本日のテーマは、「米長期金利上昇。4.75%に要注意」です。
先週は、米10年金利が+0.24%と大幅に上昇しました。下の図表は米10年金利の推移を表しているのですが、ここ最近、4%近辺から4.6%まで上昇しています。

株式投資をされている方にも広く知られているのですが、こういった長期金利の上昇は、株価にマイナスの影響を与える可能性があるため、非常に注目されています。
4.75%は警戒感が高まる水準です。今の段階でも警戒を高める必要が少しあるのですが、そうした数字の背景なども含めて、今日お伝えしていきたいと思います。
[ 目次 ]
インフレ懸念が再び広がる米国
CPIが市場予想を上振れ
数字の前に、まずは先週の経済指標を確認します。
先週の注目材料だった4月のCPI、消費者物価指数は予想を上回る結果となりました。

左がガソリンを含む総合、右がガソリンを除いたコアです。このチャートをご覧になっても分かるように、少し反応しています。左はガソリンを含むため大きく上昇しているのですが、注目すべきは右の図表です。
ガソリンを除いて、他の物価上昇にどのくらい影響が及ぶかが注目されていたのですが、結果としては前年比+2.8%。予想が+2.7%で、前月が+2.6%だったので、上昇傾向と言えます。今後、上昇する可能性があるのではとマーケットでは懸念されています。
基調インフレ(トリムCPI)も上昇

一方で、まだ+3%を超えていないとの見方もあります。そこで、もう1つ皆さんに知っていただきたいことがあります。
5月15日のウォーシュFRB議長就任に伴い、FRBがインフレに対する新しい見方を示すと噂されています。
今までパウエル議長は、CPI、もしくはPCEコアデフレーターをインフレの指標として重要視していたと言われています。
ただ、ガソリン価格の動きが大きいなどもあり、一時的に大きく変動する要因を除いて、インフレがどういった基調になっているのかを示すトリムCPIを指標とするのではないかと言われています。
今回クリーブランド連銀が出したトリムCPIを見ると、CPIは少し落ち着いてきているようにも見えます。前年比は+2.8%で3%を超えていないため、そこまでインフレは波及しないと思われるかもしれません。
ただ、注目はグレーの箇所、前月比で+5.2%となっています。過去、前月比が上昇した後には、前年比が大きく上昇してきました。
大きく変動する項目を除いたものですら+5.2%ということは、今後、前年比で上昇すると考えられます。CPIを見ても、トリムCPIを見ても、共に上昇基調であることは間違いなさそうです。
PPIも上振れ
翌日に発表されたPPI、生産者物価指数でも、CPIを明らかに上回る伸びが確認されました。生産者側の物価が上昇しているということは、いずれCPIにも大きく影響が出てくると懸念されています。

左が総合、右がコアになりますが、共に大きく上昇しています。さらにサプライズとなったのが市場予想との差です。総合は+0.5%の予想に対して+1.4%、コアは+0.3%の予想に対して+1.0%と、生産者の物価がかなり上がっていることが分かりました。
インフレ圧力による金利上昇のリスクが懸念されていることも事実です。
インフレがサービス価格まで波及
さらにPPIを細かく見ると、サービスやモノも大きく上昇しています。輸送や小売など、サービスの価格も上昇してきていることから、今後のインフレの粘着性などが懸念されます。

利下げ期待が後退
CPIとPPIの結果を受け、FRBの今後の政策について、市場の見通しはどうなっているのでしょうか。白い棒グラフは2月時点です。

年末までに利下げを予想していた市場の見方が一転、1ヶ月前からその流れになってはいるのですが、利上げになる可能性がより高まり、インフレの再加速を市場が織り込み始めています。
消費は見た目ほど強くない
さらに先週は小売売上高が発表されました。アメリカは小売売上高が非常に重要な指標になるわけですが、小売売上高は3ヶ月連続でプラスとなっています。GDPに影響するコントロールグループも4ヶ月連続でプラスですから、GDPの見通しとしては明るくなっています。

