本日は、米国インフラ・ビルダー株式ファンド(ヘッジ無し)という、アメリカのインフラ関連銘柄に投資するファンドを分析します。
アメリカの経済成長は今後も続くと予測されており、米国インフラ関連銘柄も有望とよく言われています。非常に高い評価を受けている一方で、特定銘柄に集中して投資するリスクも存在しますが、実際のパフォーマンスはどうでしょうか。S&P500と組み合わせるとリスクがどうなるのかも含めて分析しましたので、ぜひ最後までご覧ください。
お願い
最初にお願いです。この記事はあくまでも情報提供を目的として作成されています。投資の勧誘や売買の推進を目的としたものではございません。また、投資信託はランダムに抽出しています。運用会社、販売会社と当社との間における業務提携は一切ございません。あくまでも中立の立場で分析をお伝えします。
投資信託概要
概要
概要です。米国インフラ・ビルダー株式ファンド(ヘッジ無し)は、大和アセットマネジメントが運用する米国株です。信託報酬は1.63%、純資産総額は153億円です。NISA成長枠での投資ができず、特定口座での投資となります。
特徴です。アメリカのインフラ関連の銘柄に投資を行うアクティブファンドです。ここで言うインフラ関連銘柄とは、インフラ設備の建設や改修、メンテナンスを行う企業、建設資材の生産・輸送に関わる企業を指し、ファンドではインフラ・ビルダーと呼び投資対象としています。
チェックポイントです。アメリカは非常に高い成長が続くとマーケットでは期待されています。そのため、インフラ投資も引き続き高い水準で推移すると言われています。そうした銘柄に投資することで、どのようなパフォーマンスが期待できるのでしょうか。特定銘柄への集中投資が想定されるため、リスクがどの程度あるかも併せて分析します。
リスクの高さから、今後マーケットが下落した場合、どのような影響が出るかを注視する必要があります。そこで構造、投資戦略の詳細を確認してみましょう。
投資戦略
米国株式の中からインフラ関連銘柄を選定し、時価総額の小さなもの、流動性の低いものを排除します。
投資候補の中からインフラ投資による恩恵度、同業種における競争力、バリュエーション等に基づくスコアリングを行い、ファンドマネージャーとアナリストが投資判断を行います。
インフラが進む中、どのような銘柄が影響を受けるかは、個人での分析が難しいです。その中で、このようなスクリーニングを行うことにはアクティブファンドらしさを感じます。
銘柄戦略
業種別でも特徴的なポートフォリオとなっており、電気設備、建設・土木、機械が上位に入っています。
上位銘柄を見ても、1位に電気設備のイートンが入っているなど、他のファンドとはかなり異なる銘柄構成です。皆さんにとって、あまり馴染みのない銘柄が多いのはないでしょうか。
総じて米国インフラ関連銘柄が多く、アメリカがインフラ投資を行う際に大きな恩恵を受けられるものが集まっています。
銘柄数は30銘柄と絞り込まれており、業種も特化した集中投資型のファンドです。
集中投資を行うと、リスクが高いと考える方も多いかと思います。ただ、インフラ関連の業界は比較的業績が安定しています。インフラ整備は一定の需要があり、継続的に行われるため、景況感の影響を受けにくいです。そこが業種特化、集中投資のリスクとうまく相殺できるかどうかがポイントとなるでしょう。
景気の影響は受けにくいですが、公共事業やインフラ再整備には政治的要素が絡むため、短期的にはハブ幅が大きくなる傾向があります。これを踏まえて、リターンを分析してみましょう。
ファンド・パフォーマンス
パフォーマンス
特化型特有のパフォーマンスとなっています。業種特化型ということもあり、ブレ幅は大きくなっています。過去5年間のリターンを見ると、S&P 500とほぼ同等のパフォーマンスを残しています。しかし、過去3年間ではグロース株の成長もあり、約10%リターンが下回りました。
2020年~2024年初頭では、S&P 500を20%、世界株平均を50%上回っていますから、良いパフォーマンスだと言えるでしょう。ただ、2024年に入ってからはここ数ヶ月間でパフォーマンスが急激に悪化しています。
これは組み入れ銘柄の業績、売上実績というよりも、米国が大統領選挙を控えているなどの政治的要因が強く表れた結果です。
ファンドのポートフォリオ構成を見ると、社会インフラの再整備、投資が活発化すれば株価は上昇する傾向にありますが、停滞するような政治的な要因が重なると軟調になりやすく、ブレ幅は大きくなる傾向があります。
ただ、組み入れ銘柄の業績自体は安定しています。本質的な下落というよりも、政治の思惑による変動が大きいと言えますが、ブレ幅の大きさには注意が必要です。
業種特化型のため、ここ1年間で23%と非常に高くなっています。
リスクの高さもあり、シャープレシオは1前後。これだけを見ると、資金効率があまり良くない印象です。
今後も値動きが大きいと想定されます。業績や景気だけではない要素からも影響を受けるため、他の株式とは若干異なる特徴を持っていることが、良い面でもあり悪い面でもあります。
特定業種に特化するアクティブファンドはあまり多くなく、珍しい存在です。インフラ投資の影響を受ける銘柄を個人投資家が分析するのは容易でないため、こうしたポートフォリオを組むファンドは有り難い存在と言えるでしょう。
ただ、リスクが高いため、どのようにファンドを保有するかが大切です。そこで、S&P 500と組み合わせた場合のポートフォリオの効果をご覧ください。
S&P 500は5年間でリターンが22.4%、リスクは17.1%と、非常に高いリターンを示しています。一方、このファンドはリターンが24.07%と、S&P 500を上回っています。ただし、リスクが26.23とかなり大きくなっています。
そのため、ファンドを保有するか悩ましく感じる方も多いでしょう。一方で、インフラ投資は今後も続きますから、可能な限りリスクを抑えた形でポートフォリオに組み入れたいと感じる方もいることでしょう。
例えば、50%ずつS&P 500とファンドを保有した場合、リスクをどれだけコントロールできるでしょうか。過去5年間の実績では、リターンは24.13とS&P 500を上回る結果となり、リスクは19.93でファンドのリスクも引き下げられています。
分散投資を行うことでリターンをある程度高く保ちながら、ファンドに100%投資した場合のリスク26.23に対して19.93と、6%以上リスクを下げることができています。
非常に優秀で面白い特化型ファンドは、分散することでリスクをコントロールできるため、興味のある方はS&P 500などと組み合わせるとどうかを分析してみてはいかがでしょうか。
資金流出入
特化型ではあるものの、インフラに興味のある方が多いためか、資金の流入が増えています。
評価
評価は4です。リターンは良いですが、リスクが高い点がネックとなり、シャープレシオは低くなっています。資金効率はあまり良くないものの、こうした銘柄を個人で選ぶことは容易ではありません。このファンドは、インフラ・ビルダー銘柄を選定する困難さをカバーしつつ、比較的安定した業績を持つ銘柄を選んでいます。
リスクをどうコントロールするかによって、非常に面白い役割を持つファンドです。そのため、ファンドの評価は4とさせていただきました。