本日のテーマは、『米国株は反発継続? 次の展開への「2つのポイント」』です。先週、トランプ政権による「関税政策の90日間延長」という、マーケットにとってはフレンドリーな発表が突然ありました。結果として、1週間でS&P500は+5.7%、ニューヨークダウは+5%、NASDAQは+7.3%と大幅に反発。マーケット関係者は、この反発が継続するか、二番底を探りにいくのか注目しています。
そこで本日は、次の展開に向かうための2つのポイントをお伝えします。ぜひ最後までご覧ください。
[ 目次 ]
市場が最も注目する米国長期金利
先週の米国株と米国金利
先週は米株、債券、為替が安くなる、トリプル安となり市場では懸念が急激に高まりました。
下のチャートをご覧ください。緑が米ドルインデックス、青がS&P500、赤が米10年金利です。ドルインデックスが下がり、株価は少し反発したとはいえ、一時に比べると大きくマイナス圏にあります。また、債券の金利が大きく上昇したため、債券は大きく下落しています。

債券が大きく下落したことで、市場では債券からお金が逃げ、S&P500、為替からもお金が逃げる状況が続いています。つまり、トランプ政権への不信感から、米国離れが進んでいることを警戒しています。こうした米国離れが続くようであれば、今後も株式市場からも資金が流出し、株価はなかなか上がらないだろうということが懸念された1週間でした。
今週のポイント1つ目は、4.5%近くまで上昇した米10年金利が今後落ち着くかどうかです。今週、引き続き金利が上がるようであれば、おそらく株価は厳しい局面を迎える可能性があります。そこをどう見ていくかがポイントとなります。
米長期金利が落ち着くかどうかが焦点
相互関税が発表される前は、10年金利が4%を切る落ち着いた状態でしたが、発表後は大きく金利が上昇しています。

今回、金利が上昇した背景には、4つの理由があります。
1.米政権は今後の減税を検討しており、今後も米国債発行による財政拡張が続くため
2.相互関税政策などによる米国の信頼度低下で、長期債に対する上乗せ金利が発生しているため
3.関税によるインフレ率上昇の見通し
4.FRBの利下げによる景気対策で景気が上向いたことで、長期金利が上昇する可能性
上記のチャートをご覧ください。白が10年金利(右メモリ)、青はFFレート(左メモリ)の見通しです。今後、利下げは年内に3~4回行われる見込みです。過去の実績から見れば、FFレート見通しが低下するのであれば、米10年金利も低下してもおかしくない状況ですが、現在は10年金利との差が広がっています。
このような金利が上昇する4つの理由があるにしても、今回のような急激な金利上昇には、米財務長官も間違いなく肝を冷やしています。さらに今後も金利が上がるようであれば、アメリカからの資金流出が続く懸念が広がります。
さて、以上のような4つの金利上昇理由に加え、今回、急速な金利上昇を演出した理由が2つ指摘されています。
海外投資家が33%を占める
1つ目。米国債保有者の内訳を表した、こちらのグラフをご覧ください。海外投資家が33%を占めています。まだ、真実は不明ですが、中国政府が米国債を売り、日本人投資家の一部も売りに回ったとのうわさがあります。米国離れを進める企業、もしくは米国債を売らなければならない人たちが一斉に売ったことで、大きく金利が上昇したのではと言われているのです。

2つ目。ファンド勢の先物価格と現物価格の差を狙う「ベーシス取引」で利益を得ていたファンドが、急激な金利上昇を見てポジションを閉じたことで金利が大幅に上昇した可能性が指摘されています。
ただ、このようなファンドの取引がある程度落ち着いてくれば、今週以降は緩やかな金利上昇になるでしょう。先週のように急激な金利上昇がなくなれば、マーケットは落ち着いてきます。そのため、トリプル安などの懸念により、米国株が売られることもある程度落ち着くことでしょう。今回、急激に金利を引き上げた2つの要素が落ち着いてくると思われるため、今週以降は金利はそこまで大きく上昇しないだろうと思います。
MOVE指数を見るとパニックではなさそう
次にMOVE指数です。S&P500のボラティリティを表すVIX指数に対して、MOVE指数は債券のボラティリティを表したものです。

