最近、私たちのもとには「以前なら問題なく開設できたはずの海外プライベートバンクの口座開設に難航している」というご相談が相次いでいます。以前は担当者の評判や手数料体系が主な懸念事項でしたが、今では「そもそも開設できるのか?」という根本的な問題に直面するケースが増えています。
この背景には、単なる銀行側の都合だけでなく、国際的な金融規制の強化と、日本人富裕層の世界的なプレゼンスの変化という、二つの大きな要因が潜んでいます。本稿では、これらの「裏事情」を深掘りし、今後の資産管理に役立つ知見を提供します。
[ 目次 ]
1.変わる世界の潮流:なぜ日本人の海外口座開設が難しくなったのか
海外プライベートバンクの口座開設が、10年前と比べて明らかに難しくなっているのは事実です。この変化を理解するためには、次の二つの視点から現状を捉える必要があります。
1-1. マネーロンダリング対策とコンプライアンスの強化
世界的にマネーロンダリング(資金洗浄)防止のための規制が厳格化しています。FATF(金融活動作業部会)などの国際的な組織が定めるガイドラインに基づき、金融機関は顧客の「資産の出所(Source of Wealth)」や「資金の出所(Source of Funds)」をこれまで以上に厳しく確認するようになりました。
このコンプライアンス遵守にかかるコストは莫大であり、プライベートバンクは収益性を重視せざるを得ません。結果として、名目上の最低預入金額(一般に5億円〜10億円)を満たしていても、単純な預金やETF運用など、銀行側に十分な収益をもたらさないと判断された顧客には、口座開設を断るケースが増加しています。
1-2. 世界における日本人富裕層の地位の変化
もう一つの重要な要因は、世界的に見た日本人富裕層のプレゼンスの変化です。富裕層の調査・分析で知られるウェルスエックス社のレポートは、その現状を客観的に示しています。
- 2017年: 超富裕層人口(純資産45億円以上)は、米国、日本、中国、ドイツの順でした。
- 2022年: 米国と中国が飛躍的に増加し、日本は順位を落とし、超富裕層人口も減少に転じています。
このデータは、日本の富裕層が世界的に占める割合が相対的に低下していることを物語っています。特に、リーマンショック以降の米国や中国の資産急増やメガIPOの増加により、金融機関はより大きな収益が見込める中華系や米国系の富裕層を優先せざるを得ない状況です。

2.海外プライベートバンク口座開設の現状と注意点
Q1: 海外のプライベートバンクに口座を持つメリットは何ですか?
A1: 海外のプライベートバンクは、特定の金融商品に縛られない中立的なアドバイスや、日本にはない多様な金融商品、そしてグローバルなネットワークを活用したサービスを提供します。これにより、一国の経済情勢に依存しない分散投資が可能となり、資産保全の選択肢が広がります。
【関連記事:ファミリーオフィスとプライベートバンクの徹底比較ガイド|富裕層のための最適な選択肢とは?】
Q2: 海外プライベートバンクの代わりに検討すべきサービスはありますか?
A3: 複数の課題を抱える資産家の方には、「ファミリーオフィス」が有力な選択肢となります。ファミリーオフィスは、特定の金融機関に属さない独立した立場で、プライベートバンクを含む国内外の様々な専門家をコーディネートし、全体最適の視点で資産管理をサポートします。
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3.まとめ:賢明な資産家が取るべき次のステップ
海外プライベートバンクの口座開設は、もはや単なる手続きではなく、国際情勢や金融機関の「裏事情」を理解した上で臨むべき戦略的な行動です。この複雑な状況を乗り越え、費用対効果を最大化するためには、「適材適量」のサービスを賢く選ぶことが不可欠です。海外口座の開設を検討する際は、まずご自身の資産管理の全体像と目的を明確にし、その上で利害関係のない中立的な専門家に相談することをお勧めします。
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