2025年9月19日の東京金融市場は、前日のFOMC結果と当日発表された日銀金融政策決定会合の結果を受けて、劇的な展開を見せました。午前中の楽観的な上昇から午後の急落まで、投資家心理が大きく揺れ動いた一日となりました。
米利下げ再開で始まった強気相場
前日17日に開催されたFOMCでは、FRBが9カ月ぶりに政策金利を0.25%引き下げ、FF金利誘導目標を4.0~4.25%としました。パウエル議長は労働市場について「とても堅調だとはもはや言えない」と述べ、雇用減速と失業率上昇懸念から「リスク管理のための利下げ」と位置づけました。市場では年内2回の追加利下げが見込まれています。
この利下げ再開を受けて18日の米株式市場では、ダウ工業株30種平均をはじめとする主要3指数が軒並み過去最高値を更新しました。景気敏感株や内需株の上昇に加え、長期金利上昇リスク後退によるハイテク株買いも目立ちました。
19日の東京市場もこの流れを継承し、午前中は半導体関連株を中心とした幅広い買いが入りました。日経平均株価の上げ幅は一時500円を超え、東京エレクトロン、アドバンテスト、レーザーテックなどの値がさ半導体株が指数を押し上げました。また、円安進行も輸出関連株の買い材料となりました。
日銀ETF売却決定が相場を急変させる
しかし市場の流れは午後に一変しました。日銀は政策金利を0.5%で据え置く一方、保有するETFとREITの市場売却を決定したと発表しました。このETF売却決定は多くの市場参加者にとって「サプライズ」であり、発表後株式市場には急激な売り圧力が生まれました。
午前中に上昇していた日経平均株価は下落に転じ、前日比の下げ幅は一時800円余りまで拡大しました。朝方の高値水準からは1300円余りの急落場面もありました。最終的に日経平均は前日比257円62銭(0.57%)安の4万5045円81銭で引けました。
日銀が決定したETF売却ペースは、2025年3月末時点の保有額70兆円(時価)に対し、簿価ベースで年3300億円程度、時価ベースで年6200億円程度とされました。これは市場全体の売買代金に占める割合が0.05%程度で、過去の銀行保有株売却ペースに倣ったものとなっています。
為替市場では円買い圧力が台頭
外国為替市場では、円相場が午後に急速に下げ幅を縮小しました。日銀は政策金利を据え置いたものの、9人の政策委員のうち高田創、田村直樹両審議委員が0.75%への利上げを求めて反対票を投じました。これにより早ければ10月の追加利上げ観測が意識され、円押し上げ要因となりました。
さらに、日銀のETF売却決定による株価急落が、「低リスク通貨」である円への買いを誘発しました。14時時点の円相場は1ドル=147円49~51銭と、前日17時比では38銭の円安・ドル高でしたが、朝方水準からは下げ渋りました。対ユーロでは一時約1年2カ月ぶりの安値174円50銭近辺をつけたものの、株価急落と追加利上げ観測を受けて円買いが優勢となり、14時時点では1ユーロ=173円66~70銭の円高・ユーロ安となりました。
この日の市場動向は、中央銀行政策が金融市場に与える影響の大きさを改めて示すものとなったといえるでしょう。
今後のポイント
今回の動きは、「米国の緩和期待」や「日銀の支え」だけで市場が一方向に進む時代が終わり、むしろ市場自らがファンダメンタルズに基づく自立性を試される局面に入ったことを示唆しています。各国中銀の政策の差異やタイミングは短期的なボラティリティを増幅しやすく、特にETF売却のように実需に直結する政策変更は、株式市場だけでなく為替・金利市場にも波及するため、今後のリスク管理において一層重要なファクターになるでしょう。こうした環境では、初期反応や市場の一時的なムードに過剰に反応するのではなく、中長期の視点から冷静に評価し、日銀頼みではない本質的な成長力や企業価値を見極める姿勢が求められます。米国が利下げを再開しつつある一方、日銀が緩やかに引き締めに向かう可能性があるという構図は、円相場・日本株双方にとって「二面性」を持つリスク・チャンス両面の材料であり、市場が自立的にその影響を消化できるかどうかが今後の焦点となるでしょう。
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