本日は、好配当優良株ジャパン・オープンという、日本株の高配当かつ優良株に投資するファンドを分析します。
このファンドは、絶妙にリスクをコントロールし、リスクを低く抑えつつ、長期的に安定したパフォーマンスを残しているファンドです。どのような運用を行っているのか、どのような銘柄選定かを確認しますので、ぜひ最後までご覧ください。
お願い
最初にお願いです。この記事はあくまで情報提供を目的として作成されたもので、投資の勧誘や売買の推奨を目的としたものではございません。また、投資信託はランダムに抽出されたもので、運用会社や販売会社と当社の間には一切の業務提携等はございません。あくまでも中立の立場で分析を行います。
投資信託概要
概要
好配当優良株ジャパン・オープンは、三菱UFJアセットマネジメントが運用を行っています。日本株に投資しており、信託報酬は1.16%、純資産総額は87億円です。
特定口座での投資で、現時点ではNISAでの投資ができません。
特徴です。日本株の中から、連続で増配している銘柄を中心に投資を行っています。連続増配の定義としては、配当の持続性が相対的に高いこと、財務の健全性が高いこと、予想配当利回りが高いことという、3つの観点で銘柄を選定しています。
銘柄選定においては、主に定量的な分析を行い、定性性は少し抑えた運用スタイルです。
市場環境です。現在、相場環境は非常に不安定で日米ともに株価の動きが大きくなっており、今後の経済見通しに対する不安が一部台頭しています。
そのような環境では、優良株、かつ高配当銘柄が選好される傾向があります。そのため、このファンドの需給環境は良好だと言えるでしょう。
チェックポイントです。数多くある高配当ファンドの中で、際立ったパフォーマンス、ポテンシャルとなっているか、リスクコントロールができているかを確認します。
投資戦略
好配当優良株の定義は、配当の持続性が高いこと、財務の健全性が高いこと、予想配当利回りが高いことです。
連続増配銘柄の選定においては、ポイントが2つあります。1つ目は利益成長を実現している企業です。利益を表すパイが大きくなると、パーセンテージは変わらなくとも配当額が増加します。
もう1つの基準は、配当性向を高めている企業です。配当政策を見直し、より強めている企業は配当金額が増加します。
ファンドにおけるスクリーニングの方法です。TOPIXの中から時価総額、流動性を考慮して選ばれたTOPIX 500がベースとなっています。
その後、財務の健全性を基準として優良株のスクリーニングを行い、増配が続く企業かどうかを考慮し、銘柄を選定しています。
銘柄戦略
銘柄を見ると、70~80に分散されています。さらに銘柄ごとの比率もほとんど均一です。多くの集中ファンドは1位~3位の比率が8~9%を占めていますが、このファンドでは上位銘柄が4.2%です。
業種構成を見ると、化学が17%、建設業が13%です。業種の構成比率を大きく変えるとともに、上位組入銘柄の比率も一定にすることで、他のファンドとの差別化を図っています。
個別銘柄を見ると、オープンハウス、アステラス製薬が含まれており、TOPIXの構成要素とはかなり異なる印象です。
売買回転率は年間で2倍程度です。70~80銘柄を保有しているファンドと比べても、比率調整、銘柄入れ替えが多く、しっかり分析した上で銘柄入れ替えを行っていることがわかりました。
具体的には、直近、配当利回りの引き上げを目的として太陽誘電などを新規に買い付ける一方で、三菱商事を売却するなどの動きが確認できています。
また、銘柄の選定基準だけでなく、個別銘柄の組み入れ比率を均一にしたことで、安定的に運用するために定量分析に重きを置いています。構成を含めてオリジナリティのある投資戦略だと言えます。
ファンドパフォーマンス
パフォーマンス
一言で言えば、良いパフォーマンスです。
過去3年では基準価格がTOPIXを20%以上上回り、世界株平均をも上回っています。ここ最近は資本効率改善に向けた取り組み、株主還元姿勢を見せている企業への評価が高まっています。それに加え、しっかりとした銘柄選定ができていると感じました。
5年間で見てもTOPIXを上回っていますから、3年間の一過性ではなく、ある程度安定したパフォーマンスを残していることがわかりました。
ただ、下の図表をご覧ください。ファンドが出している月次報告書のデータを見ると、グレーのチャート、ベンチマークのラッセル野村中小型インデックスを基準価格が下回っています。
これだけを見れば、ベンチマークに劣っているファンドが本当に良いと言えるのかと感じる方もいるかもしれません。そこについては、後ほど解説します。
リスクは非常に低いです。長期スパンでは市場平均と同程度のリスクですが、過去3年間のリスクは10%未満と、かなり小さな値動きとなっています。
過去3年間の平均シャープレシオは2を超え、とても効率の良い運用です。パフォーマンスが良く、リスクも低い、非常に期待が持てるファンドです。
ただ、シャープレシオやリスクの数値はブレます。売買回転率が2だからといって、間違いなく安定しているわけではありません。あくまでも現時点で非常に資金効率が良いファンドだとお考えください。
ポートフォリオに組み入れられている銘柄は連続増配企業、財務が非常に安定している優良企業です。そのため、成長株優位の局面が訪れた場合、パフォーマンスで後れを取る可能性があることをご理解ください。長期で保有できる方にとっては非常に良いファンドと言えるでしょう。
設定来2013年以降のパフォーマンス
青がファンド、緑が中小型株平均、赤が東証小型指数です。中小型株平均に比べ、ファンドは一時期大きく後れを取っていました。ただし、長期で見ると現在は中小型株平均を上回っています。
このファンドは組み入れ比率の上位が4%程度と低めに設定されており、70~80銘柄に分散されています。また、他のファンドとは異なり、セクターの配分も独特です。そのため、平均と比較して遅れを取る局面もあるかと思います。
ただ、マーケットが混沌としてくる中では、優良株で増配している銘柄に注目が集まります。結果として、このファンドもキャッチアップできています。他のファンドに比べて劣っているとは、この段階では言えないでしょう。
一方で、東証の小型株指数に対しては、追随するときにはしっかり追随し、評価を受けるときには適切な評価を受けています。小型株中心に投資を行っていますが、銘柄選定がしっかりしているからこそ、上昇局面を捉えられていると言えます。
ベンチマークには劣っている部分があるものの、TOPIXを5年間、3年間で上回っており、東証の小型株指数も上回っていることから、パフォーマンスはそこまで高いわけではないものの、リスクをしっかりとコントロールできており、設定来の資金効率が非常に良いファンドだと言えるでしょう。
資金流出入
資金の流出が続いています。
評価
評価は4です。小型株に投資していますが、非常にリスクが抑えられています。長期で見ると安定的な運用もできています。
成長株が優位な局面では、どうしてもアンダーパフォームすることもあるでしょう。しかし、長期投資を考える方には向いているファンドということで、評価は4とさせていただきました。
アメリカも日本も非常にマーケットが揺れ動いている中で、優良株、かつ高配当の銘柄は選好される傾向は続くと思われます。興味を持つ方々も多いカテゴリーですが、その中でもリスクが非常に抑えられたファンドです。