うちの会社はいくら?会社を譲渡する時の値段の決め方

うちの会社はいくら?会社を譲渡する時の値段の決め方

中小企業の経営者の高齢化が進み、事業承継の必要性が今、社会に高まっています。日本の中小企業は、事業者数では全事業者の99%以上、従業員の雇用者数でも全体の70%以上を占めており、このまま放置しておくと廃業により雇用を支えきれなくなってしまうからです。

事業承継の方法は大きく分けると3つあり、子供などの親族に事業を承継させる親族承継、社内の従業員などに事業を継がせる親族外承継、そして会社(もしくは事業の一部)を売却することにより事業を継続させるM&Aがあります。

これら3つの方法の中でもM&Aは、最近中小零細企業を問わず活発に行われており、政府も補助金制度などを拡充し、積極的に推進しています。

ではM&Aで会社を売却する場合、いったいどのような計算でその価格を決定し、最終的にはいくらで売ることになるのでしょうか?

本日は、M&Aで会社を譲渡する時の値段の決め方について解説していきます。

M&Aの値段にルールはない

実は、会社を譲渡する場合の値段には、特にルールがあるわけではありません。M&Aは交渉事ですから、相手が「欲しい」と思えば値段は上がりますし、「たいして欲しくない」と思えば値段は下がります。ですから、M&Aの値段は相手とのマッチング次第といえます。

ただし、何もない状態で相手と交渉をしても、どうやってどれくらいの値段をつけたらいいのかさっぱり分かりません。そこで、「ある一定の目安」として企業の価値を計算し、それを基に交渉を行います。この企業の価値の計算のことを、企業価値評価といいます。

企業価値評価の方法はざっくり2つ

企業価値評価の方法にはさまざまな種類がありますが、ここでは中小企業の企業価値評価で最も頻繁に使われている方法を2つご紹介します。

①コストアプローチ

コストアプローチとは、企業の純資産価値を基準とした評価方法です。会社の資産から負債を引いて、残った金額(=純資産価値)をその会社の価値とする方法です。

別の言い方をすると、その会社を買ってすぐに清算した場合、手元に最低いくら残るのかを求める方法がコストアプローチといえます。

②インカムアプローチ

インカムアプローチとは、企業の将来の収益やキャッシュフローの予想をもとに企業価値を評価する方法です。インカムアプローチにはさまざまな方法がありますが、最も多く用いられているのがDCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)です。

DCF法とは、企業活動によって将来生み出される期待キャッシュフロー(フリーキャッシュフロー)の総和を、現在価値に割り引いて算出したもののことをいいます。

このフリーキャッシュフローの計算には数多くの式が用いられますが、一般的には以下の算式を用います。

  • フリーキャッシュフロー=営業利益×(1-法人税率)+減価償却費-運転資本増加額-設備投資額

この式を見ると難しいと感じるかもしれませんが、簡単に言うとフリーキャッシュフローとは、会社が1年間で稼いたお金のうち事業を維持するために必要な支出を差し引き、最終的に会社の手元に残る金のことをいいます。

この式で算出したフリーキャッシュフローを3~5年分合計したものを会社の企業価値とする方法をDCF法といいます。

別の言い方をすると、その会社を買ったら3~5年でいくら利益が上がるのかを求めるのがDCF法といえます。

最後に「のれん」代を加える

コストアプローチで算出した金額とDCF法で算出した金額は、当然ながら同じではありません。この2つの指標で算出された会社の企業価値を基に、いくらの金額が妥当なのかを決めていきます。

そして最後に「のれん」代を加えたものが、最終的な会社の値段となります。

「のれん」とは

「のれん」とは、会社の持っている技術力やノウハウ、大手企業との取引口座や質の高い従業員などのように決算書上では表すことはできなくても会社が持っているプレミアムな価値の総体のことをいいます。

最後にこの「のれん」代がいくらになるのかを算出し、それを加えた金額が最終的な売却価格の基準値となります。

最後に

M&Aの企業価値評価にはさまざまな方法がありますが、最終的に会社の譲渡価格を高くするかどうかを決めるのは「のれん」です。「のれん」とは、特許などの特殊技術だけでなく、大口の顧客を抱えているかどうか、技術力のある従業員がいるのかどうかなども「のれん」の対象となります。

ご自身の会社に一体どれくらいの値段がつくのか本格的に知りたいと思われた方は、ぜひ一度専門家に問い合わせてみてください。

続きを読む

「資産を守るために、着実な資産管理を」

ファミリーオフィスドットコムでは無料で⾃信で⾏っていただける資産管理から、
エキスパートによるオーダーメイド型の資産管理まで、様々なサービスを提供しています。

メディアでご紹介いただきました

関連記事

クリスマス商戦が本格化【日本株・ドル円 週間見通し】 11月23日号(11月25日〜11月29日)

クリスマス商戦が本格化【日本株・ドル円 週間見通し】 11月23日号(11月25日〜11月29日)

[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 今週の為替注目点 日本株先週の振り返り 先週の日 …

新興国株からの資金流出が止まらない理由とは?

