1月末から2月初旬にかけて、世界の金融市場に激震が走りました。これまで史上最高値圏で推移していた金(ゴールド)価格が突如として崩れ落ち、銀市場においてはさらに劇的な暴落が記録されたのです。本稿では、この歴史的な急落の背景にある「FRB議長人事」というサプライズと、それが東京市場や為替、暗号資産に及ぼした波及効果について解説します。
1980年以来の下落率を記録
1月30日のニューヨーク商品取引所(COMEX)で、金先物価格は前日比一時12%安となる1トロイオンス4700ドル付近まで急落しました。一日の中での下げ率としては1980年以来の大きさとなり、市場関係者に衝撃を与えています。さらに変動が激しかったのが銀市場です。銀価格は一時26%安という、データが残る1980年代以降で最大の下落率を記録しました。
この暴落の直前まで、金相場はイラン情勢への警戒感や主要国の財政懸念を背景に、年初から約3割も上昇していました。1月29日には一時5600ドル台を超えて最高値を更新していただけに、まさに「断崖絶壁からの転落」となったのです。
トリガーは「タカ派」ウォーシュ氏のFRB議長指名
今回の急落の直接的な引き金となったのは、トランプ米大統領による次期米連邦準備理事会(FRB)議長の人事です。トランプ氏は1月30日、自身のSNSで元FRB理事のケビン・ウォーシュ氏を次期議長に指名すると表明しました。
市場にとってこれがサプライズとなった理由は、ウォーシュ氏の政策スタンスにあります。同氏は過去にインフレ上昇を警戒し、金融緩和に消極的な姿勢を示していた「タカ派」として知られています。この指名により、市場で支配的だった「トランプ政権下での過度な利下げ観測」が後退しました。結果として、ドルへの信認が一時的に回復し、外国為替市場ではドル高が進行。ドル建てで取引される金や銀は、割高感が意識されたことや、金利がつかない資産としての魅力が薄れたことで、売りが殺到する事態となりました。
東京市場への波及と関連銘柄の動揺
週明け2月2日の東京市場も、この「金・銀ショック」の直撃を受けました。2日の日経平均株価は、前週末比667円安の5万2655円と大幅に反落しました。午前中は、8日投開票の衆院選で「自民党優勢」との報道を背景に、政権安定への期待から一時5万4000円台を回復しました。ただ、買いは続かず、午後は海外市場でのハイテク株安が波及して失速しました。アジア株の下落も重なり、東京エレクトロンなど半導体関連株に売りが広がりました。
国内商品先物市場では、金先物の中心限月が前週末比2057円安の1グラム2万4533円で寄り付き、白金(プラチナ)も大幅安となりました。株式市場では、金鉱山を保有する住友金属鉱山の株価が一時10%を超える大幅続落となったほか、金価格に連動するETF(上場投資信託)も軒並み下落しました。
加えて、リスク資産からの資金逃避は暗号資産市場にも波及しています。ビットコインは一時8万1000ドル台から急落し、日本時間2日未明には7万7000ドルを割り込みました。市場の流動性で勝る「強いドル」の復権が、貴金属や仮想通貨といった代替資産の価値を相対的に押し下げた形です。
「円安容認」発言で再び155円台へ
一方で、日本の為替市場は金相場とは異なる独自の要因で動いています。
金急落の背景にはドル高がありますが、対円では「円安」圧力が再び強まっています。2月2日の円相場は一時1ドル=155円台半ばまで下落しました。この円売りの背景には、高市早苗首相の発言があります。高市首相は1月31日の演説で「円安は輸出産業にとって大チャンス」と述べ、市場に「円安容認」の姿勢と受け止められました。さらに、直近の情勢調査で衆院選における自民党優勢が伝えられたことで、金融緩和的な政策が続くとの思惑が強まり、投機筋の円売りを誘発しています。
今後の展望
市場の関心は、今回の金急落が上昇トレンドの終わりを告げるものか否かに集まっています。著名投資家キャシー・ウッド氏は、「金市場でバブルが起きている」と警鐘を鳴らしていました。
しかし一方で、中東情勢などの地政学リスクが完全に消滅したわけではありません。次期FRB議長に指名されたウォーシュ氏が実際にどのような政策運営を行うのか、そして8日に投開票を控える日本の衆院選の結果がどう出るのか。不透明要素が山積する中、金や銀を含むマーケットは当面、神経質な展開が続きそうです。
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