事業売却により巨額の資産を築いた元オーナーは、70代に入り、高齢に伴う認知症リスクや、複雑化した国内外の資産管理という、次世代への承継における最大の壁に直面します。
本記事では、総資産約18億円を保有する70代の元オーナー様からのご相談事例を基に、煩雑化した資産の全体像を整理し、家族信託を活用して「誰にも迷惑をかけない円滑な承継」を実現した資産戦略の全貌を解説します。
[ 目次 ]
1. 相談者の課題:事業売却後に生じた「資産の複雑化リスク」
今回のオーナー様は、事業売却後、現預金や国内外の不動産、ファンドなど総資産約18億円を保有されていました。長年の運用の中で、以下の3つのリスクが顕在化していました。
1-1. 資産管理の不整合と認知症リスク
- 課題の核心: 複数口座、保険、ファンドが乱立し、全体の保有目的や名義が複雑化しており、ご本人ですら全体像を正確には把握できていない状態でした。
- 最大の懸念: 高齢に伴う認知症リスクです。資産管理が複雑なままだと、将来判断能力を失った際に、家族が資産の管理や名義変更で混乱し、承継手続きが完全に停止してしまう恐れがありました。
1-2. 海外資産と税務管理の不安
海外金融資産5億円(米国株、ファンド)を保有していたため、為替変動リスクや、相続発生時の複雑な手続きへの不安も抱えられていました。
2. ファミリーオフィスによる解決策:整理と信託による「承継の仕組み化」
私たちは、まず「資産の見える化」を徹底し、その上で「資産が自走する仕組み」を構築しました。
2-1. 【STEP 1】全資産の棚卸しと再評価
- 実行: 国内外の銀行・証券・保険口座をすべて洗い出し、保有目的・収益性・相続評価額を一覧化。多数の口座を統合・解約し、管理効率を最適化しました。
- 成果: 家族が相続後に混乱なく引き継げるよう、すべての口座・契約関係を網羅した共通管理台帳を作成しました。
2-2. 【STEP 2】資産管理会社と家族信託の活用
認知症リスクと円滑な承継に対応するため、最も強力な法的ツールである家族信託を導入しました。
- 資産管理会社の設立: 主要資産(不動産・有価証券)を資産管理会社に移管。
- 家族信託: この資産管理会社の株式を家族信託に組み込み、長男を受託者、妻を第一受益者として運用。これにより、オーナー様が認知症になっても、長男の判断で資産運用・管理が継続できる仕組みを確立しました。
- 戦略的な生前贈与: 信託契約を通じ、毎年計画的に生前贈与を実行し、長期的な相続税負担の平準化を図りました。

2-3. 【STEP 3】国際資産とポートフォリオの再構築
- 海外資産の調整: 海外資産は為替リスクを加味し、一部を円建て資産へリバランスすることで、リスクを管理。
- 運用スタイルの転換: 金融機関任せの「提案ベース」運用から脱却し、目的別ポートフォリオ(生活資金・成長資産・承継資産)を明確に再構築し、資産管理会社名義で長期安定運用方針に変更しました。
3. まとめ:複雑な資産ほど「仕組み」と「中立性」が必要となる
この事例は、巨額の資産を築いた成功者ほど、「認知症リスク」と「複雑な資産管理」が最終的な承継の障害となることを示しています。
- 成功の鍵: 国内外に分散した複雑な資産の全体像を把握し、ファミリーミッションステートメント(FMS)を反映させた家族信託という「仕組み」で資産を自走させる体制を構築することです。
- 役割: 中立的な専門家は、煩雑な資産の棚卸しから、家族の合意形成、そして複雑な信託設計までを統合的にサポートする、不可欠なパートナーとなります。
【関連記事:【専門家解説】富裕層の相続対策成功事例:事業承継・終活を円滑にする「家族信託」活用ガイド】
資産運用についてお悩みがあれば、
まずはご相談ください。
私たちファミリーオフィスドットコムは、金融商品・不動産・節税・相続など、あらゆる選択肢の中から、
お客様の価値観や状況に寄り添い、中立的な視点で資産運用をサポートします。
資産に関するお悩みや気になることがあれば、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。