新興国株からの資金流出が止まらない理由とは?

新興国株式市場からの資金流出が続いています。米国経済の底堅さや新興国経済の減速がその背景にあり、投資家たちは慎 …

米トリプルレッドの影響は?【日本株・ドル円 週間見通し】 11月16日号(11月18日〜11月22日)

米トリプルレッドの影響は?【日本株・ドル円 週間見通し】 11月16日号(11月18日〜11月22日)

[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 今週の為替注目点 日本株先週の振り返り 先週は、 …

エヌビディアがNYダウに採用された意義と今後の展望

エヌビディアがNYダウに採用された意義と今後の展望

米S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが11月1日にダウ工業株30種平均(NYダウ)の構成銘柄にエヌビ …

トランプラリーはこれからも続くのか?今後の不安材料と死角について【11/11 マーケット見通し】

トランプラリーはこれからも続くのか?今後の不安材料と死角について【11/11 マーケット見通し】

米大統領選挙にて、次期大統領にトランプ氏が選ばれました。それを受けて先週は株価が大きく上昇しています。例えば小 …

MOVE指数が示す金利リスクと投資戦略

MOVE指数が示す金利リスクと投資戦略

MOVE指数は、米国債市場の金利変動リスクを測定する重要な指標です。金利のボラティリティを示し、その上昇は市場 …

米国ビッグ・イベント通過後の影響は?【日本株・ドル円 週間見通し】 11月10日号(11月11日〜11月15日)

米国ビッグ・イベント通過後の影響は?【日本株・ドル円 週間見通し】 11月10日号(11月11日〜11月15日)

[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 来週の為替注目点 日本株先週の振り返り 先週の日 …

〜米大統領選挙が鍵〜【日本株・ドル円 週間見通し】 10月27日号(11月4日〜11月8日)

〜米大統領選挙が鍵〜【日本株・ドル円 週間見通し】 10月27日号(11月4日〜11月8日)

[ 目次 ]1 先週の日本株の振り返り2 今週の日本株の見通し3 来週のドル円相場の注目点 先週の日本株の振り …

トランプ氏再選でスタグフレーションの恐れが高まる?原因と対策を簡潔に解説

トランプ氏再選でスタグフレーションの恐れが高まる?原因と対策を簡潔に解説

景気が停滞する中で物価が上昇する、いわゆるスタグフレーションのリスクが高まっています。その原因と私たちにできる …

【米国株】今週の注目材料、企業業績と長期金利、そして需給環境を現状分析【10/15 マーケット見通し】

【米国株】今週の注目材料、企業業績と長期金利、そして需給環境を現状分析【10/15 マーケット見通し】

アメリカの長期金利が上昇を続けています。一時期は3.6%まで低下していた金利が、10月25日段階では4.27% …

金と銀が高騰している理由は?安全資産としての魅力と今後の展望

金と銀が高騰している理由は?安全資産としての魅力と今後の展望

金(ゴールド)と銀がともに高値を更新し、市場の注目を集めています。この記事では、金と銀の価格上昇を支える要因や …

【日本株・ドル円 週間見通し】 10月27日号(10月28日〜11月1日)

【日本株・ドル円 週間見通し】 10月27日号(10月28日〜11月1日)

[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 来週の為替注目点 日本株先週の振り返り 10月2 …

【日本株・ドル円 週間見通し】 10月19日号(10月21日〜10月25日)

【日本株・ドル円 週間見通し】 10月19日号(10月21日〜10月25日)

[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 来週の為替注目点 日本株先週の振り返り 10月1 …

金購入の真意とBRICS共通通貨の可能性―2024年のBricksサミットで何が起こる?

金購入の真意とBRICS共通通貨の可能性―2024年のBricksサミットで何が起こる?

世界が注目するBRICSサミットの概要 2024年10月22日から24日まで、ロシアのカザンでBRICSサミッ …

世界の注目を集める中国株市場の急騰とリスク

世界の注目を集める中国株市場の急騰とリスク

中国株市場が再び脚光を浴びています。国慶節連休が明けた直後から上海総合指数は連日上昇し、10月8日には上海総合 …

おすすめ記事