなっています。
ファンド・パフォーマンス
パフォーマンス
短期のパフォーマンスは良好です。最近、投資テーマとしてだけでなく、株価の上昇率も大きいAI関連銘柄が注目を集めています。そのため、このファンドへの注目も高まっています。
過去5年間の比較では、世界株よりも60%、S&P500よりも30%上回るリターンとなっています。S&P500の円建て、世界株の円建てよりも大きく上回っていることが確認できます。
ただし、値動き自体は非常に大きな動きをしています。リスクは年23%~25%と、市場平均に比べても大きくなっています。直近の動きは好調、不調の局面が非常にはっきりしています。例えば2020年~2021年は上昇率が大きく、この期間だけでも世界株平均やS&P500と比べて、30%~40%のアウトパフォームが見られました。
しかし、その後、2022年には40%近く下落する場面がありました。AI関連で業種が情報技術に偏っていることもあり、会社の成長性や業績がある程度良くとも、セクターとして売られることもあります。そのため、パフォーマンスのブレが少し大きくなっていることがわかりました。
最近は再び評価が上がり、大きく値上がりしていますが、それでも過去3年間のリターンはS&P500を下回っています。これは、下落幅が大きくなる時期のあるファンドは、その後パフォーマンスが優れても、取り返すまでにかなりの時間がかかることを示しています。リスクコントロールのできるファンドの強さが改めて確認できるパフォーマンスと言えます。
ファンドは値動きが非常に大きく、リスクも高いファンドです。シャープレシオは0.8とあまり高くなく、効率的なファンドとは言えません。
逆に言えば、ファンドはリスクが高い割に、それに見合うリターンは取れていないことになります。リターンだけに注目すると高く見える局面もありますが、それに伴って大きなリスクを取っており、資金効率はあまり良くありません。
今後、AI関連の株式に対する注目は当然ながら続きます。株価が好調な動きを続ければ、このファンドのリターン自体は非常に大きくなると期待できます。ただ、そういった状況においても、ファンドの値動きは変わらず大きいままと思われます。投資する際には、その点について十分に注意する必要があるでしょう。
5年パフォーマンス
次にNASDAQ100との比較です。これは5年間のパフォーマンスで、緑がNASDAQ100(円建て)のファンド、青がAI革命となっています。NASDAQが5年間で+279%なのに対し、AI革命は+202%です。NASDAQ 100はAIに特化しているわけではないため、比較が難しいという意見もあるかもしれません。
ご確認いただきたいのは、下落局面においてAI革命の保有銘柄は大きくアンダーパフォームしているという事実です。もしも銘柄選定、組み合わせがうまくいっていれば、インデックスとの差を詰める、もしくは上回ってもおかしくありません。
しかし、ここ1年半のパフォーマンスは市場並みとなっています。大型株をほどよく含め、あまり注目されていない企業を組み入れたことで非常に中途半端になった結果、こうしたパフォーマンスとなっている可能性があります。
差を縮められないということは、アクティブファンドとしての特徴があまり活かされていないとの見方が正しいかもしれません。
資金流出入
一時期はAIに注目が集まりましたが、その後はまちまちです。
評価
評価は星3つです。チャート、過去のパフォーマンス、様々な指数を見ても、銘柄選定力でNASDAQ100を超えるアルファが確認できていません。テクノロジー、ハイテク企業を中心とするNASDAQ100を超えていないということは、銘柄の選定力があまり高くないと言えるでしょう。
ただ、今後もAIへの注目は間違いなく続くため、AI銘柄に集中的に投資したいと考え、NASDAQに対してアルファがないとしても、いずれは出てくることへ期待を持つ場合は少し評価が上がります。直近のパフォーマンスは、インデックスに比べて悪くはなっていますが、AIへの集中投資という目的が加われば星3つが妥当だと考えました。
本日は、非常に注目度の高いAI関連企業に投資するファンドを分析しました。AI関連企業の業績は成長し、株価も上昇していますが、銘柄選定は意外と無難です。NASDAQ100とあまりパフォーマンスが変わらないどころか、過去5年間ではアンダーパフォームしています。アルファが出せていないファンドをどう扱うかを考えるには、他のファンドと比較して優位性が見いだせるかどうかを分析するしかないと感じています。ぜひ比較をしていただきたいと思います。