ただ、表面的にはすごく底堅く見えますが、少し注意が必要です。
ガソリン価格の高騰により、小売の売上高が上がっています。小売売上高は名目値ですから、インフレを加味していません。右の図表を見て分かる通り、ガソリン価格が大きく上昇したことが、小売売上高の上昇につながっているのです。
一方で、百貨店や家具など、景気が良い時には買われるものの、悪い時には控えられる裁量消費は落ち込んでいます。消費者マインドとしては、あまり強くないことが分かったのです。
実質賃金が再び悪化
ここには理由があります。CPIが総合で+3.8%と上昇している一方で、賃金の上昇率は+3.6%にとどまっています。

+3.6%という数字は決して低くはないですが、こちらの図表をご覧ください。オレンジがCPI、青が賃金の上昇率を表しています。
景気後退が懸念された2022年、2023年は物価上昇率よりも賃金の上昇率が低く、実質賃金はマイナスでしたが、再びCPIが上がったことで、実質賃金はマイナスになっています。
実質賃金がマイナスになると、小売売上高が落ちてくると予想されますし、裁量消費がより落ちてくる可能性があり、非常に要注意だということがポイントです。
長期金利が上昇している背景
市場は“高金利長期化”を警戒
CPI、PPI、小売売上高を見ても、金利が上がるような状況です。インフレが非常に大きな影響を与えていることが分かりました。

ただ、米10年金利の上昇というのは、細かく分解すると少し違った見方ができます。今回の金利上昇は、インフレ期待よりも実質金利の上昇が主要因となっているのです。
名目金利は+4.6%近辺にありますが、名目金利は実質金利と期待インフレ率を足したものです。2月以降、金利が上昇した分の内訳を見ると、期待インフレ率は4割程度しか寄与しておらず、6割程度は実質金利の上昇が影響しています。
中東情勢などによるインフレ懸念によって金利が上昇していると言われているわけですが、実質金利の方が上がっているのです。政策金利が高止まりするのではないかとの予想が上昇の背景にあり、今の段階では、インフレ再加速はあまり織り込まれていません。
今後インフレが加速する、もしくはエネルギー価格が高止まりするようであれば、インフレの寄与度がさらに上がるため、4.6%という金利がさらに上がる可能性があることには注意が必要です。ここが重要なポイントです。
実質金利上昇は株に逆風
実質金利が上昇している今の状況は、なぜ懸念すべきなのでしょうか。こちらの図表、黄色がS&P500、青が実質金利です。

実質金利は2%近くで推移しているわけですが、実質金利が上昇すると、企業や家計の金利負担が増えます。そうなれば株式市場にマイナスになる傾向があり、金利が大きく上昇する局面では、過去にもS&P500が下がってきました。
とはいえ、完全な相関ではありません。
景気の底堅さ、企業利益の拡大、特にAIへの投資などが非常に盛んで業績が伸びているため、今の株式市場は実質金利が上がっても吸収できています。ただ、今後実質金利が上昇すれば、過去と同様に実質金利の上昇が株価にマイナスの影響を与えると考えられています。その点は、まず注意が必要です。
4.75%超で市場悪化リスク
4.75%が1つの節目となることは大事なポイントです。こちらの図表は2023年以降、金利が+3.75%から+4.75%まで上昇した際、S&P500構成銘柄のうち、何%が平均を超えているのかを表しています。

+4.5%までは54.8%の銘柄が上昇していますが、+4.75%まで金利が上昇すると、上昇する銘柄は38%まで減少します。
金利が+4.5%を超えると、ある程度、株への影響が色濃く出てくるのです。
今は+4.6%ですから、+4.75%になれば、S&P500の銘柄も厳選されたものしか上昇しなくなる可能性があります。
今後、インフレ率が上がってくると、実質金利+期待インフレ率=名目金利ですから、名目金利は4.75%を超えてくる可能性もあることを認識いただければと思います。
+4.75%となると、業績によって支えられていた株価もバリュエーション的に少し窮屈になってくるため、調整局面を迎える可能性があります。
4.75%を超えると暴落するというわけではありませんが、株価にマイナスの影響を与える可能性がある金利水準だと意識いただければと思います。
名目金利が+4.75%を超えてくると、S&P500の選別が進む可能性があります。高い金利の下でも高い業績水準を維持できるものだけに資金がシフトする可能性がありますので、十分に対策していただければと思います。
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