2025年11月5日、東京株式市場で日経平均株価は大幅に続落し、終値は前日比1284円(2.5%)安の5万0212円となりました。これは10月24日以来の安値水準です。相場は朝方から売りが先行し、下げ幅は一時2400円を超えて4万9073円まで下落し、心理的な節目である5万円を割り込む展開となりました。
今回の急落の背景にあるのは、人工知能(AI)・半導体関連株を中心としたこれまでの急激な相場上昇に対する過熱警戒感と、それに伴う利益確定売りです。市場では短期的な調整入りを指摘する声が目立っています。
米ハイテク株の下落が波及
売りを誘発する決定的な引き金となったのは、米ハイテク株を巡る動きでした。前日の米株式市場では、データ分析プラットフォームのパランティア・テクノロジーズ株が8%近く下落しました。パランティアが発表した四半期決算自体は市場予想を上回る良好な内容でしたが、「世紀の空売り」で知られる著名投資家マイケル・バーリ氏が率いる投資会社が、2025年7~9月期にパランティア株の下落を見込んでプット(売る権利)のオプションを取得していたことが判明したことが、売り材料視されました。同社はエヌビディアのプットオプションも取得しており、エヌビディア株も4%近く下落しました。
また、4日には米大手金融機関の首脳陣が相次いで「テック株のバリュエーションが高すぎる」と警告し、今後12~24か月の間に株式市場が10~20%下落する可能性に言及しました。これらの警告が、過熱感への警戒を急速に広げ、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数は2%安、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は4%安となりました。
ただし、長期投資家の視点で見ればS&P500が10%前後下落するのは、決して珍しいことではありません。むしろ「一定の頻度で起こる、想定範囲内の調整」と考えるべきです。
統計的にも、S&P500は1925年以降の長い歴史の中で、年間平均3回の5%調整、年1回程度の10%超調整を経験しています。つまり、市場の下落は“異常”ではなく、成長のプロセスに内在する自然現象なのです。
もちろん、20%を超える「弱気相場」に発展するケースもあります。しかし、サテライト運用や長期ポートフォリオの構築においては、「10%下落=想定外」ではなく、「この程度の揺れは起こる前提で設計する」ことが合理的です。下落を恐れるのではなく、調整を味方にする発想こそが、長期的なリターンを最大化する鍵となります。
主力銘柄の急落が市場を圧迫
この米株安は、5日の東京市場にも暗い影を落としました。これまでの上昇相場をけん引してきたソフトバンクグループは朝方から売り気配で始まり、寄り付き後には下落率が14%に達しました。アドバンテストも一時10%の下げとなり、前場はこの2銘柄だけで日経平均を約1300円押し下げる要因となりました。
市場の過熱感を示す指標はすでに高水準に達していました。日経平均を東証株価指数(TOPIX)で割ったNT倍率は10月31日時点で15.73倍と過去最高水準を記録。また、株価の買われすぎを示す指標である日経平均のRSI(相対力指数)も11月4日時点で73%強と、買われすぎの目安である70%を上回っていました。
PCRと日経VIが示す投資家の警戒感
市場参加者が相場下落を強く警戒していることは、オプション市場の動きからも明らかです。
プット・コール・レシオ(PCR)は、株価指数オプション市場で、弱気派のプット(売る権利)の建玉残高を、強気派のコール(買う権利)の建玉残高で割った指標であり、相場の強弱感を表します。4日時点のPCRは2.04と、7月以来の高水準に達しました。これは、日経平均が心理的節目の5万円を超えて急上昇する中で、多くの投資家が調整局面に備えて相場下落に備えたプット買いを膨らませている現状を浮き彫りにしています。
また、投資家が将来の市場変動の大きさをどう想定しているかを示す日経平均ボラティリティー・インデックス(日経VI)も、市場の警戒感を反映して大幅に上昇しました。4日の日経VIは前日比+4.44(上昇率15.73%)の32.66と大幅に上昇。5日には高値41.46まで上昇しました。

出典:マーケットプロフィル
日経VIは、日経平均株価が急落する時に急上昇するという特徴があり、この大幅な上昇は、ボラティリティー(変動率)の高まりに対する市場の警戒ムードの強まりを示しています。
今後の展望
市場関係者の見解は、この急落が一時的な調整であるか、大きな調整の始まりであるかで分かれています。AI関連への期待が過大であったことが判明すれば、4月以降右肩上がりに上昇してきた日経平均は、大きな調整局面を迎える可能性があります。短期的な下値の目安としては、25日移動平均線(4万8000円台後半)が意識されており、さらに調整が深まった場合は、10月14日の安値4万6500円前後まで下落する展開も想定されています。
米国や日本の経済、需給、設備投資などのファンダメンタルズを考慮するとスピード調整と考え、押し目を虎視眈々と狙う投資家が多いのではないかと思われますが、日経VIは30ポイント超とまだそこまで高くない水準ではなく、上昇がもう一段進むまでは押し目買いを控える多いとも思います。あく抜けを少し待つ展開と言えそうです。
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