MOVE指数を見ると、現在は高い水準ではありますが、2023年、FRBがインフレ対策として急激な利上げを行った際に比べると、まだまだ落ち着いた範疇と言えます。そのため、先週の動きはパニック的な状況とまでは言えず、比較的落ち着いたものでした。今回は、需給関係による金利上昇ですから、需給関係が落ち着けば、そこまでは金利も大きく上昇しないだろうと考えられます。
金利とドルインデックスの乖離が収まるか
次のチャートは、オレンジが米30年金利、紫がドルインデックスです。通常は長期金利が上昇すると、ドルインデックスが上昇してもおかしくありません。しかし、今回は大きく乖離しています。

現在は、このことが米国離れと指摘されています。ただ、今週、関税に対するさらなる緩和策が出てきたり、需給面での米国債の売りが落ち着いてきたりすれば、金利はある程度低下する可能性があります。金利が低下すれば、ドル離れにもある程度目処がつきそうです。
米国からしてみれば、これ以上ドルが安くなれば、ただでさえ関税を高くかけているにもかかわらず、ドル安で米国内での輸入品価格が上がり、インフレ懸念が高まり、米国民の負担が大きくなります。つまり、これ以上、ドル安を容認できるかの瀬戸際となるかもしれません。今週以降、長期金利が低下し、ドルが緩やかに戻るようであれば、かなり市場は落ち着いてきていること確認できます。ぜひドルインデックスの動きも見ていただきたいと思っています。
米社債スプレッドが拡大中
最後に金利が絡む内容として、米社債、特にハイイールド債券の金利が上昇しました。景気が悪くなると、ハイイールド債券が償還できなくなるのではとスプレッドが広がる傾向にあります。このことから、アメリカは景気交代に入るのではないか、要警戒とのコメントを多く見かけました。

ただ、確かにスプレッドは拡大しているものの、過去の危機的な状況のスプレッドから比べると、まだまだ拡大していません。もし、これから拡大すれば要注意ではありますが、今の状態から見て、株式の投資家心理の先行指数となるスプレッドがそこまで拡大しているかというと、そこまで拡大していません。
今週、スプレッドが落ち着くようであれば、株式にとってプラスとなります。こういった金利、為替、スプレッドが緩やかに戻っていくようであれば、S&P500のボラティリティ、VIXも低下してくるでしょう。そうすれば株価に資金が向かいやすくなります。今週以降、一時期のような、非常にボラティリティが高い、パニックのような状況は徐々に薄れてると考えられます。そのため、特に金利動向にご注目ください。ここが落ち着くようであれば、次の展開となることでしょう。
業績よりも重要なこと
今のところ決算発表の材料なし
もう1つポイントです。関税のニュースが多く取り上げられ、さほど取り上げられない企業決算ですが、先週から決算発表がスタートしています。中でも、どこに注目すべきかをお伝えします。

こちらの図は、1-3月期決算発表の見通しを表しています。S&P500は、前年比で7.2%の増益見通し。3月末から比べるとほぼ変わらず、下方修正もあまり入っていません。1-3月期の業績は、そこまで悪くないと言えるでしょう。
ただ、1-3月期の決算は、相互関税などの影響がほとんど入っていません。過去や現状よりも、マーケットの関心は今後どうなるかに向いていることがポイントです。
その中でも、最も注目すべきポイントはこちらです。
決算ガイダンス
決算発表が出た16社のうち、2社が見通しを発表できないとコメントしています。今後、相互関税の影響で、ガイダンスを発表できないS&P500の企業があまりにも増えれば、予想EPSを立てられない、株を積極的に買えない状況となります。決算発表でガイダンスが発表できない企業が増えてきたと報道があった場合、EPSが著しく低下してくる可能性があります。そうなれば、仮に金利が落ち着き、VIXが下がったとしても、株価は上値を追えないと思います。ガイダンスが出せない企業が増えないかどうかは、しっかりご確認ください。

25年Q2以降の業績見通しの変化に注目
次のチャートをご覧ください。ガイダンスを出さない企業増などにより、第2Q~第4Qの高く見積もられた業績が、大きく低下してしまう可能性があります。そうなると影響は大きくなりますから、業績発表のうち、ガイダンスや、今後の見通しが悪いかどうかは株価に影響します。

目先は金利低下などで上昇する局面があっても、これから1ヶ月続く業績見通しがあまり良くないとなると、株価の上値を抑える可能性があります。業績の今後の見通しなどを見ても大きな影響はない、ガイダンスはいいとなれば、株価は元の位置に向かって緩やかに上昇すると思います。
この2つのポイントが、今後大事になってきます。ぜひご注目ください。
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